「日韓関係が改善されたから韓国はG8に加入できる」というナゾ理論の話
間もなく開幕の広島G7サミットですが、今回はオブザーバー(招待国)がオーストラリア、ブラジル、コモロ、クック諸島、インド、インドネシア、韓国、ベトナムの8ヵ国となっています。
コモロはアフリカ連合の議長国。中国のアフリカへの影響力拡大が懸念されていますからね。それとBRICS*1のブラジルとインド。インドネシアはASEAN議長国、クック諸島は太平洋諸島フォーラムの議長国です。やはり中国の影響力強化を警戒してのものでしょう。
ASEANの中で別枠で呼ばれているベトナムは、先日お伝えしましたけれども米中摩擦下において米国内の半導体シェアが2.5%→9.8%にアップする反射利益を得ています。東南アジアの製造拠点としての重要度が増しているということですね。
もちろん、招待国には招待国の思惑があることでしょう。G7、中国、ロシア...それぞれ天秤に掛けて利益を最大化することを狙ってくるはずです。G7だって一枚岩ではありませんしね。
そんな中、韓国だけは...というか、韓国メディアだけ(?)はなんだか不思議な話で盛り上がっています。 日韓関係が改善されたのだから、いよいよG8入りだ、と言うのです。
韓国日報の記事からです。
再び膨らむG8編入への期待感...中露相手の外交政策の一貫性確保がカギ
ユン・ソンニョル大統領が19~21日、日本の広島で開かれる主要7ヵ国(G7)首脳会議に出席することにし、韓国のG8進入に対する期待感が少しずつ漏れている。G8に参加するためにはG7加盟7ヵ国の満場一致の同意が必要だが、これまで韓国の合流に反対してきた日本と雪解けムードが造成されているためだ。
米国や英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本で構成されたG7は「先進国クラブ」と呼ばれる。2008年(日本)、2009年(イタリア)、2021年(英国)に続き、今回までに4度もG7に参加する韓国は有力なG8候補だ。政府は今回のG7首脳会議でG8編入モメンタムを作るための積極的な外交戦を繰り広げる方針だ。韓国の経済力がG7国家のうち5位を占め、軍事力と民主主義発展水準などを見るとG8編入資格が十分だという立場だ。パク・ジン外交部長官は先月、外交部が主催した駐韓G7大使招請晩餐会で「G8のために」と乾杯の挨拶をしたりもした。
ただ、まだG8編入のための予熱段階に近い。19~21日、日本の広島で開催されるG7首脳会議ではメンバーシップ拡大可否に対する議論は行われない予定だという。米国務省は15日(現地時間)、G7首脳会議が韓国を含むG8に拡大する可能性について「分からない」と明らかにした。
韓国合流に対する日本の否定的認識が薄くなったとしてもG7拡大に消極的な一部欧州諸国も越えなければならない山だ。2021年、英国がG7メンバーシップ拡大に言及したが、これは全体メンバーシップ(外交・通商・金融など)拡張ではなく気候変化など特定アジェンダに制限されていたと伝えられた。
政権が変わっても外交政策の一貫性を維持できるかどうかもG7諸国が掲げている厳しい編入条件だ。最近、安保イシューに浮上した米中競争とロシアのウクライナ侵攻問題などで外交政策を一貫して推進できるかということだ。2020年にトランプ政権がG10(G7+韓国+オーストラリア+インド)を出した時も相当数のG7国家は「各政府の政権が変わっても域内内外の安保環境に対して政策一貫性を維持できるのか」という質問を投げかけたという。
匿名を求めた元高位外交官は「G7は基本的にグローバルガバナンスを議論する所」とし「編入を望むなら外交だけでなく財政・通商などの領域で韓国が国際社会に寄与するところが大きくならなければならず、韓半島とアジアなどを越えて一貫性のある対外政策を体系的に推進できる外交戦略を持っていなければならない」と話した。
(中略)
G8になれば韓半島を離れ東南アジア・太平洋島嶼国・中南米・アフリカなどの安保および経済不安にも積極的に関与しなければならないが、まだグローバル外交インフラが不足しているという指摘も出ている。ソウル大学外交学科のチョン・ジェソン教授は「国連リーダーシップの弱化でグローバルリーダーシップグループが切実な状況で、韓国が積極的に関与しようとする努力は肯定的に評価される」としながらも「G7諸国とのパートナーシップを構築し協力地点を広げる作業と共に外交的人材資源を用意した後、議論をしても遅くない」と話した。
韓国日報「다시 부푸는 G8 편입 기대감... 중·러 상대 외교정책 일관성 확보가 관건(再び膨らむG8編入への期待感...中露相手の外交政策の一貫性確保がカギ)」より一部抜粋
記事の中で自分で結論書いてますよね、「メンバーシップ拡大可否に対する議論は行われない」と。にも拘わらず、なぜ「G8進入に対する期待感が膨らむ」のか理解に苦しみます。(え、妄想?)
彼らの中では、韓国のG8入りを米国は歓迎していたのに日本が反対していたせいで実現しなかった、ということになっているのです。
もちろん、そんな事実はありません。いつもの「そうかもしれない」→「きっとそうだ」→「そうに違いない」→「そうした事実があった」の流れです。自分たちにとって都合の良い希望的観測が事実として一人歩きしだすフェイクの自家発電。
自分たちの望みが叶わなかったときに「韓国の力が及ばなかったからではない。日本が邪魔したからだ。韓国にはその価値があった。日本以外は認めている」と、理由を人に押し付ける習慣のせいでしょうね。
というか、そもそもG7内で「拡張」議論がありません。先日、岸田さんが中央日報とのインタビューでズバリ「韓国の加入を日本が反対している」という話をインタビュアーに振られてハッキリ「事実じゃない」「拡張議論がない」答えています。つまり「カギ」はそこ(韓国が「どうこう」)ではありません。
それに、もしG8になったとして中国との関係で困るのは韓国でしょう?韓国の戦略的あいまい性や等距離外交は距離を「保つ」のではなく、距離を「近付ける」んですから。西側に近付いた分、中国に近付かないといけなくなりますよ。
「G8」という肩書を「国格」や「ステータス」という側面からしか考えてないんでしょうねぇ。個人的に、韓国が見るべきは韓国以外の他の招待国家です。彼らがどのようにG7国家と中国との間で二面外交を行っているか、両方からどうやって利益を引き出しているか、参考にした方が良いと思います。
記事へのコメントは91件。反応は「良い情報:1 興味深い:0 非常に共感:16 良い分析:1 続報期待:2」です。
「コメントが面白い。前政権のときは招待されたといって「さすがムン」と褒め称えたが、今回は何のために加入するのか、とブルブル震えている」(共感50 非共感5)
「大統領が変わるたびにチヂミをひっくり返すように変わるう鍋のような国に何を期待するの」(共感29 非共感1)
「G7加入条件の民主主義が完全に確立された国家で構成されている。G8加入に反対する左派は社会主義にしなければならないから反対するのだろう。憲法から自由を削除しようというやつらなのに」(共感25 非共感6)
「『各政府の政権が変わっても域内外の安保環境に対して政策一貫性を維持できるのか』は、すなわち西側勢力で構成されたG7に、韓国は政権が変われば中露に近付くということが分かっているという話だ」(共感13 非共感0)