韓国の家計負債は来年も増加傾向維持か...行政のチグハグな対応の話

今年9月時点の韓国の家計負債はGDP比108.1%(IMF発表値)でした。昨年末時点(108.3%)と比べると微減しています。
しかし2017年には92.0%だったことを考えると、5年で16.2%も急激に増えた後の0.2%減ですから、あってないようなものです。OECD加盟国内で比較可能な中では韓国が唯一2桁増加です。

IMFは家計負債の適正値をGDP対比85%としています。韓国銀行総裁も同じく「80%水準まで下がるのが韓国経済のために良い」と発言したことがあります。

ところがそれとは裏腹に来年も家計負債は「増加傾向」を維持すると見られています。
というのも、家計負債を管理するためにDSR(総負債元利金償還率:元金と利子が年収に占める割合)の規制計画を発表したものの、同時にお金を借りやすくする政策金融を実施する予定だからです。しかもこの政策金融はDSR規制が適用されません。引き締めたいのか、緩めたいのかチグハグです。

 



中央日報の記事からです。

来年の家計負債も「黄色信号」...「政策貸出・金利引き下げに貸出需要刺激」


(前略)

政府は来年、27億ウォン規模の新政治特例貸出と20~30兆ウォン規模の青年住宅ドリーム貸出など政策金融を出す。同日、国土交通部によると新生児出産無住宅世帯のうち年間所得1億3000万ウォン以下、住宅価格9億ウォン以下の要件を満たせば最低1.6%の金利で住宅購入資金の融資を受けることができる。DSR規制が適用されない。

韓国銀行と金融当局の間では懸念の声が出ている。政府が市中銀行より安い金利で資金を課す政策融資が住宅価格を刺激し、家計負債を増大させる恐れがあるためだ。

(中略)

来年中に基準金利が引き下げられるという期待も貸出需要を引き上げる要素だ。これまで高金利で凍っていた不動産投資心理が再び蘇る可能性があるためだ。

(中略)

国際金融協会(IIF)によると、名目国内総生産GDP)対比家計負債比率は第3四半期末基準で100.2%を記録している。適正比率(85%)をはるかに上回る数値だ。韓国の家計負債の半分以上を住宅担保融資が占めるだけに住宅市場の安定化が核心課題に挙げられる。韓国銀行は9月の通貨信用政策報告書で「現在の住宅価格は所得と乖離し、高い水準を維持して利、基礎経済条件などと比較すると依然として高評価されている」として「住宅価格上昇心理を折る一貫性のある政策が必要だ」と指摘した。

(後略)



中央日報「내년 가계부채도 '노란불'…"정책대출·금리인하에 대출 수요 자극"(来年の家計負債も「黄色信号」...「政策貸出・金利引き下げに貸出需要刺激」)」より一部抜粋

「年間所得1億3000万ウォン以下、住宅価格9億ウォン以下」って「年収約1,430万円、住宅価格約9,900万円」です。さらにもうちょっと細かい制約があって、専用面積85㎡までとか純資産約4000万円までとか付きます。
それにしたってDSR規制無しとは...。

年収面で引っかかる人はほとんどいないでしょう。面積85㎡は3~4人家族を想定しているならそんなもんでしょうか?
日本に比べてマンション価格が異常に高いので、価格面は厳しい場合もあるかもしれませんが...。

いずれにせよ、子供が生まれた家庭はほぼ全てDSR規制をスルーして低金利ローンが組み放題ってことがヤバイと思います。
この辺りに家計負債という車輪なしに経済が維持できない部分が透けて見えます。