福島処理水の海洋放流が国際問題にならないのは「米国が黙っているから」という話

福島原発の処理水を海洋放流する件が正式決定されそうですが、お隣さんでは外交部が「日本の主権事案」として不介入の姿勢を取った内部文書が取り沙汰されて非難されています。

中にはこの件が国際問題にならないのは米国が黙っているからであり、米国を韓国が説得しなければならない、というような意見まであります。
米国は事の重大さが分かっていない、とでも言いたいのでしょうか?分かっていないのは韓国の方な気がします。


聯合ニュースの記事からです。

「汚染水放流が日本の主権事案だなんて」...与野党、外交部批判


福島原発汚染水を海洋に放流するという日本政府の計画と関連し、与野党が26日、国政監査で外交部の対応を批判した。

共に民主党イ・ジェジョン議員はこの日、外交部の総合監査で福島汚染水処理問題が「日本の主権的決定事項」という内容が強調された外交部内部文書を公開して口火を切った。
外交部が汚染水放流問題を日本の自国内問題と限定しようとしたのではないか、という趣旨の指摘である。

(中略)

この議員はまた、最近国際原子力機構(IAEA)総会で日本が付帯行事を複数回開催するなど、総力戦を繰り広げているが、我々の外交部は努力が足りないとしながら「(これらの外交姿勢は)国際社会で韓国の意思は考慮する必要がない、というメッセージと受け取られるのに十分である」と批判した。

(中略)

キム議員は「(日本の汚染水放流の)最も大きな被害国は米国だが、なぜ米国が黙っているのか、日本のロビーのためか分からない」とし「米国が動いてこそ国際問題になる。私たちの外交部が米国を積極的に説得しなければならない」と主張した。

(中略)

キム議員は「国際法には各国が陸上の汚染による海洋汚染を防止する義務がある」とし「(日本を相手に)国際訴訟と仮処分訴訟を提起しなければならない」と述べた。

聯合ニュース「"오염수 방류가 일본 주권 사안이라니"…여야, 외교부 비판(「汚染水放流が日本の主権事案だなんて」...与野党、外交部批判)」より一部抜粋


原文記事で「汚染水(오염수)」としてあるので、そのまま訳しますが、これは日本では「処理水」と呼ばれているもののことです。
「汚染水」と言うと、あたかも放射性物質を多量に含む水をそのままにしているように聞こえますね。それが狙いでしょう。


外交部が公に日本に物申すと、韓国政府としての見解ということになってしまいます。
恐らく、外交部はそれを避けたいはずです。(なぜかは後述)


次に、処理水の海洋放出は「科学的に合理的」とする中央日報に寄せられたコラムをご紹介します。

[寄稿]福島「処理水」処分には科学的なアプローチが必要


(前略)

専門家は、この処理水を規制基準値以下の状態で海洋放流することを勧告しており、現在としてはこの方法が最善策だと口をそろえる。
膨大なレベルの放射性物質が含まれているという、いくつかの懸念とは異なり、1リットルの処理にポテトチップスの袋、あるいはバナナ4本分程度の放射性物質が検出されるだけである。
それだけでなく、東京電力はALPSを通して放射能汚染水から62種類の放射性物質を取り除くことで規制基準値以下にし、現在の処理水には三重水素(H-3)のみが含まれている

一部の懸念とは異なり、関連分野で長年の研究を行ってきた筆者などは、これらの三重水素が既に自然界に存在する一般的な物質であり、海洋放流しても構わないことをよく知っている。
現在までに多くの国の原発施設で海洋などに放流されており、三重水素による海洋生態系と人々の健康に深刻な脅威を与えた事例もない。

(中略)

三重水素は人体に有害であるとの認識とは異なり、実際には全くそうではない。
三重水素は急速に希釈され、体から抜けていくために、これにより多くの放射線量を得ることは不可能である。
実際に三重水素が含まれている水の危険度は、あまりにも低いために世界各国にある原発で既にこれを排出している

(中略)

科学者として、私たちは根拠に基づいて解決策を提示することは出来るが、これにたいして意見が別れることがある。しかし、福島処理水の処理方法については、化学的な根拠に基づいて合理的な判断が下されるよう期待したい。

中央日報「[기고] 후쿠시마 ‘처리수’ 처분에 과학적 접근 필요([寄稿]福島「処理水」処分には科学的なアプローチが必要)」より一部抜粋


米国の雑誌「フォーブス」の科学コラムニスト、ジェームズ・コンカ(James Conca)氏の寄稿コラムです。
こっちはちゃんと「処理水(처리수)」になっています。


専門家が科学的に判断して、処理水(三重水素含有水)を海洋放流することは問題とされていない。
だからこそ、世界中の原発保有国が既に行っている措置。


コラムの内容をまとめると、このようになります。
なぜ米国が黙っているのか分かりますね。韓国外交部が動かない理由も。

つまり、韓国外交部が日本に対してとやかく言えないのは韓国自身も処理水を海洋放流している原発保有国の一員だからです。
「汚染水」、「処理水」と言葉は違いますが同じものを指していることは明らかです。

議員たちは本当に知らないのか、それとも知っていて国民に向けた「やってますアピール」をしているだけなのか…。