韓国半導体産業の素材・設備日本依存率が未だに高いという話

ムンさんが最後の3・1節の記念演説をしたのですけれど、驚くほど中身が空っぽだったのでスルーします。

3・1と一体に何の関係があるのか分かりませんが、ソウル経済が「3・1節特集」として、半導体関連の素材や設備の海外依存についてまとめた記事を載せていました。よく調べられていたので紹介します。

 



ソウル経済の記事からです。

[カン・ヘリョンのハイエンドテク]3・1節特集:2019年、日EUV輸出規制..「その年、私たちは」


(前略)

同年(※2019年)7月、日本の輸出規制問題は日本政府が大法院の強制徴用判決に言いがかりをつけたことから始まります。日本企業が半導体工程に使われる化学素材を韓国に輸出出来ないようにしているからです。

△極紫外線(EUV)フォトレジスト△フッ化水素△フッ化ポリイミド。日本半導体素材メーカーがほぼ独占する、しかし韓国のアキレス腱を致命的に突く素材でした。

(中略)

当時、国内企業が多様なルートを確保し事態は一段落しました。悲惨だった2019年を経て韓国ではEUV生態系の拡張のための様々な試みが行われました。韓国素材会社のフォトレジストの開発、外国企業の生産現地化が実現し期待が高まっています。

ところがです。私たちの前にはバラ色の未来だけがあるのでしょうか。韓国のEUV素部装*1の生態系で冷静に判断しなければならない部分はないでしょうか。今のままですべての半導体素部装分野を国産化できるでしょうか。このような点が気になり、いくつかの数値を覗いて情報を集めました。すると、核心的な素部装の分野でまだ私たちが克服していない様々な要素を発見することができました。

(中略)

EUVフォトレジスト(PR)から始めましょう。EUVPRは、EUV光で回路の形を作る「露光」工程前のウェハーの上に塗布する液体です。このPRは日本のメーカーが世界の90%以上シェアを占めています。JSR、信越化学、東京岡工業(TOK)、住友化学などがこの分野の強者です。

特に韓国ではJSRのEUVPR輸入量が「かなり」多いと言われています。正確な比率は確認されていませんが、サムスン電子のメモリー·ファウンダリー分野のEUVPR輸入量のうち60%以上の絶対量がJSR製品だといわれています。

2019年に日本への輸出規制でこれらの輸出ができなくなると、サムスン電子など韓国のチップメーカーはJSR EUV PR「迂回(うかい)」の輸入方法を選択します。 日本JSRとベルギーの半導体研究ハブIMEC(アイメック)との合弁法人RMQCで生産するEUVPRを韓国に持ち込む案を選んだのです。ベルギーから韓国に渡ってくるPRのほとんどがEUVPRだと思われます。

(中略)

もちろん劇的な戦略でEUVR迂回輸入路を多角化したことは大きな収穫です。しかし、輸出規制から3年後もいまだに日本の資本が投入された国外生産EUVPRが相当量使われているというのは、我々にとって依然としてリスクです。特に世界の半導体覇権争いが深刻化し、どのような形の葛藤が生じるか分からない状況でです。単に日本でのEUVPR生産量が低下している傾向を見るよりも、△依然として日本企業が影響力を発揮する可能性△日本政府の影響力が依然として残っている可能性△まだ道のりの長い国産化、などを見極める必要があるのがポイントです。

(中略)

EUVPRのように輸出規制品目には含まれていませんが、EUV工程で重要素材とされるEUV用ブランクマスクも日本が独占しています。ブランクマスクは、光が回路の形をして通過するマスクに回路の形を描き入れる前の状態の平らな板です。

この素材は日本のHOYAというメーカーが世界市場でほぼ独占しています。今月3日にHOYAは業績発表会を開き「EUVブランクマスクに対する顧客企業の要求が増えており、生産能力を最大化している」と明らかにしました。この顧客会社にはEUVを商用化したサムスン電子、SKハイニックスが当然含まれていると思われます。

さらに、次世代EUVと呼ばれる2ナノ工程以下「High-NAEUV」用ブランクマスクもオランダASMLと緊密に協力していると発表しました。技術の高度化と独占体制を維持する可能性が高いです。

(中略)

EUVマスクが汚れないよう、工程の「ふた」となっているペリクル分野も日本の宣伝が目立ちます。日本の三井化学は、世界でEUV露光器を単独で供給するASMLとペリクルのライセンスを共有し、昨年5月、量産品の販売を始めたと公式発表しました。

もちろん韓国でも2019年以降EUVブランクマスク、ペリクルの開発に拍車がかかっています。しかし量産はまだまだだという見方が多いです。長年ノウハウを積んできた日本の影響力がさらに強大になるのは火を見るよりも明らかです。

(中略)

EUV半導体装置分野を見てみましょう。通常「EUV工程」といえば、EUV露光器を世界で単独で作るオランダのASMLを思い浮かべます。しかし露光器以外にも様々なEUV用半導体装置分野でも日本はかなり強いです。

まず伝統的な半導体装備の強者である日本の東京エレクトロン(TEL)。同社が作るEUV用トラック装備は世界市場でシェア100%近くを確保しています。

(中略)

UV用光線パターンマスク検査(APMI)装備分野では日本のレーザーテックが世界的に優位を占めています。日本に本社を置くレーザーテックの年間装備生産台数は10台以上規模と知られています。サムスン電子、SKハイニックス、インテルTSMCなどチップメーカーがEUV生産設備を大きく増やしている傾向にあり、今後同装備の争奪戦は激しくなるものと予想されます。

この他にも昨年の関税庁の輸出入統計を見ると、日本の半導体装置輸入額も過去最高を記録しています。この輸入統計がEUV装備群だけということはありませんが、日本の技術力と影響力が相当なものであることを傍証します。

f:id:Ebiss:20220301194243p:plain




日本への輸出規制事件は劣悪だった韓国の半導体生態系に警鐘を鳴らしました。日本の輸出規制の余波はまだ残っています。海外の有力企業の国内生産の現地化と国産企業の技術国産化が以前よりも活発に進んでいるためです。

(中略)

しかし業界の一部では、2019年に熱かった動きが今後も続くかどうかについて半信半疑の雰囲気です。

(中略)

最近、国会の入り口を越えた「半導体特別法」だけを見てみましょうか。通過手続きがかなり進まなかったうえ、人材養成案などが期待には及ばないという評価もあちこちから出ています。

すぐに海外依存度を低めたことと特別法制定に自身を持つのも良いですが、再び現実を冷静に点検し、素部装生態系の強化に全力を傾けてこそ、過去30年間続いてきた半導体覇権を守ることが出来ると主張します。

(後略)



ソウル経済「[강해령의 하이엔드 테크] 3·1절 특집: 2019년 日 EUV 수출규제..'그해 우리는'([カン・ヘリョンのハイエンドテク]3・1節特集:2019年、日EUV輸出規制..「その年、私たちは」)」より一部抜粋

よく調べられていると思います。
ソース記事には簡易的ではありますが2018〜2021年のフォトレジストの輸入量(ドルベース)を日本とベルギーで比較した表が載っています。
それによると、ベルギーからの輸入は2018年と2021年では27倍に急増しています。そして日本からの輸入も実は1.2倍増えています。「量」ではなく「額」なので単価が上がっただけとも見えますが。

 

結びで「海外依存度を低めた」としていますけれども、ベルギーから迂回輸入なので海外依存の実体は変わってませんよね?長々と書いていた部分は一体なんだったのでしょう?
また、省略箇所を含め記事中で「国産化」の成功例には一つも触れていません。これだけ丁寧に調べられているのに連日のように報じられていた「国産化」の実例が一つもないなんて皮肉です。それだけ困難で、時間・お金・人材育成に投資が必要だからこそ新規参入の旨味が無いってことなんでしょうが。

*1:素材・部品・装備