必要なのは「日本の助け」ではなく「妨害阻止」という話

昨日も「補償と謝罪の分離原則」というナゾ原則を紹介したばかりですが、今日も今日とてナゾ理屈です。

ユン次期政権が掲げる外交政策目標において日本が関わらないものは無く、そのため日韓関係の改善は必ず必要であるというのがベースです。そして日韓関係改善のためには、ユン次期政権の最初の外交課題に徴用訴訟問題の解決を上げています。
しかし、日韓関係の改善が必要なのは「日本の協力」が必要だからではなく、「日本の妨害」を阻止するためとのことです。

 



京郷新聞の記事からです。

[ユ・ジンモの外交フォーカス]ユン・ソクヨル政府、外交の出発点は「強制徴用」解決


来週発足するユン・ソクヨル政府が直面しなければならない外交環境は容易ではない。今は米国と中国が安保・貿易・技術など全ての分野で全方位的な対決構図を形成し、国際秩序のパラダイムが変わる大転換の時期だ。韓国の外交は一度も行ったことのない未知の世界に足を踏み入れている。ユン・ソクヨル政府の前に置かれた数多くの外交課題の中で重要でないものは無いが、一番先に手を付けなければならない分野は対日関係だ。現在の国際秩序と韓国対外関係構造などを勘案すると、韓日関係を今のような状態にしていてはユン・ソクヨル政府が追求するいかなる外交目標にも順調に近付くことが難しいためだ。

ユン・ソクヨル政府は韓米関係を包括的戦略同盟に格上げすることを外交政策の最優先順位に置いている。韓米日協力をアジア戦略の最優先要素と認識している米国と同盟の水準を格上げするには、今のような韓日関係では難しい。それだけでなく、原則ある南北関係、韓米同盟強化に伴う対中外交リスクの最小化、クアッド参加拡大など、ユン・ソクヨル政府が掲げている外交目標は全て日本と関連がある。日本の助けが必要だからではなく、日本の妨害を遮断するために関係改善が必要である。

韓国外交で日本が占める割合は意外と大きい。米中競争がますます拡大している今はなおさらだ。ムン・ジェイン政府の対外政策が成果を上げられなかった背景にも日本があった。

(中略)

北米対話で北韓核問題を進展させ、南北対話の幅を広げれば日本はやむを得ず付いてこざるを得ないと判断した。しかし、日本は背後で米国を通じムン・ジェイン政府の政策推進を持続的に妨害した。結局、ハノイで北米対話が途絶え、北韓の核問題がこれ以上進むことができなくなると、ムン・ジェイン政府は南北関係と韓米関係で困難を経験し始め、韓日関係でも日本の攻勢に押されることになった。日本を敵に回した状態では身動きに大きく制約を受けざるを得ない韓国外交の構造的弱点を看過したためだ。

底に沈んだ韓日関係を一気に改善することは容易ではない。だが、過去史問題をはじめ、韓日関係を遮る根本的な問題を直ちに全て解決しなければならないわけではない。

(中略)

方法が無くはない。これまで様々な案が提示されてきたが、政治的理由で推進する決断を下せなかっただけだ。代表的なのが「代位弁済を通じた交渉」だ。政府が強制徴用被害者に優先賠償することで、被害者が裁判所の判決で得た損害賠償の権利を買い入れ、日本企業と求償権を巡って交渉する方式だ。韓国裁判所の判決を履行しながらも、日本が反発しない解決策が生じる可能性がある。

(中略)

もちろん、強制徴用賠償問題を解決したからと言って、韓日葛藤が全て消えるわけではない。しかしこれを解決できなければ関係改善に必要な最小限の信頼を築くことはできない。韓日関係を正常に戻すための第一歩であり、ユン・ソクヨル政府の対外政策の巡航のために一番先に行われなければならない措置だ。

(後略)



京郷新聞「[유신모의 외교포커스] 윤석열 정부 외교의 출발점은 '강제징용' 해결([ユ・ジンモの外交フォーカス]ユン・ソクヨル政府、外交の出発点は「強制徴用」解決)」より一部抜粋

ユンさんが掲げる外交目標を達成するためには日本との関係改善が必要って、言い換えれば「日本の協力が必要」でしょう。なのにそう言えないのか、言ってはいけないのか...。
必要なのは助けではなく妨害阻止というのは、私には理解に苦しむナゾ理屈です。常日頃から日本の妨害ばかりに腐心する韓国だからこそ、日本もそうに違いないと考えているのでしょうか?

また、ムンさんの対北政策を妨害したのは日本ではありません。どちらかというと北朝鮮です。
金正恩さんがトランプさんに送った親書の中で「ムンは邪魔。あいつ抜きでサシで話したい」とはっきり書かれています。
それに日本の妨害程度でハノイ会談がダメになったのなら、結局ムンさんの外交力はその程度だったというだけです。(もしくは日本の話をハイハイと聞いた米国が間抜けなのか?)

そして、関係改善が必要な理由は韓国の理由しか語られていません。解決策にしても、韓国の裁判所の判決を履行するという一方的な韓国の都合だけです。
日本の言い分である「約束を守れ。国際法違反を是正せよ」はマルっと無視して、既に断られている「代替え賠償」案を今更また持ち出しています。どこまでも韓国本位でしかモノを見ていない証拠でしょう。

この手の主張が日本側にも受け入れられるだろうとの根拠が「岸田総理は関係改善を望んでいるが、日本国内の強硬派のせいで言い出せない」になります。(記事中にはありませんが)
たびたび韓国メディアが「韓国が手を差し出しているのに...」「関係改善と言っておきながら...」との論調の記事を出すのも同じ理屈です。日本側の大前提である「約束を守れ。国際法違反を是正せよ」はやっぱり無視です。ここでも韓国本位です。
自国の国益を最重要視することと、自国本位にモノ事を判断することとは必ずしも一緒ではないと思うんですけどね。