5月のルナーテラ大暴落、先月のウィーミックス大暴落と韓国では今年暗号資産絡みの大きな事件がありました。時系列的にその2件の間にFTX破綻が挟まります。
FTX破綻の影響は数ヵ国に及びますが、そのFTXが関連する投資会社であるアラメダ・リサーチの負債を隠すのに「韓国の友人」と呼ぶアカウントを利用していたとの話が出てきました。
「韓国の友人」が実在する人物なのか、単なる隠しアカウントを意味する符丁なのかは不明です。しかし、今年発生した暗号資産の信頼性を揺るがす大きな事件全てに不名誉な形で「韓国」が登場しています。
ペンアンドマイクの記事からです。
破産したFTX、子会社アラメダの負債隠しのために「韓国」アカウントを使用
(前略)
ブルームバーグ通信によると米国商品先物取引委員会(CFTC)は13日、バンクマンフリードおよびTX、アラメダ・リサーチに提起した訴訟でFTXが80億ドル程度のアラメダの負債をFTXの韓国顧客アカウントに隠していたと明らかにした。バンクマンフリードは子会社アラメダの負債が急激に増加したことを隠ぺいするためにこのアカウントを作るよう指示したとCFTCは主張した。
また、バンクマンフリードはこのアカウントを「我が韓国人の友人のアカウント」と呼んだという。ただし、現在まで「我が韓国人の友人」が実在する人物かどうか、仮想通貨内部のコードなのかなどは明らかにされていない。このアカウントはアラメダの主要アカウントおよびその下位アカウントと同様に、FTXリスク管理ポリシーの適用を受けていないことも明らかになったが、負債を隠すための用途だったために正常な手続きを踏むことが難しかったためと見られる。
ブルームバーグによるとFTXの元エンジニアリング理事であるニシャド・シンのGitHubアカウントに「BD費用口座」という単語として「韓国KYC」が出てくることが明らかになった。
(中略)
FTXと韓国の関連性は他のところでも見られる。バンクマンフリードは以前、様々なインタビューで「キムチ・プレミアム」を偶然知ったと述べ、これが事業の出発点だったと述べた。「キムチ・プレミアム」は規制が強い韓国の代わりに日本で仮想通貨差益取引をしたという意味だ。またFTXは「ハンナム・グループ」という名前の系列会社を韓国に置いたり、国内仮想通貨取引所であるビッサム買収を推進したりもした。
(中略)
公訴状によると、バンクマンフリードは2019年からFTX顧客と投資家をだまして彼らの資金をアラメダ・リサーチに押領し、債務と支出を返済した疑いが持たれている。アラメダ・リサーチはFTXの仮想通貨ヘッジファンド系列会社だ。
(後略)
「파산한 FTX, 자회사 알라메다 부채 은폐 위해 '한국' 계정 사용했다(破産したFTX、子会社アラメダの負債隠しのために「韓国」アカウントを使用)」より一部抜粋
「韓国KYC」のKYCは恐らく「Know Your Customer(本人確認)」の略です。多分、口座開設時の本人確認手続き(および身分証明書類)のことでしょう。
「キムチ・プレミアム」の説明で「規制が強い韓国の代わりに日本で仮想通貨差益取引をした」としていますが「キムチ・プレミアム」の肝は日本ではなく韓国なので、この説明は適切ではありません。日本でなくても韓国より規制の緩い取引所であればどこでも構わないのです。
韓国は資本の出入りを厳しく制限しています。特に2010年以降、外国からの影響力を管理するために資本規制が強化されました。資本の出入りが制限されているということは、国内あるいは国外への資本移動に「時間がかかる」という意味になります。
さらに韓国は居住者が国際取引所で暗号資産を売買するのも制限しています。その割に国内では暗号資産が活発に売買されています。
結果、韓国内の取引所と国際取引所の間で「価格差」が発生しました。2016年頃から注目され始めた現象で、韓国内で割高になるときは「キムチ・プレミアム」と呼びます。逆に割安になる場合は「キムチ・ディスカウント」と呼びます。
これにより韓国以外の取引所で安く仕入れて韓国の取引所で高く売る、もしくはその逆のアービトラージ(差益取引)が可能となるわけです。バンクマンフリード氏はこの手法で財を成したとされています。
大体において韓国内で「割高」になっていることが多く、平均で4%程度の価格差(2016~2018)が確認されています。
しかし韓国の国内取引所は韓国居住者以外には開放されていません(国内住所と電話番号が必要なはず)。ですから実際はそんな簡単な話でもないのです。FTXは系列会社を韓国に置いていたという話ですけど、FTX創業前の氏がどうやったのかは分かりません。もしかしたらそこで出てくるのが「韓国の友人」なのかもしれませんが。