債務調整制度を利用する20~30代が増えているという話

韓国には信用回復委員会というところが提供する迅速債務調整制度というのがあります。日本に類似の制度があるのかはちょっと分からないのですが、一時的に返済の負担を減らせる制度です。
具体的には延滞1ヵ月以内であれば、この制度を利用することで延滞利子の減免措置を受けることが出来ます。督促も無くなります。ただし、借金(元金)自体は減りません。信用回復委員会が代理返済で借金を返済するので、債務者への求償権が信用回復委員会に移るだけです。日本だと金融機関が「借金をひとつにまとめる」系のサービスをやってるので、イメージ的にそれに近いかもしれません。

この債務調整制度の申請者数が増加傾向にあって、特に20~30代の申請者は去年と比較して60%程度増加するのではないかと言われています。
2022年の合計特殊出生率は0.78、今年1~3月期は0.81と日本以上に急速に少子化が進む韓国、20~30代の経済活動の低下はこれに拍車を掛けるかもしれません。

 



朝鮮日報の記事からです。

[延滞率非常]③2030世代、借金返済も限界··· 韓国経済の成長動力低下


(前略)

5日、信用回復委員会(信復委)がユン・ヨンドクともに民主党議員室に提出した資料によると今年1~4月の債務調整制度新規申請者は6万3000人余りに達した。このうち20~30代は2万2000人余りで35.4%を占めた。

特に20代の申請者の増加傾向が激しかった。20代の申請者は2020年の1万4125人から2021年に1万4708人、2022年には1万7263人に増加した。今年1~4月申請者の中で20代は8043人で、3ヵ月で昨年申請人員の半分に迫った。30代申請者も昨年1年間で3万1202人と前年対比19%増加したが、今年1~4月の申請者だけで1万4345人に達した。この傾向ならば今年債務調整を申請する20~30代は昨年と比べて60%程度増加するものと見られる。

信回委の債務調整は、延滞期間によって最長10年(担保35年)の期間中、借金を返済すれば利子と元金を帳消しにする制度だ。延滞期間により、迅速債務調整、フリーワークアウト、個人ワークアウトなどに区分されるが、今年迅速債務調整を申請した人が最も大幅に増えた。2020年に迅速債務調整申請者は7166人だったが、今年第1四半期の申請者だけで1万4465人に達した。

迅速債務調整は貸出元利金を正常に返済しているが、延滞が憂慮される人と1ヵ月未満の短期延滞者の債務償還を猶予したり償還期間を延長するプログラムだ。主に債務返済を直ちに履行できないことを憂慮する借主(融資を受けた人)が選択する。中低信用者が多い20~30代がこれ以上貸し出しを受けるところがなく、借金を借金で返すことも出来ない状況になったためと分析される。

(中略)

庶民専用政策金融商品であるヘッサルローンのうち、青年層が利用するヘッサルローン・ユースの代位返済も急増している。主要なヘッサルローン商品の累積代位返済は2020年末基準で1兆3773億ウォンだったが、以後毎年平均6000億ウォン以上増え、昨年末は2兆6076億ウォンを記録した。代位返済は借主が貸出金を返済できない場合、庶民金融新興院が代わりに返済し、貸出借主に求償権を行使する制度だ。

年代別代弁済数を見ると、今年第1四半期の20台が1万3677人で最も多く、続いて30代が1万114人で次の順だった。代位返済は19歳以上34歳以下を対象とするヘッサルローン・ユースできゅふぇきに増加したことが分かった。ヘッサルローン・ユース発売初年度の2020年の代位弁済は0.2%に過ぎなかったが、2021年に2.9%、2022年に4.8%に上昇した。今年第1四半期の代位弁済率は5.5%、累積代位弁済金額は527億ウォンに達する。

(中略)

キム・ミル韓国開発研究院(KDI)研究員は「限界状況に直面した青年借主に既存債務を長期間分割償還貸し出しに転換する機会を拡大し、短期償還負担を軽減し、長期間かけて償還できるよう補助する必要もある」と提言した。

ただし、20~30代の債務調整は慎重に接近しなければならないという指摘もある。「ヨンクル*1投資」や「借金して投資」をした青年層まで国家税金で債務調整をしなければならないのか、という反感も少なくないためだ。また、債務調整プログラムの実行性に疑問を示す声もある。

ある金融会社の関係者は「パク・クネ政府の時、国民幸福基金を造成して4年間に58万人の借金を帳消しにしたが、このうち10万6000人余りが再び債務不履行者(3ヵ月以上延滞)になったという調査結果がある」とし「単純な債務帳消しではなく『働いて借金を返すよう誘導する』制度が必要だ」と話した。



朝鮮日報「[연체율 비상]③ 2030세대, 빚 돌려막기도 한계… 한국경제 성장동력 저하([延滞率非常]③2030世代、借金返済も限界··· 韓国経済の成長動力低下)」より一部抜粋

ヘッサルローンというのは第2金融圏が提供するローンです。利用できる条件は年収3500万ウォン(約350万円)以下、あるいは年収4500万ウォン(約450万円)以下で信用評価が下位20%以下の人です。

これと関連しているのかは分かりませんが、いわゆる「極端な選択」をする人が増えているそうで、第1四半期は昨年の9.2%増となっています。
年代別の増加率は20~30代より19歳以下が深刻で前年比50%増だそうです。
年代分布で見ると、年齢が上がるほど人数も増えていて50代(20.5%)が最も多く、次いで40代(18.2%)、60代(16.3%)となります。これらと比べると、20代(11.1%)と30代(12.7%)が相対的に低いのは年齢的に「まだやり直せる」と思える部分が大きいのかもしれません。そういう意味では債務の理由を問わず債務調整を受けられる制度というのは必要かと。


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「就職したら、みんなが買う車を買わなければならず、友達の結婚式に持って行くブランドバッグを買わなければならず、他の人たちが行く海外旅行に行って認証ショットを残そうとすると借金に追われるよね、年俸3~4千の稼ぎじゃ」(共感118 非共感6)

「国の負債が史上最大、家計負債が史上最大...すべてのことは借金でお金をドンドン使ってしまった災いの政権の後遺症...出産率は絶滅レベル、自〇者は増加...これが国なのか?」(共感41 非共感9)

「地道にやらず、まぐれだけ望むから」(共感10 非共感3)



*1:魂を売ってでも