金利が下がれば住宅価格は上がるのか?米国と韓国の不動産市場の違いの話

米国の政策金利は据え置かれました。2月1日早朝(現地時刻1月31日)には、FOMC議長のパウエルさんが市場の「引き下げ期待感」を一蹴するような発言もしています。

金利が下がらないと住宅市場は活性化しないと韓国では考えられているようです。逆に言うと、金利さえ下がればうまく行く、と考えているといえます。

しかし韓国の場合、同じ低金利時期でも住宅価格が下落または停滞した時と、逆に急上昇した時とがあり、金利だけでは説明できない、という指摘がありました。
カギになっているのは住宅担保貸出規制の強化と急増したジョンセ金貸出です。2009~2021年の間に住宅担保貸出は約2.6倍増加しました。2012~2021年の間にジョンセ資金貸出は約7.8倍に増えているそうです。

 



プレシアンの記事からです。

金利が下がれば住宅価格が上がるだろうか?


最近、多くの人が米国連邦準備制度のジェームズ・パウエル議長と韓国銀行のイ・チャンヨン総裁の発言に注目している。続く金利引き上げの保留を超え、いつ金利が下がるか気になるためだ。ここには2022年に突然の金利引き上げで住宅市場が停滞、または沈滞を体験したため、金利引き下げが住宅価格上昇を呼び起こすことが出来るという期待が含まれている。

有名な資本化公式によると、金利が下がれば当然住宅価格が上がる。資産価値(V)は純所得(y)を割引率(r)で割った値だ。この公式を住宅に代入すれば家賃(y)が一定だという前提のもとで住宅価格(V)と金利(r)は反比例関係だ。

(中略)

ところが2024年、全米経済学会で金利が上がればむしろ住宅価格が上昇するという興味深い発表が出た。

(中略)

ジャニス・エヴァリー教授は最近、金利上昇期間にむしろ既存住宅の中位価格が上昇する奇異な現象を、売り物ロジック効果と説明した。すでに家を持っている人が引っ越すためには既存住宅の住宅担保貸出を返済し、新規住宅のための住宅担保貸出を借りなければならない。ところが金利上昇で利子があまりにも上がり、同じ価格の住宅に引っ越しても追加される利子費用が千万ウォンを超える可能性がる。このように増える利子が怖くて引っ越しが出来ないため、市場に売り物が出ず供給が少なくなると価格が上がるしかない。

(中略)

ジェニス・エヴァリー教授の売り物ロック効果の説明は、20~30年の長期固定金利モーゲージ*1という米国の特殊な状況に依存する。借りる時に設定された利子率そのままに20~30年満期までずっと返済する金融商品が単純に存在するということを超え、このようなモーゲージが住宅を公売するための支配的な手段になるほど広く普及していなければならない。

筆者が知る限りでは、そのような国は米国を含め数えるほどで、明確に韓国はそこに入らない。相対的に短期変動金利の住宅担保融資が多い韓国には他の説明が必要だ。

(中略)

2012年から2017年までは金利が下落し続けたが、住宅価格はそれほど上昇しなかった。特に首都圏では金利引き下げと共に住宅価格が下落または停滞する流れが現れた。

これに比べ、2019年から2021年まで金利が0.5%まで下落する過程で住宅価格が急激に上昇した。0.5%の超低金利の威力がすごかったのかもしれないが、それでも金利引き下げ時期であまりにも異なる傾向が目立つ。

ここで注意深く見なければならないのは、金利の影響力が住宅市場に伝わる経路だ。米国の事例からも分かるように、代表的な伝達経路は住宅担保融資だ。

ところが、韓国で政府は2015年を基点に住宅担保貸出規制を強化した。規制が緩かった2015年以前には金利引き下げでも住宅価格があまり上がらず、むしろ規制を強化し始めて頂点まで上がった2020年以後になって住宅価格が急激に上昇した。

(中略)

この時、金利引き下げの新しい伝達経路としてジョンセ資金貸出に注目しなければならない。

(中略)

ジョンセ資金貸出の拡張は、首都圏で2009円から2016年まで続いたジョンセ価格上昇を後押しし、売買価格に比べて高くなったジョンセ価格は、賃貸人のギャップ投資を誘導した。売買価格とジョンセ価格の間のギャップが少なくなったため、賃貸人はさらに少ない自己資本で住宅に投資することが出来た。

(中略)

2021年8月の金利引き上げと共に住宅価格は確実に下落した。このような流れは前述の米国と大きく異なる。韓国での住宅担保貸出は大部分が基準金利とどんな形であれ関連した変動金利であり、これに伴い基準金利引き上げは利子費用を引き上げ、過度に負債を負った住宅所有者が止むを得ず自分の家を手放すようになったのだろう。これがまさにヨンクル*2・ビットゥ*3の残念な結末だ。急な売りが増え供給が増加すれば住宅価格は下落せざるを得ない。

(後略)



プレシアン「금리가 내리면 집값이 오를까?(金利が下がれば住宅価格が上がるだろうか?)」より一部抜粋

ちょっと回りくどくて分かりにくい気がします。
簡単に言うと...
米国では金利が上がると、新たに家を購入するための新規ローンが敬遠されます。固定金利が大半なため、今後何十年も高い金利を支払うことになるからです。
そのため、家を手放して引っ越しをする人が減り、結果として金利が上がると、住宅供給量が減る→価格が上がる...というのが記事の説明です。

一方の韓国は、ジョンセ金と住宅価格との差が狭まったときに、オーナーの住宅ローン負担が少なくなったことにより「ギャップ投資」が増えたことに注目しています。

「ギャップ投資」というのはジョンセ金と住宅価格との「差額(ギャップ)」だけを負担する投機のことです。
すでに人に貸し出されているマンションでも中古物件として売りに出されていることがあります。例えば4000万円のマンションのジョンセ金が3000万円だった場合、現在の居住者が現オーナーに既に3000万円のジョンセ金を納めている状態なので、新たな買い手は現オーナーに差額の1000万円だけを支払えば購入できてしまうのです。
現在の入居者が退去する際にはジョンセ金を自分が返さなければならないのですが、そこは新たな入居者からのジョンセ金で賄います。

私にはやればやるほど負債が増え続けているだけに見えるんですけど、彼らには違うようです。マンション価格は「上がる」ものと考えるからです。

そして、これがまさに米国と韓国の不動産市場における高金利時の住宅価格変動の決定的な違いです。
米国は高金利時には「住宅供給の不足」により「住宅価格は上昇」するのに対し、ギャップ投資が旺盛な韓国では高金利時に利子に耐え切れなくなったヨンクル・ビットゥによる「売り物件の増加」が起こり「住宅価格は下がる」ということです。

では逆に金利が下がれば韓国では住宅価格が上昇するのか?というと、それはまた別の問題にぶち当たります。家計負債です。
家計負債の規模が減っていないのに、貸出規制を緩和することは出来ないでしょう。そうなると、DSR規制により購入できる住宅価格は自然と制限されてしまいます。


*1:不動産担保ローンのこと

*2:魂を売って投資

*3:借金して投資