ポーランド下院議長「前政府が署名した合意は無効になる可能性がある」...韓国防衛産業輸出に影響が出るかもしれないという話

防衛産業輸出に力を入れている韓国ですが、大きな成果として挙げられたのが対ポーランドへの輸出でした。
ウクライナの隣国で、ロシアの飛び地と国境を接するポーランドは、ロシアのウクライナ侵攻以降、防衛力強化に力を入れてきました。当初は米国製兵器を導入する予定だったようですが、ハイマースなどはウクライナへの供与が優先されたため韓国製が代替として選択され韓国防衛産業最大の輸出先となりました。今月頭にも自走砲152門の追加輸出が決まったそうです。

その一方で、ポーランド政権交代によって、これら防衛産業輸出に影響が出るかもしれないという懸念が持ち上がっています。

 



聯合ニュースの記事からです。

ポーランド下院議長「前政府の契約は無効になる可能性もある」...K防衛産業に火の粉が及ぶか


ポーランド新政権が10月の総選挙後に締結した契約を無効化する可能性もあるとポーランド下院議長が明らかにしたとロイター通信が10日(現地時間)報じた。

報道によると野党連合の一員である「ポーランド2050」所属のシモン・ホロブニア下院議員は同日、ポーランド民間放送「ラジオジェット」に対し「法と正義党(PiS)臨時政府が署名した合意は無効になる可能性もある」とし、10月15日の総選挙以降、PiSは予算を使わず国家管理だけに権限を制限すべきだったとした。

ロイター通信は韓国の防衛産業輸出にも飛び火する可能性があるという観測が提起されていると伝えた。

(中略)

新政府の国防長官と予想されるポーランド農民党(PSL)のウラジスラブ・コシニアーク・カミシ代表も前日の9日、同じメディアを通じてPiS政府が10月15日以降に締結した契約が「分析と評価を経るだろう」と明らかにした。

(中略)

ポーランドのマリウシュ・ブワシュチャク国防長官はコシニアーク・カミシ代表のこのような発言に対して「契約を取り消すという宣言と同じだ」と反発した。

ブワシュチャク長官はソーシャルメディアXに「彼らは韓国から持ち込む装備をポーランド軍需産業の装備に代替すると大衆迎合的な話をするだろう」とし、結局何も得られないという内容の文を載せた。

(後略)



聯合ニュース「폴란드 하원의장 "前정부 계약 무효될수도"…K방산 불똥 튀나(ポーランド下院議長「前政府の契約は無効になる可能性もある」...K防衛産業に火の粉が及ぶか)」より一部抜粋

「前政府の約束は無効」は、いっつも韓国が日本にやっていることですが、コメント欄はポーランドへの怒り一色です。「違約金を求めるべき」との声もあります。契約内容がどうなっているかですよね。


「前政権の契約は無効」とあまりにもザックリ報じていますけど、全部が全部無効というわけではなく、10月に行われた総選挙以降の契約についてのみです。
というのが、10月15日の総選挙で保守系与党「法と正義(PiS)」が過半数を確保できなかったのです。ポーランドでは大統領から任命された新首相が活動計画を国民議会に提出し信任を得る必要があります。しかしこれが否決され、野党政権が樹立する可能性が高いのです。
つまり総選挙から新政権樹立までの間を「信任を得られていない空白期間(臨時政府)」と見なし、その間の契約は「無効にできる」と、そういう理屈です。前述した「自走砲152門」はちょうどその期間の契約です。

これ以外にも、ポーランドへの武器装備輸出事業は資金不足がずっと懸念されていました。(表向きは契約数と金額ばかりがクローズアップされていたので何もかも「巧く行っている」ように報じられていましたけれども)
昨年、韓国とポーランドは124億ドル規模の一次契約を結び納品も進んでいますが、韓国の輸出入銀行と貿易保険公社が限度額めいっぱい(計12兆ウォン)の金融支援をして実現したものです。
続く二次契約でもポーランドは金融支援を要求しています。必要額がほぼ倍増すると見られており、輸出金融当局の年間支援限度額を超えるため枠を拡大する法改正が必要になっています。
また、仮に枠の拡大に成功したとして、援助する資金を韓国がどこから捻出するのか、という問題もあります。