韓国経済「楽観論」を対外変数から見る話

韓国政府や韓国銀行が主張する「楽観論」について対外変数(記事中では「弱い輪」と表現)から分析している記事を紹介します。対外変数ということもあり、韓国国内のインフレ状況や不動産市場の動向、家計負債などの国内の火種には触れず、あくまで韓国経済の推進力を「輸出」に限定してあります。
こちらは連載記事のようで、初回は「対外変数=中国経済の不振」に焦点が当てられています。

 



ザ・スクープの記事からです。

楽観論 vs 9月危機説、行き違った経済展望と不都合な変数


韓国経済に対する楽観論と悲観論が対立している。韓国銀行と政府は楽観論を展開する。輸出と製造業を中心に景気が回復傾向を帯びるだろうという展望だ。韓国経済を悲観的に見通した国際経済機関の見解とは対照的だが、韓国政府と韓銀の楽観論は合致するだろうか。

(中略)

2023年第3四半期に入った韓国経済の雰囲気が尋常ではない。各種経済指標が回復ではなく低迷を示し、下半期に春風が吹くだろうという楽観論が力を失っている。主要機関が示した今年の成長率展望値はますます低くなっている。

経済協力開発機構OECD)は6月、今年の韓国成長率展望値を1.6%から1.5%に下方修正した。7月に「世界経済展望修正」を発表した国際通貨基金IMF)も0.1%ポイント(1.5%→1.4%)下げた。両機関が世界経済成長率の展望値を上方修正(OECD=2.6%→2.7%、IMF=2.8%→3.0%)したことを勘案すれば、韓国経済に対する見方がどれほど否定的なのか分かる。

グローバル投資銀行(IB)の見通しも大きく変わらなかった。国際金融センターによると、7月末に報告書を発表したJPモルガン、ゴールドマンサックス、メリルリンチ、シティ、バークレイズ、UBS、HSBC野村証券など8つのIBが見通した韓国の今年の経済成長率展望値平均は1.1%を記録した。

(中略)

それでも楽観論に固執するところがある。韓国銀行と韓国政府だ。韓銀は8月24日に発表した経済展望報告書で今年の成長率展望値を1.4%に維持した。韓銀は「主要国景気の流れとエネルギー価格などで成長経路の不確実性が大きい状況」としながらも「第2四半期輸出と製造業を中心に不振が緩和し、IT景気反騰と遊客(中国人観光客)の流入で景気が次第に改善されるものと見られる」と明らかにした。

政府も韓銀の展望に力を加えた。4日、非常経済長官会議兼輸出投資対策会議に参加したチュ・ギュンホ経済副総理兼企画財政部長官は「変動性はあるが、韓国経済が底を固め回復を始める入り口の段階にある」とし「9月には貿易収支黒字基調の持続と共に輸出減少幅が追加緩和するものと予想され、今年の第4四半期中には輸出がプラス転換するだろう」と明らかにした。

それなら、韓国経済は政府の楽観論のように回復に向かうことができるだろうか。このためには韓国経済の供給源である輸出が蘇らなければならない。まず輸出統計を見てみよう。関税庁によると8月の貿易収支は8億6800万ドルを記録し、今年6月以降3ヵ月連続で貿易収支黒字記録を続けた。昨年3月から続いた15ヵ月連続貿易収支の赤字記録を打ち切ることに成功した。

(中略)

韓国の貿易依存度は昨年第1四半期基準で79.7%に達する。それでは、下半期の韓国経済の変数として作用し得る「国外の弱い輪」はどんなものがあるだろうか。

(中略)

中国は今年、韓国の輸出金額6835億8400万ドルの22.7%(1557億8900万ドル)を占める最大の交易国だ。韓国政府が「韓米日経済協力」に焦点を合わせているにもかかわらず、中国経済が韓国に及ぼす影響力が依然として高いということだ。

問題は最近発表される中国経済指標が不振を免れずにいるという点だ。中国国家統計局によると、7月の産業生産は前年同月比3.7%増加した。市場の展望値である4.6%を大きく下回る数値だ。消費も芳しくない。7月の中国の小売販売増加率は市場展望値の4.8%を大きく下回った2.5%に止まった。全世界に期待感を与えた中国のリオープニング(経済活動再開)効果が大きくなかったという傍証だ。

弱り目に祟り目で、中国の今年第2四半期の経済成長率は市場の予想値」(7.0%)を下回った6.3%(前年同期比)を記録し、市場の懸念が高まっている。見通しも明るくない。不振な経済指標に不動産危機まで重なり、グローバルIBが中国の経済成長率展望値を相次いで下げている。

投資銀行JPモルガン・チェースは中国の今年の国内総生産GDP)展望値を5.0%から4.8%に下方修正した。英国のバークレイズは従来より0.4%ポイント下げた4.5%と予想した。これには最近浮き彫りになった中国不動産開発業者である碧桂園のデフォルト(債務不履行)危機も一役買った。

(中略)

2024年までに返済しなければならない債権の元利金が157億200万元(約2兆8535億ウォン*1)に達する。

しかし同社は今年上半期だけで489億3200万元(約8兆8700億ウォン*2)の純損失を出した。

(中略)

キム・ギボン国際金融センター責任研究員は「中国の不動産産業はGDPの25%を占める」として「不動産市場の不振が投資と消費に悪い影響を及ぼすならば、今年の経済成長率が1%程度下がりかねない」と分析した。

反論もある。チョン・ビョンソ中国経済金融研究所所長は「中国の経済規模を考えれば依然として高い成長率を記録中」とし「市場の展望値より低いことを沈滞と見るのは正しくない」と話した。彼は「中国経済は危機では無くゆっくりと回復する」とし「政府が中国不動産市場を統制できるため不動産危機が拡散する可能性は低い」と評価した。

(後略)



ザ・スクープ「낙관론 vs 9월 위기설, 엇갈린 경제 전망과 불편한 변수 [視리즈](楽観論 vs 9月危機説、行き違った経済展望と不都合な変数)」より一部抜粋

数値だけ見ると韓銀とIMFの今年の韓国の成長率展望値は1.4%で一致しています。ですので本質として、韓国政府や韓銀の言う「楽観論」が問題というより、その根拠とするところを全て「対外依存」にして「座して待つ」が韓国の経済政策になってしまっているところが問題という感じでしょう。
確かにエネルギー価格などは国内政策で出来ることは限られます。それでも最低限すべきことはあるはずです。ザ・スクープは別の記事でエネルギー政策の件も取り上げているのですが、日本、米国、欧州は政府レベルでエネルギー価格の管理に乗り出しているのに、ユン政府は何もしていないことを問題視しています。特に日本と米国の政策はユン政府が(記事曰く)「ベンチマーク対象」としているにも関わらず、です。

記事は連載記事になっており、最後の「中国経済はゆっくり回復する」を受けて次回以降「中国の低迷」以外から韓国経済にとっての対外変数を探っていくようです。...が、仮に中国経済が回復するとしても、その速度が「ゆっくり」であるなら韓国経済への影響は甚大でしょう。中国への依存度の高い韓国経済がそれまで持ちこたえているか分かりません。それに中国が回復しきる頃には、中国内の経済構造は国産中心に変化している可能性もあります。


中国経済と言えば中国は最近、青年失業率が20%を超え統計発表を中止することを決めました。
内情を表しているとハッキリは言えませんが、中国のインフルエンサーで「口紅王子」という愛称の男性がいるそうです。詳しくは知らないのですけど、主に化粧品をライブ配信で紹介している人だそうです。軽快な語り口で年代問わず人気があるとか。
その人が配信で日本円で1200円ほどのアイブローを紹介していたときのことです。コメントに「高すぎる」と書き込まれ逆上(?)して「まじめに働かないから給与が上がらないんだ」というようなことを言い返し炎上、後に謝罪する事態になったようです。

まじめに働く/働かないは置いといて、あくまである種の趣味や自己満足の域にあるはずのコスメブランド。しかも1200円のアイブロウ。一本買えば何カ月使えると思ってんの?というものにまで「高すぎる」という感覚が顔を出してしまうのが今の中国青年層のホンネなのかな、という気がしてしまいました。


*1:約3000億円

*2:約9000億円