韓国の家計負債の2つの特徴の話

GDP比100%超えの韓国の家計負債はOECD内では4位です。が、ここにはジョンセ金は含まれていません。ジョンセ金は賃貸人と賃借人との間の「個人的な借金」と見なされるためです。ここにジョンセ金を上乗せすると1位となります。
また、規模よりもその拡大スピード(悪化?)の速さを問題視する向きもあります。

ここには韓国ならではの家計負債の特徴が表れています。一つは家計負債の半数以上が所得上位20%による貸出で占められているという点(これにより、家計負債の貸し倒れの可能性は低い、とされる)。もう一つは...どちらかというとこちらの方が問題だと思うのですが...元本返済率の低さです。
詳しくは後述しますが、韓国は家計負債(主に住宅ローン)の元本返済率が低いという特徴があります。これにより家計負債残高が減りにくい特徴があります。

 



KBSの記事からです。

良く稼いで留まった、K-負債の二つの顔


(前略)

K-負債の半分以上は高所得者にある。韓国銀行が7月に発刊した「長期構造的観点から見た家計負債増加の原因と影響」によると、昨年末基準で5分位(所得上位20%)が持つ貸出が全体残高の53%だった。私たちの家計全体所得の37%を占めた所得上位20%が全体貸出の過半数を持っていることになる。このように、所得占有率より貸出川柳率が高いのが5分位が全体家計で唯一だ。韓銀は「所得水準によって貸出への接近に大きな格差を見せている」と分析した。

高所得者に貸出が集中しているのは、一方では踏み倒される危険が少ないとも考えられる。金融危機に繋がる可能性は大きくないという意味だ。しかし、韓国の家計負債のもう一つの特徴は、満期一時召還の比重が全体の53.7%(昨年末基準)という点だ。大部分がジョンセ・信用・中途金貸出だが、家計は償還時点で借金を返すより満期を再延長する傾向(信用貸出の満期延長率は87%)だ。

金融当局は政策的に分割償還を誘導しながら借主が少しずつでも借金を返済していくことを誘導するが、これがうまくいかない。借主ら大抵借りた金を直ちに現金化しにくい資産(不動産、株式、債券など)に投じるからだ。

(中略)

韓国のGDP対比家計負債比率は今年の第1四半期101.5%と集計された。家計負債がGDPより多い国は韓国を含めて4ヵ国程度に過ぎない。1位はスイス(128.3%)だ。問題は、わが国だけの特殊な制度、ジョンセ保証金が家計負債国際統計に集計されないということだ。ジョンセ保証金は賃貸人が賃借人から受ける事実上の「私的貸出」だ。賃貸人はジョンセ保証金を受け取って投資するか、貸出を返済するかに使う。

ジョンセ保証金を韓国の家計負債に上乗せする場合、全体負債規模は2925兆ウォン(昨年末基準)だ。GDP対比家計負債比率はスイスを抜いて1位の上がる。もちろん、議論はある。賃借人が金融機関から受け取って賃貸人に提供する伝貰資金貸出は、既存家計負債統計上、住宅ローンの中にすでに含まれている。また、伝貰保証金の危険評価が明確でない状態であえて負債を過大評価して対外信認度に影響を与える必要があるのかという指摘もある。

(後略)



KBS「잘 벌고 오래 묵었다, K-부채의 두 얼굴(良く稼いで留まった、K-負債の二つの顔)」より一部抜粋

ちなみにジョンセ金だけでなく、個人事業主の債務も家計債務には含まれません。個人商店の多い韓国において、ここは結構重要です。

家計負債全体では所得上位20%が家計負債の半数以上を占めているというのは事実でしょう。が、問題はそこではなく。限界が先に訪れのはどこか、という話です。
また、所得上位20%であろうと、家計負債の53%を占める負債を負っているということは、収入に見合わない負債を負っている、と見ることも出来ます。

さらに見方を変えると、所得水準によってローンの組みやすさに差がある=低所得者は銀行圏から追い出されている、と見ることも出来ます。


ジョンセ金詐欺で問題になっていたときにも疑問だったので少し調べたのですが、どうも韓国は元本返済をあまり積極的に行わないようです。

正確な統計は発表されていませんけれど、住宅ローンの約7割が最初の3年間は利子返済のみで元本返済を猶予しているようです。(2014年の調査レポート)
なんでこんなことをするのか、正直意味が分かりませんでした。これでは日本のリボ払いのように、延々と利子だけ払い続けることになります。が、これを「不動産投資」と考えるとなるほど、となります。元本返済が始まるまでに不動産価格が手数料(その期間の利子)以上に上がればいいのです。
また、ローンの借り換えを行うと、この猶予期間はリセットされるそうです。
これなら手持ちの資金がなくてもDSRギリギリめいっぱい借りて転がせます。低金利のときなら延々利子だけ払った方が確かに「賢い」かもしれません。
しかし、債務者のほとんどが借り換えを行うことで元本を返済しないため、結果として家計債務が減らないことが常態化しています。

さらに、利子の管理さえ行えばいいという意識であるため、住宅ローン自体が「借金」という認識も薄くなるのでしょう。