ホルムズ海峡封鎖を受けて、アジアで液化天然ガスの価格が先週比 40%近く急騰しました。
アジアが中東に依存している液化天然ガスの割合は日本が 1割程度、韓国でも 2割程度です。供給面だけ見ればさほどの影響は無いはずで、個人的に 40%もの急騰は大げさだと思っているのですが、パニックがお金になる世界ですから仕方のないことなのかもしれません。
韓国では液化天然ガスによる発電が約 3割を占めます。長いこと電気料金は据え置き、電力公社は社債で赤字を穴埋めしてきました。しかし、万年赤字ですから債務は膨らむ一方です。2022年には「このままではデフォルトするのでは」との懸念が囁かれ、これを回避するために社債発行限度額を最大 6倍にまで拡大する韓電法改正案が可決されました。
しかし、これは所詮その場しのぎに過ぎません。根本的には発電事業で黒字を出さないと債務は減りません。2021年から 2023年の 2年で負債総額は 145兆ウォンから 205兆ウォンへと 60兆ウォン増加しています。
そのために電気料金の値上げも複数回実施されました。トータルで約 70%ほど電気料金は値上げになっています。
ここに追加で天然液化ガス価格高騰による追い打ちがかかることになります。
ニュース1の記事からです。
「ロシア・ウクライナショックが再現されるのか」...LNG価格の急騰により再び浮上した「公企業赤字」の悪夢
(前略)
アジアのLNG現物価格はわずか 1週間で約 40%急騰し、専門家は過去のロシア・ウクライナ戦争時の公企業の赤字や産業コスト負担が再び起こる可能性を懸念している。
(中略)
6日、関係業界によると、国際 LNGベンチマークであるプラッツの日本・韓国・インド基準(JKM)先物価格は、4日に 100万熱量単位(MMBtu)あたり 15.105ドルまで急騰した。これは、米国・イスラエルのイラン空爆直前である 2月 27日(10.725ドル)と比較すると、わずか 1週間で約 40%上昇した水準である。
現在、我が国は LNGの義務備蓄基準(9日分)以上に LNGを保有しており、既存の中長期契約で確保した量があるため、短期的な影響は限定的である。
ただし、事態が長期化した場合、急騰した LNG価格は発電単価の上昇や電気料金の負担につながり、経済に悪影響を及ぼす恐れがある。LNGの輸入量の約半分は発電用に活用されており、 国内全体の発電量の約 30%がLNG発電に依存している。
200兆の負債に囚われた料金政策···中東ショック、今回は韓電が止められない
ロシア・ウクライナ戦争以前の 2021年末時点で韓国電力公社の負債は 145兆ウォン程度だったが、2023年末には 205兆1810億ウォンに達し、2年の間に約60兆ウォン急増した。
(中略)
2023年に入ってグローバル LNG市場が安定し国内の導入単価も安定・下落傾向を示したが、韓電の累積負債を減らすために電気料金の引き上げが本格化した。特に2023年以降、産業用電気料金は何度も値上げを経て累計で約 70%上昇した。
グローバルな燃料費の上昇の影響が韓電の負債という緩衝材を経て、時間差を置いて電気料金に反映された形だ。韓電はこの時増加した負債により、現在 1日の利息費用だけで 100億ウォン以上を支払っている。
(中略)
業界では今回のイラン空爆がロシア・ウクライナ戦争当時と同様の方法で公企業の負債増加や電気料金の上昇につながるかどうかは「戦争の長期化」にかかっているとの評価が出ている。
(中略)
エネルギー業界の関係者は「公企業の負債が臨界点に達した状況で過去のように燃料費の上昇分を負債で回す方法はもはや持続不可能だ」とし「国際原油価格とLNG価格の動向に応じた先制的なエネルギー供給対策とともに、産業界の衝撃を最小限に抑えることができる精緻な料金体系の設計が急務だ」と提言した。
ニュース1「"러-우 쇼크 재현되나"…LNG값 폭등에 다시 떠오른 '공기업 적자' 악몽(「ロシア・ウクライナショックが再現されるのか」...LNG価格の急騰により再び浮上した「公企業赤字」の悪夢)」より一部抜粋
手っ取り早い打開策は日本では「原発再稼働」です。発電用燃料としての使用を減らせるだけでも大きな効果(輸入量の約 6割が発電用)があるでしょう。もし価格高騰が長期化するようであれば、少なくとも日本はそうすべきだと思います。
韓国も結局、「脱・脱原発」に舵を切っています。しかし、日本のように原発の稼働停止は行っていません。原発は稼働し続けており電力供給量の約 30%を担っています。
つまり、韓国は「原発再稼働」というカードは持っていません。そのため LNGの価格上昇はそのままダイレクトに「発電コスト」として伸し掛かってきます。
ちなみに、台湾は「原発ゼロ」で世界 5位の LNG輸入量です。約 8割は発電用であり、電力供給量の約 40%に相当します。そのため、よりシビアな状況です。