日米首脳会談を控えて敵基地攻撃能力保有について、「日本問題については米国を通じて対応」「米国に韓国の安保的状況、立場、憂慮をよく理解させる必要がある」という主張の話

今月13日に岸田さんは訪米し、バイデンさんと日米首脳会談を行う予定です。
ホワイトハウスが発表した声明によると、主な議題として「クァッド協力関係の拡大」「自由で開かれたインド太平洋の推進」「北朝鮮問題」「ロシアによるウクライナ侵攻問題」「台湾海峡の平和と安定の維持」などが挙げられています。
また、今回の日米首脳会談は日本の安保三文書改定以降、初開催となります。バイデンさん始め、米朝野のメインストリームは日本の敵基地攻撃能力保有を歓迎していますが、改めてこの件の支持が表明されるものと思われます。

韓国が神経を尖らせている件です。韓国の「憂慮」にも関わらず、米国が日本の防衛力強化を評価していることも広く報じられており、当然把握しています。
韓国では日本を動かすには米国を説得(韓国の対場を説明)して、米国から圧力を掛けてもらうのが定石と考えます。そこで今回も「米国に韓国の安保的状況とそれに伴う立場および憂慮をよく理解させる必要がある」との主張が出ています。
具体的に「韓国の安保状況」と「立場」および「憂慮」が何を指すのか分かりませんし、なにを「どう」して欲しいのかボンヤリし過ぎでよく分かりません。条件反射的な「とりあえず反対」表明かもしれませんが。

 



聯合ニュースの記事からです。

[特派員の視線]日本の防衛強化と米国、そして韓国


先月16日、日本が国家安保戦略(NSS)を発行すると、韓国ではNSS上の独島領有権主張に対する政府レベルの講義と共に日本の北韓先制攻撃の可能性に対する憂慮が出た。
韓国のこのような雰囲気は、韓米日3国の安保協力にも否定的に作用する可能性があると見て米国の専門家たちにそれに対する立場を尋ねてきた。

その回答の一つがヘリテージ財団韓半島問題を扱うブルース・クリンナー先任研究員が言ったこの言葉だ。
クリンナー先任研究員は日本のNSSに対して「徐々に中国と北韓の脅威により強力な対応措置を取ることが必要だという日本の劇的で歓迎すべき思考転換が反映された」と評価した。
北京と平壌の脅威が現実になり得ると見て、日本が対応に乗り出したということだ。

そして「ソウルで36ページの文書のうち、一つの文章だけに集中するのは残念だ」とし「米国と韓国、日本は共同の脅威に対応するための3者安保協力を持続的に強化しなければならない」と述べた。

(中略)

米国のこのような態度は、いわゆる「桂タフト密約」に象徴される米日同盟の根強い歴史に加え、一時米国の「不沈空母」になると明言した日本の防衛能力の拡大が米国の安保利益に合致するためだ。特に、米国が唯一の戦略的ライバルとして名指しした中国がアジア・太平洋地域を中心に覇権を追求し、ウクライナ戦争で北韓・中国・ロシア間の協力が強化される流れを見せるなど北東アジアの安保環境が変化するこのような状況で、日本が反撃能力を保有すると言ったことは時期的にも米国の安保利益によく合致する。

問題は、米国と戦略的利害関係を共にする日本と韓国の立場が異なるという点だ。
北韓の核・ミサイル脅威に対応するために韓米日3国間安保協力を強化することは必要だが、これが「韓米日対北中ロ」という対立構図になったり、北東アジアが軍備競争の場になることは韓国の国益に合致するものではない。
新冷戦の構図は、北韓核問題をはじめ韓半島問題の解決を難しくし、軍備競争は韓半島の緊張を高めるためだ。

さらに中国は経済的に見れば韓国の第1交易国家でもある。

これと共に過去の痛い歴史とかみ合った韓国国民の情緒も無視できない。憂慮そのものが根拠がないとは言えないうえ、政府の外交政策も国内世論と共にする時に力を受けることができるためだ。
このような点で、米国に韓国の安保的状況とそれに伴う立場および憂慮をよく理解させる必要がある。
特に日本問題については、米国を通じて対応する努力が求められる。

(中略)

日本が新しい防衛戦略を発表した後、初めてバイデン大統領と岸田文雄日本首相が13日、米国で首脳会談を行う。
今回の日米首脳会談から韓半島関連問題については韓国の立場が反映された声が出ることを期待する。



聯合ニュース「[특파원 시선] 일본의 방위 강화와 미국 그리고 한국([特派員の視線]日本の防衛強化と米国、そして韓国)」より一部抜粋

米国が日本の方針を支持するのは、日本の防衛力強化が米国にとって都合が良いから。万が一のときは北朝鮮、中国、ロシアに直接対応しなければならない日本には都合が良いというより必要だから。日米は利害が一致しているということです。少なくとも記者はここは認識できていると思われます。

しかし話が韓国自身のことになるとおかしなことを言いだします。いや「東アジアが軍拡の舞台になることは韓国の国益に適わない」は良いとしましょう。
それにしても「過去の痛い歴史とかみ合った韓国国民の情緒」って何ですか。そんなの韓国の国内問題でしょう。自国でなんとかしなさいな。それを「日米首脳会談から韓国の立場が反映された声」が出ることを期待するとか意味が分かりません。
「韓国の安保的状況とそれに伴う立場および憂慮」として、具体的に記者は何をどう伝えるべきと考えているのか気になります。


日米韓3ヵ国協力は「日米」が利益を得るためのものではなく「日米韓」が利益を得るものです。
にもかかわらず「韓国の立場を考慮せよ」は「韓国からメリットを引き出したいのであれば韓国に利益を与えよ」と言っているようなものです。ところで、韓国から引き出せるメリットとは3ヵ国協力のことですから、もれなく韓国も利益を享受します。マッチポンプです。つまり韓国は「相手にメリットを提供せず利益だけ享受する」ことを期待しているわけです。

韓国がすべきは3ヵ国協力から自国が得られる利益を計算し、最大化するために「得な部分」にだけ注目し、国民・メディアの視線を巧く誘導(説得)することでしょう。そのためには現状認識が正しく行われる必要があると思います。
すなわち、中国はもうすでに「韓国の第1交易国家」ではなくなりつつあるということです。また、韓国の主敵は日本ではなく北です。歴史的に言っても日本が韓国の主敵になったことはありません。「過去の痛い歴史とかみ合った韓国国民の情緒」が日本に向けられるのは...やはり政治的パフォーマンスに「反日」が利用されることはあっても「反北」や「反共」にはそれが無いのは大きいと思います。