今更「仲裁委員による解決」を訴える話

徴用訴訟について仲裁委員で解決しよう、とする主張がありました。

仲裁委員の設置要請は一度、日本側が出しましたが韓国が期日までに第三国の選定に応じなかったため流れています。
記事によると後日、韓国側も提案したけれど日本側に拒否された、とあります(ソース不明)。
けれども「両国とも政権が変わったんだから再度提案してみるのもいいじゃないか」そんな感じの内容です。

仲裁委員会の設置は日韓請求権協定に書かれていることですから、一見して「まとも」っぽい提案に見えそうです。
もしこれが2019年に日本が仲裁委員会を要請したタイミングで出てきた言説であれば評価出来たと思います。でも残念ながら「今じゃない」感しかありません。

 



ソウル経済の記事からです。

[寄稿]日本強制動員賠償、仲裁手続きで解決すべき


(前略)

硬直した韓日関係を解決していくことは、日本軍「慰安婦」問題と強制動員被害者賠償問題の解決から始めなければならない。日本軍「慰安婦」問題は前政府が2014年12月に成立した合意を両国政府間の公式合意として確固たる位置付け(既に新政府の外交長官が一通り確認)、合意内容を履行する次元で被害者が望む名誉回復および心の傷を治癒するための法案を日本側と慎重に協議していけば、ある程度解決が可能と見られる。しかし、韓国最高裁の判決に触発された強制動員被害者賠償問題は政府が司法部の判決を任意に覆すことは出来ず、これまで韓国側がまとめた解決策も、日本政府または被害者の拒否で白紙化されたため、問題解決のためには発想の転換が必要だ。

強制動員被害賠償問題は、韓日請求権協定第3条にともなう「仲裁手続き」で解決しなければならない。仲裁手続きは、韓日間の葛藤が発生した直後、日本政府が提案したが韓国側が拒否した。その後、韓国側が再び提案したが、日本側は受け入れなかったという。両国いずれも政府が変わったので再び試みればいい。我々が勝てば自然に問題が解決され、負けてもその結果を受け入れなければならない。協定上の仲裁手続きは、国家間紛争を国際司法裁判所の判決で解決する行為と類似した効果をもたらす国際規範の一つとして、最高裁判所の判決を克服する良い案になり得る。

(中略)

韓日両国政府は仲裁手続き開始合意と同時に、関係改善のための措置を推進していけば良い。仲裁の結論が導き出される頃には両国間の信頼がかなり回復しているだろう。

仲裁手続きが進行される間、私たちは国内に仮称「韓日過去史問題解決のための官民合同委員会」を設置し、過去史問題に対する国内世論を収斂し、包括的な問題解決方案を模索していく必要がある。

(攻略)



ソウル経済「[기고]日 강제동원 배상 '중재절차'로 해결해야([寄稿]日本強制動員賠償、仲裁手続きで解決すべき)」より一部抜粋

発想の転換が必要と言って取り出すのが初手の初手である第三国による仲裁委員ですかそうですか...。
しかし、両国とも政府が変わったんだから...って何の理由にもなってないですね。
しかも仲裁手続き進行中に両国間の信頼がかなり回復しているだろう...って、なんでそう言えるのでしょう?
文中では第三国による仲裁を国際司法裁判所での判決に例えています。仲裁手続き進行中に信頼が回復するって、裁判に例えると審理を通じて被告と原告が仲良くなるってことですよ。かなり変じゃないですか?

これは信頼回復とは何か、何をすれば相手からの信頼が得られるかという具体的な部分を見ずに、上辺の雰囲気(イメージ)だけを希望的観点から語っているように思えます。