韓国成人の半数以上が「家族・友人・知人の勧めで金融商品を選択する『金融オンチ』」の話

来月、OECDの2022年PISA(学習到達度調査)の結果が発表されることもあり「機能的文盲」関連の記事が何か無いかと探していたのですが、その中で「金融文盲(금융 문맹)」という見慣れない単語を見つけました。
意味は分かります。しかし日本語では「文盲」と言う言葉自体が差別用語として使用を控える傾向にあるので、同じ意味合いの別の用語があるのかは分かりません。(ちなみに東亜日報日本語版はこれを「金融オンチ」と訳しており、記事タイトルはそちらからお借りしました)

韓国銀行と金融監督院は定期的に18歳以上79歳以下の2400人を対象に金融理解力調査テストを実施しているそうです。また、それとは別に青少年金融教育協議会が高校生を対象に同様の青少年金融理解度調査を実施しているとのこと。

 



2022年の成人を対象とした金融理解力調査結果によると、平均点は66.5点。前年から1.4ポイント上昇しています。年代別に極端な違いはありません(30~50代がやはり少し高め)。ただ、純粋に「上昇」と見なして良いか疑問です。

少し細かい項目で見ていくと次のようになります。

家計予算管理努力 積極的な貯蓄活動 慎重な購入 請求代金の期限内納付 常日頃から資産状況を把握 長期的な資産目標 情報を元に金融商品を選択 家計収支の赤字解消
80.6 97.8 50.3 68.6 55.7 48.0 50.8 89.1


具体的な設問内容が分かりませんが、少しバラ付きがありますね。
しかし一番の問題はバラ付きではなく、レポートの表の下に書かれていた次のコメントです。

この2年間(2020年9月~2022年8月)、友人・家族・知人の勧めで金融商品を選択したケースが58.4%で、金融機関職員(46.2%)、専門雑誌・専門家(42.8%)情報を利用したケースを上回る。


この58.4%の人たちは、他の項目が何点であろうとも金融リテラシー「0点」。いわゆる「金融文盲」って言ってしまって良いんじゃないかな?



次に高校生を対象とした青少年金融理解度調査の方です。こちらは今年の5月の毎日経済の記事から抜粋です。

対象となったのは高校2年生717人、平均点は46.8点。米国の金融機関が作成した質問を使用しているとのことで、そちらの及第点は60点と設定されています。

特に差が顕著に出たのが、普通預金やキャッシュカードを使ったことがある生徒と無い生徒。使用経験のある生徒の方が金融理解度が14点も高かったそうです。
また、株やファンド、仮想通貨などの投資商品、クレジットカードなどの信用取引の経験の有無で見ると、経験のある生徒の方が逆にスコアが低く出るという興味深い結果になっています。現金払いとクレジットカード(キャッシュレス)払いって脳の反応が違うらしく、キャッシュレスだと快楽を感じる線条体が反応するって実験データがありますから、そこら辺が関係しているのかもしれません。

ちなみに、高校生の71%がクレジットカードを「借金」と認識していなかったで有名(?)なのは2020年11月に企画財政部主導で実施された「経済理解力調査」(小6中3高2各5000人対象)というもので多分また別の調査です。(正直、同じような調査を手を変え品を変え別部署がバラバラにやるのも疑問。集約できないでしょうに)


他にも「自分は金融理解度が高い」と自己評価した生徒ほど客観的には金融理解度が低く出る「自己過大評価」の傾向が強かったとも。
こういう人は知人に何かオイシイ投資話を持ち掛けられると「自分は騙されるはずがない」と安易に乗ってしまいそうで怖いですね。成人を対象とした調査で友人・家族・知人の勧めで金融商品を選択した58.4%の人たちも、こうした傾向が強いのじゃないかと感じます。