韓国がノーベル賞を取るには「研究動機が自身の好奇心であるべき」という話

時期外れですがノーベル賞ネタです。

ユンさんの就任式に米国のノーベル賞受賞者が招待されていたそうで、その人へのインタビューで「韓国人がノーベル賞を取るにはどうすればいいか聞いてみた」というものです。

質問を受けた教授は「研究動機は好奇心であるべき」と核心を突いた回答をしています。
これには政府による管理や干渉を受けない、という意味もあるでしょうが、「ノーベル賞を取ることが研究目的であるべきではない」という意味でも言えることです。

しかし、インタビュアーの話のもって行き方からして「国はどのような制度を整えるべきか?」という観点からの話を望んでいるような印象です。そのため、教授の回答も前者の意味の文脈として出てきます。

 



毎日経済の記事からです。

「韓国人にノーベル科学賞?何を研究するにも顔色を伺わない自由があるべき」


(前略)

韓国を代表する多くの学者がノーベル賞受賞に挑戦したが、賞制定後100年以上の間、韓国人が学問的業績を認められるノーベル賞を受賞したことはなかった。多くの政府が科学技術の発展を強調し、基礎科学への投資を増やすと公言した。新たに発足したユン・ソンニョル政府も就任演説で科学を強調する姿を見せた。一部の分野では他の先進国に比べて研究力量が劣らないという評価も受けている。それでも「科学の花形」ノーベル賞受賞者が韓国で誕生しない理由は何だろうか。

毎日経済は2013年のノーベル生理学・医学賞受賞者のランディ・シェクマンUCバークレー教授を11日、ソウル大学基礎科学研究棟で単独インタビューした。彼はユン・ソンニョル大統領就任式に出席するために韓国を訪問した後、基礎科学研究院(IBSRNA研究団と交流した。シェクマン教授は「特定の方向」を定めずに支援してこそ核心的発見がなされると強調した。以下は一問一答。

ノーベル賞受賞者が出るためにはどんな政策が樹立されなければならないのか。
▷方向を定めない全面的な支援が必要だ。(中略)研究者は自分がどのような方向で研究するかに自由でなければならない。政府がこれに関与してはならない。政府官僚は常に自分たちのほうがよく知っていると考えて管理しようとしている。学者を自由に放っておけば生産性が落ちると思っている。(中略)

基礎科学は長期投資が必要だ。韓国に来ると、いつも「米国にはそのように多いノーベル賞受賞者が、なぜ韓国にはいないのか」という質問を受ける。科学者たちが研究する動機が自身の好奇心になるように、長い目で見て投資しなければならない。

ー 投資成果を望むのは当然ではないか。
▷例えば、シンガポールでは政府が研究を一つ一つ管理していると聞いている。投資すれば迅速に結果が出ることを望む。そのため、基礎科学分野でリーダーシップを発揮する機会がない。(後略)

ー 今月10日、ユン・ソンニョル政府が発足した。新たに発足する政府に助言したい内容はあるか。

▷(前略)実際の行動に移すかどうかを見守らなければならない(ユン大統領は就任演説で「見解が異なる人が考えを調整し妥協するためには科学と真実が前提にならなければならない」と述べた。また「飛躍と成長は科学と技術、そして革新によってのみ成し遂げられる」とし「科学と技術、革新は我々の尊厳ある暮らしを持続可能にする」と付け加えた)

(後略)



毎日経済「"한국인 노벨과학상? 뭘 연구해도 눈치안볼 자유 있어야"(「韓国人にノーベル科学賞?何を研究するにも顔色を伺わない自由があるべき」)」より一部抜粋

ノーベル賞に挑戦した」と認識している間は無理な気がします。ノーベル賞は挑戦するものではなく、研究結果に対して与えられる評価であって目標ではありませんから。

 

どこで何がどう役に立つかは分からないから政治が過度な口出しをすべきではない、あくまでサポートに徹するべきだ...というのは確かだと思います。
そして好奇心が大事だという点には大いに同意します。
と同時に、研究支援に投入されるのは税金ですから、政治はどこかで線引きをする必要があるのも確かでしょう。
税金は研究者の(個人的な)知的好奇心を満足させるためのものではありませんからね。この辺りは国だけではなく、もっと企業や個人が一研究者を応援できるような取り組みがあっても良いような気がします。