ファーウェイ問題2つの本質

ファーウェイ新機種が出るそうですね。

昨年内から色々話題が尽きないファーウェイですが、5Gインフラ機器からは外されても個人向け端末は関係ないということなんでしょうか。

個人向け端末利用者こそ、ファーウェイ問題の本質が何なのか知っておいた方が良いのではないかしら。

その上で使う/使わないは個人の自由でしょう。

 

ファーウェイだけじゃない、中国企業全体に言えること

ファーウェイばかりが取り沙汰されていますが、実際はファーウェイだけではなく全ての中国企業が同じ情報リスクを抱えていることになります。

今回ファーウェイばかりが槍玉にあげられているのは急激なシェア拡大に米国が危機感を募らせていたところに、米中の貿易戦争が激化したことで適当な的になってしまったからです。

 

企業にとってのファーウェイ問題

今はもうファーウェイが白か黒かは関係無くなっています。

既にアメリカがNo!!を突きつけてしまって主要国が追随した今となってはどちらでも良いのです。

ここでアメリカと同盟関係にある国や企業…特に軍需関連の企業が見ているところは今後の受注への影響です。

自社の通信インフラにファーウェイが使われていた場合、最悪セキュリティリスクを理由に切られてしまう恐れがあります。

臭いものにはフタをしろ、ではありませんがファーウェイが白か黒かはどうでもよく、切ってしまうのが手っ取り早い選択になっているのが現状です。

切ってしまえば以下で触れる国家情報法のリスクも念頭に入れる必要がなくなります。

 

個人利用者にとってのファーウェイ問題

 個人利用者は気にならない人は全く気にならないだろうと思います。

感覚として街中の監視カメラに写ったとしても疚しい事をしていなければ特段神経質になる必要がないという感覚に似ているかもしれません。

けれども、どういう情報リスクがあるのかは知っておいた方が良いでしょう。

 

「私達は私達の顧客の利益を保護するために最善を尽くします」

「私達は私達の顧客を傷つけたり傷つけたりするようなことは何もしません」

これはファーウェイの端末部門(コンシューマー・ビジネス・グループ)のCEOリチャード・ユー氏の言葉です。

企業の守るべき社会正義とはなんでしょう?

その一つに「法律を尊守する」というのは確実に含まれるだろうと思うのです。

そして通常、企業が法律を尊守することが顧客を傷つけることはないでしょう。

 

2017年に中国では国家情報法が制定されています。非常に曖昧な記述のある法律ですが、その内容は「国家が企業や個人に対して情報を供出することを義務付ける」かのように読み取れます。

この法律は中央国家安全委員会の手動で制定されましたが、この委員会は複数の日本人がスパイ容疑で拘束された反スパイ法の制定も行っています。

 

国家情報法の中身

以下のような内容が含まれています。

(〜前略〜)

第 2 条
国 家 情 報 活 動 は、 総 合 的 国 家 安 全 観を 堅 持 し、 国 の 重 大 な 政 策 決 定 の た め に 参 考 とな る 情 報 を 提 供 し、 国 の 安 全 に 危 害 を 及 ぼ す リ ス ク を 警 戒 及 び 除 去 す る た め に 情 報 面 での 支 援 を 提 供 し、 国 の 政 権、 主 権、 統 一 と 領 土 保 全、 社 会 福 祉、 経 済 社 会 の 持 続 可 能 な発 展 及 び 国 の そ の 他 の 重 大 利 益 を 守 る も の と す る。 

(〜中略〜)

第 6 条
国 家 情 報 活 動 機 構 及 び そ の 活 動 要 員 は、 国 と 人 民 に 忠 誠 を 尽 く し、 憲 法 及 び 法 律 を 遵守 し、 職 務 に 忠 実 で、 規 律 を 厳 格 に 守 り、 清 廉 で あ り、 無 私 の 精 神 で 奉 仕 し、 国 の 安 全及 び 利 益 を 断 固 と し て 守 ら な け れ ば な ら な い。
第 7 条
い か な る 組 織 及 び 国 民 も、 法 に 基 づ き 国 家 情 報 活 動 に 対 す る 支 持、 援 助 及 び 協 力 を 行い、 知 り 得 た 国 家 情 報 活 動 に つ い て の 秘 密 を 守 ら な け れ ば な ら な い。
国 は、 国 家 情 報 活 動 に 対 し 支 持、 援 助 及 び 協 力 を 行 う 個 人 及 び 組 織 を 保 護 す る。

(〜中略〜)

第 9 条
国 は、 国 家 情 報 活 動 に お い て 大 き な 貢 献 の あ っ た 個 人 及 び 組 織 に 対 し、 表 彰 及 び 報 奨を 行 う。

(〜中略〜)

第 11 条
国 家 情 報 活 動 機 構 は、 国 外 の 機 構、 組 織 及 び 個 人 が 実 施 し、 若 し く は 他 人 に 指 図 若 しく は 資 金 援 助 し て 実 施 さ せ た、 又 は 国 内 外 の 機 構、 組 織 及 び 個 人 が 結 託 し て 実 施 し た 中華人民共和国の国の安全及び利益に危害を及ぼす行為に関連する情報を法に従い収集及び 処 理 し、 上 述 の 行 為 を 警 戒、 阻 止 及 び 処 罰 す る た め に 根 拠 又 は 参 考 と な る 情 報 を 提 供し な け れ ば な ら な い。

(〜後略〜)

 

ざっくり言うと、「国家の情報活動に対して企業・個人は全面協力しなさい。特段の働きには見返りを与えます」という内容です。

ただ、その全面協力の及ぶ範囲が企業が保持する顧客情報にまで及ぶかどうかがポイントです。

そこの扱いをどうするか、明言する中国企業はありません。

 

以下はファーウェイの利用規約の一部です。

6.1 ユーザーは、当社およびその関連会社/ライセンサがユーザーの端末からデータを収集・利用することに同意するものとします (技術情報に限るものではありません) 。当該収集および利用は、本ソフトウェアの利用に関連して行われる場合および/または本ソフトウェアの機能の利用や継続利用の円滑化に関連して実施される場合があります。 ユーザーは、当社がソフトウェアの更新、製品サポート、その他の製品関連サービスを提供できるように、当社およびその関連会社/ライセンサがユーザーの端末から、端末名、システムとアプリケーションのバージョン、地域および言語設定、端末バージョン情報、デバイス識別データ (IMEI、ESN、MEID、SN) を収集することができることに同意するものとします。

 

お決まりの文言ですが、収集された情報が中国政府までノンストップで上がる可能性がゼロではない、ということです。

更にそこからAI開発などの名目で他の中国企業に拡散される可能性もゼロではありません。その際に匿名性がどの程度維持されるのかも分かりません。

 

これを気にしないか、気持ち悪いと感じるか。個人端末としてファーウェイを使う/使わないの一つの試金石です。

そしてこのことは最初に触れたようにファーウェイだけでなく全ての中国企業に言えることです。

後から知らなかったは通じません。