まだイギリス議会では承認されていませんが、EU議会とジョンソン英首相がブレグジット協定案に同意したそうです。
4月に延期された合意期限が2週間に迫っていますし、再延期は無いので、そろそろお尻に火が付いた状態と言えます。
ですが、問題は19日の臨時閣議でイギリス議会の承認が得られるかです。本番はここからでしょう。
新たな協定案ではバックストップ条項が「削除」されたと言われていますが、はてさて。
10月20日追記
イギリス議会の承認が得られませんでした。
国内法が整備されていないことが理由とされています。
これで合意期限である31日までに協定案が承認される可能性は絶望的となり、EU議会に期日の再延長を求めなければいけなくなります。
ジョンソン首相は以前、「(ブレグジットを延期するくらいなら)野垂れ死にの方がマシ("rather be dead in a ditch")」と強気発言をしていただけに、もし再延期ということになれば厳しい立場に置かれることになりそうです。
バックストップ条項とは
英国(Unaited Kingdom)はイングランド、スコットランド、北アイルランドの連合体です。
バックストップ条項とは、そのうち北アイルランドとアイルランド(共和国)との国境の扱いについてまとめたものです。
特に通商協定について、北アイルランドはブレグジット後もEUの単一市場のルールに従うこととされており、EU離脱後も英国がEU法に縛られることになる、と反発を招いていました。
なぜ北アイルランドだけなのかというと、英国とEU単一市場との地続きの接点が北アイルランドとアイルランド(共和国)との国境になるからです。
他は海で遮られているため比較的管理が容易ですが、地続きのここだけはそうはいきません。
ですが、方針としてアイルランドの北アイルランドの国境の厳しい管理を避けることを掲げています。
そのため国境管理の厳重化を避けた上で単一市場の完全制、イギリスの関税法の適用をいかに行うかが大きな課題となっていました。
今回の合意内容からは、そのバックストップが削除されたということですが、DUP(民主統一党;北アイルランドの保守党)を始め、議会の支持が得られるかは不透明なようです。
バックストップが削除されても、北アイルランドがイギリスの他地域とは異なる扱いを受けることは変わらないからです。
「この国が一つの関税地域であること」を支持する人たちが居る一方で、この案に同意すると「更に何年もEUと交渉し続けることになる」と懸念する人たちも居ます。
もちろん、ブレグジット阻止派の人たちも反対するでしょう。
合意された4つの要素からなる解決策
- 北アイルランドは、特に物品に関する手続きにおいて、一部のEU規則の対象となる。
- 北アイルランドはイギリスの関税法に留まる。しかし、北アイルランドはEUの単一市場への入り口のままのため、イギリス当局は北アイルランドに流入する物品がEU単一市場に入るリスクがない場合に限り、イギリスの関税を適用できる。ただし、EU単一市場に入るリスクのある物品に関してはEUの関税を適用する。
- 単一市場の完全性を維持しつつ、付加価値税(VAT;日本の消費税に相当)に関するイギリスの要望に応える。
- 北アイルランド議会は4年に一度、関連するEUの規則の適用を継続するか否かを単純多数決(過半数)で決定できる。
以前の協定案で盛り込まれていた、
- 2020年末までEUの規則に従い、企業に対応のための猶予を与える。
- イギリス国内のEU加盟国の国民および、EU域内のイギリス国民の権利は保証される。
- イギリスは推定390億ポンド(約5兆5千億円)の手切れ金をEUに支払う。
などは変更がないようです。