韓国も中国と「選択的デカップリングに進むべき」という話

最近、中国市場との付き合い方・向き合い方に関する記事が増えました。どこそこの教授やらシンクタンクやらの言葉(報告書)を引用して、結局は「貿易規模を考慮すると中国を排除するわけにはいかない」的な話に落ち着くわけですが。メディアの中で「脱中国」の声を伝えているのは朝鮮日報くらいかな?という印象があります。

その朝鮮日報が、経済は大事としても「安保」に関わる領分は別腹で考えるべきで、韓国は中国と「選択的デカップリング」に進むべきだ、とする記事を載せました。
いや、「韓国は」ではなく、「韓国も」と言った方がいいでしょうか。

 



朝鮮日報の記事からです。連載記事の第二弾なので途中からとなります。

「韓国と中国は『選択的デカップリング』に進まなければならない」...どういうことか?


チャン・サンジク国際貿易通商研究院動向分析室長と韓国の貿易動向、展望、政府対応策について多くの話を交わした。話題を世界貿易の流れとグローバル化問題に変えて対話を続けた。

(中略)

ー米中間の葛藤で世界貿易がますます委縮する可能性がある。グローバル化時代は終わったのか?

グローバル化を考える最も代表的な指標が世界GDP(総生産)対比世界交易の比重だ。2008年の世界金融危機以降、この割合が次第に低くなっているのが現実だ。米中葛藤で商品交易は減少傾向にある。
さらに、全世界のGDP対比FDI(海外直接投資)の割合も減っている。ただ世界的にデータ移動、サービス交易が増加しているので商品交易の減少だけで先鋭化といえるかは分からない」

ー商品交易だけで見ると?

産業革命以後を『グローバル化1.0』、第二次世界大戦終戦から始まった『グローバル化2.0』に続き、1991年の冷戦終結後の30余年を風靡した『グローバル化3.0』が幕を下ろしている。グローバル化とともに訪れたゴルディロックス経済、すなわち物価安定の中での高成長で世界経済が反映した時代も終わりつつある。

ただし、ジャネット・イエレン米財務長官はグローバル化の終焉ではなく再グローバル化だと主張する。米国が主張する自由主義と多国間主義は終わったわけではないという意味からだ」

(中略)

ー以前の韓国のように貧しい国々が海外企業を誘致して経済を発展さえるじれはこれ以上難しいのではないか?

「人類共栄の面ではマイナスだ。米中間の覇権競争と各国の各自の跳躍現象がこのような結果を生んだのだ」

(中略)

ー米国は同盟中心にサプライチェーンを再編している。韓国は米国と中国との関係をそれぞれどう確立すべきか?

「選択的デカップリング(分離)に進まなければならない。米中葛藤以後、米国輸入市場で中国の比重が減ったが、米中交易は市場最大値を記録している。結局、核心産業ではデカップリング、その他の一般産業では分業関係で選択的デカップリングが行われているという意味だ。

このような点を活用して難しても事案によって異なる対応をしながら、米国と中国の双方に対する交流を拡大しなければならない。米国に対しては韓国が中国製造業に代わる最優先パートナーであることを刻み付け、これをうまく活用しなければならない。中国に対しては中国がうまくやっている部分で私たちが部品供給のような事項を協力しなければならないだろう。言うは易しいが、どう行動に移すかは...」

(中略)

サプライチェーンの側面で調べれば米中デカップリングができれば韓国が中国に対して時間を多く稼ぐことになる。先端装備が中国に入らないことで中国が技術追撃でさらに時間がかかるからだ」

(中略)

ー選択的デカップリング対応の事例を挙げるとすれば?

「最近、半導体装備の中国輸出についてよく言われている。米国がオランダと日本を説得して先端装備を中国に輸出しないようにしている。それでオランダと日本が承諾したという報道がある。昨年の半導体装備輸出状況を見れば米国、日本、オランダの中国への輸出が減った。早くも減らしているのだ」

ーそれが選択的デカップリングとどのように関係あるのか?
半導体は種類が多く工程ごとに特化するものが異なり、互いにやり取りするものが多い。そのため、まだ全面的なデカップリングが現れてはいない。しかし、半導体装備ではそのようなデカップリング現象が現れている。このようなことを選択的デカップリング対応方式と見ることができる」

(後略)



朝鮮日報「“한국과 중국은 ‘선별적 디커플링’으로 가야”…무슨 뜻?(「韓国と中国は『選択的デカップリング』に進まなければならない」...どういうことか?)」より一部抜粋

「選択的デカップリング」...なんだか今更感がある話な気がします。基本的にサプライチェーンの再編は「半導体産業」を「安保」の範囲内で考える上で始まったことなので、関係ない部分まで切り離す必要はない、が当たり前に思えていたのですけれど、韓国にとっては「交易=半導体」であるからこその盲点でしょうか。
あ、でもそういえば韓国人は、政治的に韓国を批判する人(あちらの定義で「極右」「嫌韓」となる人)が韓流ドラマやK-Popが好きだったりするのを理解できないんでしたっけ。0か100か、な考え方のためと見た方がしっくりくるかも。


関連する内容として同じ朝鮮日報系列の朝鮮Bizが韓国銀行の試算として、米中葛藤が激化し対中輸出が制限された場合、韓国の対中輸出は最大で1.7%減少、経済成長率は0.3%低下すると報じました。
韓国がいかに対中包容政策を主張して中国市場にしがみ付こうとしても、それだけではどうしようもない状況というは必ずあります。というか、サプライチェーン再編の流れというのがまさにそれです。

であるならば、そんな不確実性の塊のような中国市場にしがみ付くよりも、記事中でも言われているように「米国に対しては韓国が中国製造業に代わる最優先パートナーであることを刻み付け」の方が、メリットがあるように思います。もちろん「言うは易い」ですけど、米中の両者間で「バランス」を取るよりよほど一点注力しやすく、舵取りがしやすいです。

どうせこのままでは半導体(特にメモリ)は遠からず中国に負けます。その中国が足踏み状態になるだけでお釣りが来ると思うんですけどねぇ。