韓国の安保戦略研究院が米中競争が進むと、中国が韓米同盟を強化しようとしている韓国に「報復措置」を取るかもしれない、との報告書を提出しました。
主に輸入の面で、韓国は3900近い品目で中国に80％以上依存しており、中には尿素、シリコン、リチウム、マグネシウムなど戦略的脆弱性が伺える、と。いつでしたか、尿素が不足したときは大変な混乱が起きていましたね。
ただ、「じゃあ具体的にどうしよう」という話が出てきていません。いつものことと言えばそうなんですけど、単純に「輸入先を多角化する」といったような提言もなく、「中国に分かってもらわなければ」みたいな内容になっています。
ニューシースの記事からです。
安保戦略研「中国、韓国に報復措置の可能性...先制的な対応を樹立すべき」
（前略）
5日、パク・ビョングァン国家安保戦略研究院国際関係研究室長は「ユン・ソンニョル政府発足1年と韓中関係」と題した報告書で「韓中関係は過去に比べて挑戦要因が増大し、複雑化する見通しだ」とし「分野別に韓国の対応原則と基調を樹立して一貫性を追求し、中国が韓米同盟結束を既成事実として受け入れるようにする必要がある」と述べた。
続いて「特に韓国の安保で核心として作用する北韓の核・ミサイル問題に関して、中国が国際社会での責任大国の姿を見せる時、韓中両国の信頼が増進されるという点を強調しなければならない」と力説した。
パク室長は、ユン政府の対外政策方向転換は「国際秩序の変化と我々を取り巻く北東アジア安保環境に対する冷徹な判断の結果」とし「根本的には方向性に関する限り内外的支持を得ており、ためらう必要は無いと評価できる」と評価した。
ただ、中国の反発は韓中関係に否定的な波及効果をもたらしかねず、韓中関係が敵対的だったりゼロサム状況に進まないよう管理していくことが重要だと指摘した。
（中略）
報告書によると、韓国が中国を含めたった一カ国に80％以上輸入を依存する品目は3900余りであり、対中国輸入で戦略的脆弱性が観測され関心が必要な品目は尿素、シリコン、リチウム、マグネシウムなど計1088個と集計された。
さらに中国は韓米同盟強化と韓米日安保協力に対応するため西海上で軍事演習をはじめ、西海上の東経124度を超える無断進入と韓国の防空識別区域（ADIZ）への無断進入を拡大する可能性も排除できないと研究院は指摘した。
パク室長は「中国は米中競争深化と韓国の選択により『圧迫』および『報復措置』を取ることができる」として「段階別予想シナリオと先制的対応策樹立も必要だ」と提言した。
（後略）
ニューシース「안보전략연 "중국, 한국에 보복 조치 가능성…선제적 대응 수립해야"（安保戦略研「中国、韓国に報復措置の可能性...専制的な対応を樹立すべき」）」より一部抜粋
先制的対応とは具体的に何を指すのか、よく分かりません。ただこの記事ではっきり書かれていることは一つ、「中国が理解しなければならない」です。記事本文で太字にした部分を言い換えるとそうなります。
もしかしたらこれが「先制的対応」かもしれません。しかしそれだと、韓国の問題なのに「韓国が～」ではなく、「中国が～する必要がある」となっているのが変な感じです。
先日読んだ本で、韓国語の「オクウル（억울）」という単語に触れていたものをふと思い出しました。漢字で書くと「抑鬱」になりますが、日本語でいう「抑鬱」とは意味が違い「悔しい」と訳されます。
しかし、一部では有名な話で「オクウル」を「悔しい」と訳すと誤解が生じることがあります。
「抑鬱」の漢字からも分かる通り「オクウル」は気分が塞ぎ込んだりイライラしている状態を表します。ただし、その原因において「私は悪くないのに」が前提です。「（私は悪くないのに周りのせいで）私に悪影響がある」ことを「オクウル」と言います。「悔しい」には無いニュアンスですね。
先日読んだ本ではこの違いに触れて、日本語の「悔しい」という感情は「（状況を打破するために）自分を変えねばならないと考える」「日本の『悔しい』は（韓国の『オクウル』に比べ）より強烈なエネルギーフィールドを作り、現実の変化を起こす可能性が高い心理」と分析していました。（それが明治維新の原動力との見解）
私は人を恨む方がエネルギーを消費すると思っていたので、この見方は新鮮だったのですが、「オクウルが恨に繋がる」と考えると、なるほどと思えることがあります。
「自分は悪くない」が前提にあると、自分は変わる必要がないのだから自分以外の周りが変化しない限り自分にとって「良く」ならない、というある種の諦観に繋がります。恐らくそれが「恨」です。
そして韓国の外交も、専門家の分析も基本スタンスが同じで、「韓国が良くなるために周りが変わらなければならない」...これを真顔で「国益」と言っているんでしょう。
