公共料金引き上げが韓国のインフレ抑制を阻害しているという話

先日IMFが出した2023年の世界経済展望で、主要国の成長率が上方修正されているのに対し、韓国が下方修正された件で、輸出不振、不動産問題以外にもインフレ抑制が出来ていないという指摘がありました。

具体的には公共料金の値上げです。電気代については韓電の赤字体質改善のために社債による穴埋めを止めて電気料金を引き上げる方向で動いています。例によって「急激に」。
またガス料金も上がっています。これはムン政権下の2021年、天然ガス料金が上昇(年初比44%)したことをうけ、年間で8回値上げ要請があったのを却下していたことが影響しています。結局、2022年の大統領選挙後、退任までの間に値上げを許可(置き土産)しました。やっぱり「急激に」上がっています。

公共料金の引き上げは商品・サービス価格に転嫁されます。多少なら企業努力で吸収できても「急激」な上昇には対応できません。
そのため、通貨政策(金利上昇)でどれほどインフレ抑制を図っても財政政策(公共料金値上げ)が相反する動きをするため意味がないことになります。
主要国はインフレピークが見えたことで金利上昇が落ち着き金利引きげ期待感からの投資市場活性化が見込めるけれど、韓国はそうじゃない、だからIMFは韓国の展望値を引き下げたのでは、という話です。

 



JTBCの記事からです。

主要国の成長率を上げるとき、韓国はさらに下がった...危機の突破口は(キム・グァンソク漢陽大学兼任教授)


(前略)

[アンカー]今年、世界経済が低迷に陥るだろうという警告はずっと出ていました。しかし米国やユーロ圏などいくつかの国では懸念されていたほどの低迷はないかもしれない。このような希望がでています。では、韓国はどうでしょうか?悲しいことに、韓国経済至上最悪、または突破口がない、といった否定的な見通しがますます明らかになっています。世界経済が絶望の中で希望を眺める中、なぜ韓国はさらに最悪を心配しなければならない立場になったのでしょうか。

(中略)

先週、IMFが今年の経済見通し報告書を出しました。見てみると昨年10月に一度出したものをアップデートしたのですが、世界経済成長率を高く設定し直しました。ところが、韓国だけ下げたのですよ。衝撃的でもありますが、どうしてですか?

[キム・グァンソク/漢陽大学兼任教授]世界経済に対する判断は依然として景気低迷と見ているのは事実です。

(中略)

米国は0.4%ポイントも上方修正しました。中国の場合は0.8%ポイントも上方修正しました。ほとんどこのように上方修正しましたが、韓国の場合は0.3%ぽいんとも下方修正しました。

[アンカー]IMFは我が国を嫌っていますか?輸出不振が原因なんですよね?

[キム・グァンソク/漢陽大学兼任教授]さまざまな要因がかみ合ったと言えますが、その中の一つが輸出ではないかと思います。御存知とは思いますが聞いてみます。韓国全体の輸出額一等の品目はなんですか?

[アンカー]半導体

[キム・グァンソク/漢陽大学兼任教授」半導体です。この半導体輸出一つが全体輸出の20%も占めていますが、この半導体輸出規模が減り続けています、見ての通り。半導体輸出規模が減って、今もマイナス増加率を見せていますが、結局、韓国全体の輸出の相当な比重を占める半導体輸出規模が減るということは文字通りグローバル景気低迷を反映します。なぜなら、私たちは半導体を買いません。半導体が入っている製品を買うんです。ところが世界的に耐久財の需要が減り、あるいは設備投資規模が減るため韓国の半導体輸出が減っているのに、半導体だけでなく各種耐久財輸出などが韓国の主力輸出品目であるため、このように輸出がよくありません。だから当然、韓国の輸出が難しく貿易赤字が続き、こうしたことが韓国経済を悪化させる主な背景ではないかと思います。また、その他で今の不動産市場がすごい問題ですよね。特に未分譲住宅が危険水準を超えて6万戸をすでにはるかに超えました。

(中略)

分譲を前提に指揮を借りるのをプロジェクト・ファイナンスといいます。資金を借りて分譲されたとき、それを前提にお金を返すという方式ですが、この分譲ができないから売れ残りが増え続けるのでお金を返せないことが発生します。そうすると中小建設会社が倒産することになる。このようにいろいろな私たちの国だけの慢性的な問題のために世界経済は上方修正するのに、私たちの国だけが下方修正したのです。

[アンカー]そしてまた、IMFが主要国の経済成長率を高く直した理由の一つがインフレ鈍化の兆しが見えたからでしたが、韓国の1月消費者物価指数をみると5.2%で再び上昇幅が大きくなりました。

(中略)

[キム・グァンソク/漢陽大学兼任教授]IMF経済展望報告書に副題が一つありますが、副題の始まる言葉が何かというと、インフレピーキング。つまりインフレが頂点に達して下がる様子だ。

(中略)

結果的に世界各国は物価がピークに達して安定するので、あえて追加的な金利引き上げが無いかもしれない、という期待、そして金利引き下げが近いうちにあるだろうという期待が投資市場にも資金が集中し、景気回復に進展をもたらすのですが、韓国はもし引き続き物価が安定せずに高い物価に向かって上がれば、我々は追加的な金利引き上げをしなければなりません。追加的な金利引き上げは企業に相当な負担を与え、また積極的に投資できないようにします。経済が悪循環するのです。

(中略)

[アンカー]それに今、公共料金のことで心配が多いのですが、先週も教授が公共料金の引き上げが全体的な韓国の物価を押し上げることになると言いましたが、そのような話が結局現実になると思います。

[キム・グァンソク/漢陽大学兼任教授]多少現実になったのではないかと思います。

(中略)

さらには人件費にも影響を及ぼすのです。だから、そのようなやり方で物価を抑える過程で公共料金の引き上げが続いているので、多少食い違うようなことが起きるのではないかと思います。

(中略)

通貨政策は物価を抑えるために金利引き上げを続けているねすけど、それで物価をある程度落としているのに政府の財政政策はむしろ公共料金を上げて。そして公共料金が上がった分だけ財政支援をする、暖房費支援をする、そんなことはまた追加的な物価上昇圧力を与えるだけではないかという心配が最も支配的だと言えます。

(中略)

だから物価を抑える時に部下kを抑えなければならないのに、通貨政策は物価を抑える動きをしながら財政政策は相反すると表現することができます。

(後略)



JTBC「주요국 성장률 다 올릴 때, 한국은 더 내렸다…위기 돌파구는 (김광석 한양대 겸임교수)|머니클라스(主要国の成長率を上げるとき、韓国はさらに下がった...危機の突破口は(キム・グァンソク漢陽大学兼任教授))」より一部抜粋

公共料金の引き上げが物価を押し上げる...つまり、今まで赤字を垂れ流して安い公共料金を提供していたから保っていたものが限界にきたわけです。きっかけというか、最終的な引き金を引いたのはレゴランド事態かもしれませんけれど、それによる債券市場の梗塞においては「韓電」というバキュームが資金を吸い込んでしまう構造上の脆弱性がずっと指摘され続けていました。放置していたリスクが連鎖爆発しているのが今の状況です。
最悪なのはタイミングでしょう。まあ、逆にこうでもならなきゃ「上手くいっている」と、ずっとそのままだった可能性の方が高い気もしますが。