韓国の少子化は「ソウルの都市国家化」が原因という話

韓国の出生率は今、0.7ですが先日出た韓国政府の予想によると、来年(2024年)には0.68です。その後2026年の0.59まで減少、そこから反騰して2027年には0.7人に回復するとなっています。しかし、韓国政府予想は今までことごとく外れてきています。(2019年に出した予想では反騰時期を「2022年」、最低値を「0.86」と予想、「2025年に1.0に回復」)
また、0.7というのは韓国全体で見た時の出生率で、ソウル市単独で見ると0.59にまで下がります。韓国の首都圏人口集中度はOECD内トップで人口の約50%。国土の約1割に半分の人口が暮らしており、まるで都市国家のようです。

よく引用されるOECD加盟国の中で出生率が1.0を割っているのは韓国だけです。もちろん、最下位です。
しかし視野をOECD外にまで拡大すると、他にも1.0を割っているところがあるのだそうで、それらと韓国とを比較すると、ある共通点が見えてくること。

 



ノーカットニュースの記事からです。

合計出生率1人以下は大韓民国が唯一?


(前略)

CBSノーカットニュースが米国非営利人口統計研究所である人口照会局(PRB・Population Reference Bureau)に要請し「人口参考国の2020年世界人口データシート」によると、大韓民国の他にも合計出生率1人以下の国があった。ただし、ここで名指しされた国を「国家同等」と見なすかは国際政治的利害が異なる可能性がある。

米人口照会局の資料によると、大韓民国マカオの両国の合計出生率は2020年基準でそれぞれ0.9人と低い数値を記録した。

(中略)

国連の「人口統計年鑑システム」によると、韓国の合計出生率は2017年(1.052人)、2018年(0.977人)、2019年(0.918人)、2020年(0.837人)で墜落中だ。

マカオもまた合計出生率が2016年(1.138人)、2017年(1.019人)から2018年(0.924人)には0人台に落ちた。以後、2019年(0.932人)、2020年(0.892人)を記録し、1人以下に下がる傾向を見せている。

(中略)

「香港」も合計出生率1人に満たない地域だった。

香港は(統計庁基準で)2019年に1.03人で1人台を維持したが、2020年に入って0.87人、2021年(0.75人)、2022年(0.76人)に落ちた。

(中略)

香港家族計画調査を5年毎に実施するFPAは、結婚が減り晩婚が増えたのが少子化の主な原因だと指摘した。

ポール・イプ香港大学教授でFPA名誉顧問は「結婚する人が減って出産率が下がった」とし「シンガポール、ロンドン、東京など高所得社会では小家族が標準になるが、香港は特に結婚しようとする人が少ない」と説明した。

(中略)

マカオ、香港、そして韓国。これらの国が合計出生率0人台に追い込まれた原因は何だろうか。

韓国の少子化の根本的な原因が「ソウル共和国」にあると話す人口学者がいる。都市国家として扱われるマカオと香港、韓国の首都圏人口集中現象がよく似ているということだ。

チョ・ヨンテ・ソウル大学人口政策研究センター長はCBSノーカットニュースのインタビューを通じて「合計出生率が1.0人未満のところは都市国家だけだ。これらの国家は外に出られないという領土の限界を持っているが、韓国はまるで都市国家のようにソウルにだけ青年たちが集まっている」と指摘した。

チョセンター長は「高い密度と、それに伴う激しい競争が超少子化現象の最も根本的な原因」と指摘し「マカオ、香港など都市国家は行けるところがそこしかないのに、内国人はもちろん外国人も集中が高まり競争が大きくなるばかりだ。競争が激しいと生存が再生産を優先するのが自然の摂理」と答えた。

続いて「昨年、韓国の合計出生率が0.78人に落ちた。ところがソウル市は0.59人だ。ソウルに青年たちがとても多く集まって暮らしているが、ソウルに集まった人々同士の競争が激しくなれば子供を産むこと先送りしたり、あるいは諦めたりする場合が多い」と伝えた。

また「特にソウル首都圏を中心に女性の働き口が集中している。まず首都圏集中現象から解決しなければならず、その次に青年たちの間に心理的な競争といった部分が少し解消されなければならない」という方案も提示した。

韓国銀行も最近「地域間人口移動と地域経済」報告書を通じて青年たちの「首都圏偏り」現象が韓国少子化の重要な原因だという分析を出した。

報告書によると、国土の11.8%を占める首都圏に韓国人口の半分以上(50.6%)が住んでいる。韓国の首都圏人口の割合は2020年を基準に経済協力開発機構OECD)26ヵ国の中で最も高い。

反面、人口2~4位都市の合算人口比重は中下位圏水準だ。世界的にも首都圏の一地域だけに人口がこのように密集しているのは異例のことだ。首都圏集中現象は地域間人口自然増減(出産・死亡)の差のためではなく、地域間移動による社会的増減によるものと分析された。

特に15~34歳の青年層の首都圏流入が最も大きな要因になった。2015年以降2021年まで首都圏から純流入などで増えた人口の78.5%が青年層だ。反面、同期間に湖南、大邱慶北、東南圏で減少した人口の87.8%、77.2%、75.3%が青年層だ。

この中で青年層の首都圏偏り現象は少子化問題の原因にも指摘された。

(中略)

一方、首都圏集中現象による少子化加速化は、都市国家に似た韓国の特殊性であると、フランス国立人口統計学研究所(INED)のローラン・トゥールモン責任研究員は分析した。

彼は「普通人口の場合、主に都市に集中しており、その他の地域には人口密度が高くないのが特徴であり、実際フランスや欧州は人口密度がそれほど高くないため、韓国に比べて人口密度問題は(少子化の)主な要因ではない」と見通した。

続いて「韓国とフランスの合計出生率が異なる理由はむしろ住居問題が一つの要因だと考え、これは出生率に影響を与えるだろう」と答えた。

(後略)



「합계출산율 1명 이하는 대한민국이 유일하다?[노컷체크] (合計出生率1人以下は大韓民国が唯一?)」より一部抜粋

都市国家の人口減少と言えば、古代ギリシア都市国家群も少子化で大変だったらしいですね。

あと、住居問題が少子化の要因というのも香港には当てはまりそうです。あそこも不動産価格の高騰が社会問題化していましたから。

他にも経済的負担の面や、人生の不確実性からくる不安などが出生率に影響を及ぼすという研究者の意見が紹介されていまして、バランスの良い記事に思います。


最近、本当にいろんな「少子化」関連記事が増えています。
上で紹介した記事に含まれていない説としては、「メディアの責任」を追及するものがあります。ドラマや映画などのエンタメで扱われる家族像が「正しい家族の形」として固定観念化し、よくある「恵まれない女性」が「財閥の御曹司」と出会うシンデレラストーリーの氾濫が結婚観のハードルを上げている、というような内容でした。
まあ、言わんとしていることは分かります。日本で言う「二次元の恋人」のノリでしょう。

ただ、ちょっと説得力に欠けるんですよね。何でもかんでも一つの原因で片づけようとする強引さからそう感じるだけなのかもしれませんけれども。