2018年、ラオスのダム崩壊事故補償金1000億ウォンを施工会社のSKが発注元の合弁会社に「分担負担」を提案した話

2018年にラオスで大きなダム崩壊事故がありました。売電事業のために建設されていたセピヤン・セナムノイ水力発電ダムの副ダムが台風による大雨で決壊するという事故でした。この事故で71名が亡くなり、6000名以上が被災しています。

事故から2年後の2020年の報道では、ダム建設の主体企業であるPNPCが事故補償費として1000億ウォン(最終的に1350億ウォン)を支払うことでラオス側と合意となっていました。このPNPCはSK建設(現・SKエコプラント)、西部発電、タイ企業、ラオス国営企業が約1/4ずつ出資した合弁会社で、ここからの発注を受けて実際の施工はSK建設が行っていました。
しかしどうも事故補償費は全額SK建設が出していたようです(記事中に「前払い」という表現が出てきましたが、どういう意図なのかよく分かりません)。
当時、施工会社の「手抜き工事」が疑われていたので、そのためでしょう。その後、SK建設は「手抜き工事」を否定。合弁会社であるPNPC…つまりSK建設、西部発電、タイ企業、ラオス国営企業で均等に負担しよう、と言い出し揉めており、シンガポールの国際仲裁センターに持ち込まれることになったそうです。

ちなみにラオス政府が設立した調査委員会の調査結果ではこの事故は「適切な措置で防げた」事故であり、SK建設の主張する「不可抗力」を認めていません。

 



朝鮮Bizの記事からです。

【単独】ラオスダム崩壊事故…SKエコプラント「補償金を分担しよう」要求にシンガポールで国際仲裁を受ける


(前略)

28日、建設・国際仲裁業界などによると、今年SIAC(シンガポール国際仲裁センター)では2018年7月に崩壊事故を経験したセピヤン・セナムノイ水力発電所補助ダム崩壊事故の補償金・復旧費など分担問題を本格的に議論すると把握された。

当時ダムを施工したSKエコプラント(旧SK建設)は当時、保険金と株主貸与金として被害補償金・復旧費など計1億1000ドル(約1350億5135万ウォン)を前払いしていた。その後、ダム施工・運営共同体であるPNPC(Pian-Xe Namnoi Power Company)の構成員が公平に分担することを要求した。PNPCはSKエコプラント(26%)と西部発電(25%)、ラオス政府設立会社のLHSE(24%)、タイ会社のRATCH(24%)などが投資をして設立した。

(中略)

ラオス政府側は、SKエコプラント側の手抜き工事を主張した。ラオス調査委員会は独立専門家委員会(IEP)の調査結果、「ダム崩壊を不可抗力的な事故と見ることはできない」と結論付け「適切な措置で防ぐことができた」としたことがある。反面、SKエコプラントは不可抗力的な自然災害を主張しIEPの調査結果に対して異議を提起する公文書を送った経緯がある。

SKエコプラント関係者は「不可抗力可否など事故原因および復旧工事費負担主体と関連して発注先であるPNPCと異見があり仲裁が進行中の状況」と立場を明らかにした。

ラオスの内部では、セピヤン・セナムノイ水力発電所の補助ダム崩壊事故以来これまで少なからぬ内部葛藤が生じている。昨年6月まで補償項目6種類のうち「証明されていない損害」に対して補償金額が協議されず水害を体験した人々に支給されなかったという外信の報道があった。また、今年1月にはラオス政府に一任した家・土地に対する補償の一部をラオス官僚が着服したという便りも伝えられた経緯がある。

建設業界のある関係者は「通常発注先との事業的関係を考慮して無理な試みはしないが、SKエコプラントの立場が理解できない部分がある」とし「同じ業界では当惑する面がある」と話した。



朝鮮Biz「[단독] ‘라오스댐’ 붕괴사고… SK에코플랜트 “보상금 나눠내자”요구에 싱가포르서 국제중재 받는다(【単独】ラオスダム崩壊事故…SKエコプラント「補償金を分担しよう」要求にシンガポールで国際仲裁を受ける)」より一部抜粋

合弁会社のPNPCにはタイの銀行資本が融資という形で入っています。それが三菱東京UFJ銀行の国際傘下の銀行なので、もし保証金を分担して負担するということになれば、間接的ではありますが日本企業にも影響が出る可能性があります。