監視国家・中国の一端が垣間見られる話

BBCの中国特派員スティーヴン・マクドネルさんの実体験が記事になっていました。
氏は香港で行われていた天安門事件の追悼集会を取材していた際、中国国内のSNSに投稿した写真が元でアカウントをロックされ、解除するにあたって顔写真と音声データの提出を要求されたそうです。


現地の様子を写真に撮り、文を添えずにテンセントのSNSアプリ 微信ウィーチャット にアップした所、中国人の知り合いから「何の集まりか?」との問い合わせがあったそうです。
若い社会人世代からそうした疑問が投げかけられることから、天安門事件がいかに中国国内で「消された」歴史となってしまっているかが伺えます。


アカウントロック解除のために要求されたのは顔写真と声の提出

マクドネルさんは質問に対して直接的な表現は避け、回りくどい言い回しで説明したようですが、しばらくしてスクリーンに 「アカウントが除外されたためログインできませんでした。再度ログイン操作をし、画面の指示に従ってください」 という旨のアナウンスが表示されたそうです。

指示通り再度ログイン操作を行うと今度は 「この微信アカウントは悪質な噂を広めた疑惑があるため、一時的にブロックされています(後略)」 となり、操作が不可となりました。

翌日には「一時的なブロック」は解除されていましたが、 「悪質な噂を広めたことを認め、ブロックを解除する」というボタンが現れたそうです。
アカウントブロックを解除するにはこれを押す以外の選択肢はありません。

「悪質な噂を広めたことを認め」ボタンを押すと、次は 「セキュリティ上の目的のため、顔写真が必要です」 というメッセージでした。
「カメラをまっすぐ見て北京語で書かれている数字を読み上げて下さい」という指示が添えられており、顔写真と音声データを提出しない限り、アカウントの解除ができない仕組みになっています。


提出されたデータはまず間違いなく「要監視者リスト」に載るのでしょうね、ゾッとしない話です。


「自由」とは選択できること

「選べる自由」と言ったりしますが、「選べる」こと自体が既に一つの自由の形です。

現代の中国でまともに生活しようと思ったら、微信アカウントは必須と言われています。
日常生活ではSNS(LINEやFacebookTwitter)や決済サービスとして、ビジネス現場では名刺代わりにID交換が行われます。
日本よりずっと電子決済サービスへの依存度が高い中国では、現金決済は最後の手段です。
従業員による不正を防止するために現金NGのお店もあるくらいです。
「使わない」という選択肢が無いのが現状です。
国外のソーシャルメディアを遮断、規制している中で10億人が利用(寡占状態)しています。

それが公然と中国当局の検閲を受けているわけです。

2017年に本邦で共謀罪テロ等準備罪)が取り沙汰された際に野党が一生懸命「監視社会になる!」と言っていたのは、こうした社会を想起させたかったのでしょうね。
残念ながら、こうした監視社会の増長にフェイルセーフが働かないのは、公である自身のためにその他の個人(私)を徹底的に押さえ込む共産党勢力側だというのは皮肉な話です。