韓国政府はロシアに対して独自制裁を行う意向を表明しました。2〜3日前には「やらない」と言っていたのですが、米国が「対ロ制裁の例外対象国32ヵ国」に韓国を含めず、逆に第三国が米国の製品や技術を使用して製造した製品の輸出を規制する「外国直接製品規制（FDPR：Foreign Direct Product Rule）」に韓国を含めたことで、さすがにマズイと思ったのでしょう。
しかし、まだ「独自制裁します」と言っただけで、具体的に何をどうするかは発表されていません。金融制裁についてはSWIFT除外など既にいくつか発表されていますけれども、これは欧米などと足並みを揃えるものですので独自制裁とは言えません。
そのため米側は韓国の制裁参加を「歓迎する」とは述べましたが、まだ例外対象国には入れていません。
韓国政府の対応は後手後手感が強いです。いつもの「パルリパルリ（早く早く：빨리빨리）」文化はどうしたんでしょうね。
ニュース1の記事からです。
対ロ制裁「遅れた」政府..米、対中制裁の際「より大きな負担」
（前略）
韓国政府は最近、米国など西側諸国の対ロ制裁に参加するという意味で「戦略物資」、すなわち軍事用途に使われる物品・技術のロシア輸出を遮断した。
政府は関係省庁や企業との協議を経て「非戦略物資」、具体的に半導体など先端素材・装備を中心に対ロ輸出統制を適用する品目を選定する計画だ。
このほか韓国政府はロシアの銀行に対する米国・欧州のSWIFT（国債銀行間通信協会）排除措置にも参加し、ロシア国債の取り引きも制限することにした。
（中略）
ただ米政府はまだ韓国を対ロ制裁に関連した海外直接製品規制（FDPR）適用例外対象国に含めていない状況のため政府内外では「対ロ制裁と関連した当局の『生ぬるい』対処が企業などの損失に繋がる可能性がある」という懸念が依然としてある。
（中略）
これと関連し専門家らは「米国など西側諸国が推進中の対ロ制裁は事実上『セカンダリー・ボイコット』（制裁対象国と取引する第三国企業と銀行・政府なども制裁）概念を内容している」という理由から「制裁参加時期を逃した場合、関連業界に相当な負担になる」と懸念している。
（中略）
米ウォール・ストリート・ジャーナル（WSJ）は先月28日（現地時間）、国務省当局者の話として「もし中国など他の国が米国の制裁対象国と関連した場合、彼らも制裁対象になるだろう」と報じた。
（中略）
実際、中国当局者は公然と「対ロ制裁に反対する」という立場を明らかにし、官営メディアを通じてロシア銀行のSWIFT排除が「脱ドル」「人民元国際化」の契機になると主張している。
（後略）
ニュース1「대러 제재 '늦은' 정부.. 美, 대중 제재 땐 '더 큰 부담'（対ロ制裁「遅れた」政府..米、対中制裁の際「より大きな負担」）」より一部抜粋
一応、「ウクライナ侵攻はあくまでロシアの行為であり、米国が中国制裁をすれば世界経済が混乱する。米国も慎重にならざるを得ず容易ではない」との専門家の意見も紹介されていますが、記事の視点としては「米国が『対中制裁』へと拡大すれば韓国は相当な困難に直面する」というものです。
実際には対中制裁に拡大するまでもなく既に実害が出ていたり懸念が出ていたりするようです。
まず、デンマークに本社を置く海運会社大手のAPモラー・マースクがロシア便を全てストップしました。他にもMSCなど主要物流会社はロシア向けのサービスを中断しています。サムスン、LGはロシア工場でテレビや家電を製造しており、これら製品の輸送に多大な影響が出ることは必至です。
次にロシアにおいてサムスンのスマホシェアは約30%あります。記事中で触れられているFDPRは場合によってはスマホや自動車の輸出にも制限を課すことが出来ます。
造船業については既に影響が出ています。韓国国内の主要造船企業3社はロシアと7隻、8兆ウォン*1規模の建造契約を結んでいたり、5兆ウォン*2規模のLNG運搬船の共同プロジェクトを推進中だったのですが、中間金を受け取る直前だったそうです。
実際の中間金の金額は分かりませんが、規模が規模ですから相当の額でしょう。これがそっくり消えることになります。
最後にエジプトへの原発輸出（厳密には違う）についてもロシア資本が絡んでいるそうで、影響が懸念されています。
これは実際制裁対象になるかは不透明です。原発の技術的な部分の輸出ではないからです。
韓国は4月にエジプトのエルダバ原子力事業開発の契約締結を目指しているのですが、事業受注自体はロシア企業で、韓国企業はタービン建屋などの二次事業参加という形になります。
ただこの事業はロシアがエジプトに資本を提供しています。つまりエジプトがロシアにお金を借りて、そのお金で韓国に支払う、と。
今の所「制裁対象外」との認識のようですが、金融制裁が課せられている中でロシア資本が入っている事がどのように影響してくるかが分からない、との記事が出ています。
韓国政府の動きが鈍かったのはこの辺りの事情もあったのかもしれません。
