PF危機の現況の話

昨年から騒がれ始めたプロジェクト・ファイナンス(PF)危機説ですが、現状をまとめたような記事があったので紹介します。

一応、先にPFのざっくりした仕組みを説明しておくと、まず不動産建設の企画・開発から施工までを管理する企画会社と、発注を受けて実際に工事を行う建設会社に分かれます。
そして企画会社は開発に必要な資金の大部分を金融会社からの借り入れで賄います。このとき「不動産建設の企画・開発」事業そのものを担保にお金を借りるのですが、それをプロジェクト・ファイナンス(PF)と言います。金融会社側からすると事業の将来の収益を見越してお金を出すことになります。

 



ハンギョレの記事からです。

不動産PF危機説の核心...土地を買っておいて建物は始めることも出来ない


(前略)

PFは段階別にブリッジローンと本PFに分かれる。ブリッジローンは事業初期に土地を買うお金を借りる短期融資と言える。リスクが高いほど金利も高く、大体10~15%に達する。ブリッジローンの段階で資金を供給する主体は主に貯蓄銀行・証券会社・キャピタルなどノンバンクだ。施工会社はこのお金で土地を買って許認可を受ければ利子がもう少し低い貸出に乗り換えるが、これを本PFという。本PFの資金はブリッジローン返済と工事代金などに使われる。企画会社は概して規模が小さく信用度が落ちるため建設会社(施工会社)がブリッジローンと本PFに対して様々な形の保証をする。建設会社が直接主体になってPF貸し出しを受ける場合もある。

今問題になっているのは大半がブリッジローンだ。本PFに入れば一旦建物を建ててしまえば割引分譲をしてでも資金回収を進めることが出来る。ところが、事業の進展が出来ずブリッジローンの段階で止まっていれば満期圧迫と金融費用増加に苦しむことになる。

金融会社が本PF貸出を敬遠する理由は不動産市場の低迷のためだ。国土交通部によると、10月末基準で全国の売れ残り住宅数は5万8299世帯に達する。

(中略)

ブリッジローンは満期を延長すれば金利がグンと跳ね上がる。最近、ある事業所の延長金利は20%を超えているという。高金利負担が長期化するほど施工会社は耐え難くなる。

(中略)

一般的に不動産市場が良い時は本PFに移るのに3~6ヵ月程度かかる。ところが信用評価会社によると、ここ1年間、ブリッジローンから本PFに転換した事例を探すのが難しい。イ・ヒョンジュン・ナイス信用評価本部長は「高金利状況が長期化すればブリッジローン30兆ウォンの中で30~50%は損失に繋がるだろう」と見通した。

韓国信用評価が11月に出した報告書によれば、建設会社のPF保障規模は2021年末の21兆9000億ウォンから2022年末に26兆ウォン、今年9月末基準で28兆ウォンまで増えた。今問題になっているテヨン建設の場合、自己資本対比のPF規模が370%に達する。他の大手企業(30~100%前後)に比べて圧倒的に高い水準だ。

資金を貸した金融界の状況はどうだろうか。金融委員会が最近発表した不動産PF貸出現況(9月末基準)によると、金融圏の貸出残高は134兆3000億ウォン、延滞率は2.42%水準だ。3ヵ月前の2.17%より高くなった。2022年末の1.19%に比べると上昇幅が目立つ。証券会社の延滞率は13.8%で、貯蓄銀行も5.5%とかなり高い状況だ。

(中略)

専門家たちは実際の延滞率はこれより更に高いと見ている。今年上半期、政府が不動産PF対策の施行に乗り出し、貸主団が満期延長または利子猶予を実施しているためだ。償還が難しく延長したとすれば事実上延滞と見なければならないが集計からは漏れている。

ナイス信用評価イ本部長は「金融圏がPFのためになす術無く崩れる可能性は低い」とした。しかし「証券会社・貯蓄銀行・キャピタル社などはPFで中上位や後順位で貸出を出した場合が多いため憂慮されるのが事実」とし「特に親会社から有償増資などの支援を受けにくい中小金融会社は危機に脆弱な状況」と分析した。

一方、PF発経済危機の引き金になる可能性があると指摘されたテヨン建設に対して、市場では特段の対策が必要だという診断を下している。韓国投資証券は19日「テヨン建設現況点検」報告書で「SOC保証を除くテヨン建設の純粋不動産開発PF保証残額は3兆2000億ウォン」とし「この内、償還財源を確保できないまま未着工状態で残っている事業場が半分に達する」と分析した。

未着工現場の45%が地方にあり、貸出延長なしに事業を終える場合、テヨン建設が履行しなければならない保証額は7200億ウォンだと評価した。テヨン建設は短期流動性が不足(9月末基準で純借入金1兆9300億ウォン)し、負債比率(478%)も施工能力35位内の主要建設会社の中で最も高い水準を見せている。

(後略)



ハンギョレ「부동산 PF 위기설의 핵심…땅 사놓고 건물은 시작도 못해(不動産PF危機説の核心...土地を買っておいて建物は始めることも出来ない)」より一部抜粋

最後、テヨン建設に触れていますが、業界16位とされている建設会社で、最近、流動性リスクが話題になっています。
こんなことになるのは「建設会社がブリッジローンと本PFに対して様々な形の保証」を行っているからです。バカな話ですよね、こんなことしたらPFのメリットないじゃないですか。

PFはプロジェクト毎に専用の別会社を設立するのが一般的です。例えば「Aマンション」を作るためにPF事業を行うとすると、「Aマンション開発会社」的な新会社を設立して、そこの名義でPFを行い(お金を借り)ます。万が一、プロジェクトがポシャったら、その会社を潰すだけで済むからです。そうすれば本体に債務履行の義務はありません。

つまり、お金を貸す金融機関側は純粋に「プロジェクト」の「キャッシュフロー」だけで貸出審査をしないといけないわけです。
でも多分、それをやってないんですね。建設会社が「様々な形の保証」をしてくれてるので。