IAEA包括報告書発表、韓国「結果尊重」という話

IAEAから包括報告書が発表されました。内容は特にコレと言って目新しいものはありません。
ざっくりまとめると...

1.ALPS処理水の海洋放出アプローチは国際的な安全基準に整合的
2.ALPS処理水の海洋放出が人体および環境に与える放射線影響は無視できる

「うん、知ってた」な中身でございます。
韓国政府も一応、「IAEAの報告書尊重」の立場を出しています。「IAEAは信用できない」と言った韓国野党がそれで収まるのかどうかは知りませんが。

 



JTBCの記事からです。

政府「IAEAの報告書結果尊重」(総合)


政府は国際原子力機関IAEA)が日本の福島第一原子力発電所の汚染水放流計画が科学的に安全だという報告書の結果を発表したことについて、「尊重する」との立場を示しました。

パク・グヨン国務1次長は今日(5日)、政府ソウル庁舎で行った日本の福島汚染水放流に関する一日ブリーフィングで「IAEAが国際的に合意された権威ある機関なので、そこで(そのような結論を)下したことに対して尊重するという基本的な立場は以前からお話ししてきましたし、今回も同じだ」と述べました。

IAEAは昨日(4日)、日本の汚染水海洋放流計画が国際安全基準に合致するという内容の最終報告書を発表しました。これとは別に、韓国政府は2021年8月から韓国原子力安全技術院(KINS)主導で汚染水放流の安全性を点検しています。

パク1次長は「(IAEA報告書)内容と関連付けて、これについてどう評価するか、またその内容に同意するか、この部分はKINSを中心に自主的な検討作業が進められている」とし「その作業が大詰めの段階であり、最終発表の際にはIAEA報告書に対する深層分析内容も一緒に説明する」と述べました。

(後略)



JTBC「정부 "IAEA의 보고서 결과 존중"(종합)(政府「IAEAの報告書結果尊重」(総合))」より一部抜粋

IAEAの報告書を「尊重」と言えたのは最低限評価できるポイントでしょうか。韓国政府としては精一杯がんばってこのレベルでしょうから、程度が低いにもほどがあるのですけれども。

程度が低いと言えば、この記事に付いていたコメントで次のようなものがあります。

「報告書を読んだことはあるか。検証は何もしておらず、全ての責任は日本にあり、この報告書は安全であることを保障しないと書いてあるのに、なぜそれについての言及はないの?売国奴政権だよ」(↑207 ↓7)



本人は論破してやったぜ、とでも思っていそうですが...正直、このコメントにはさすがに唖然としました。IAEAが何をやっているか把握してないんだ、そこからなんだ...と。

IAEAが「安全」と言わないのは当たり前です。なぜなら「トリチウムが安全」という確証は無いからです。科学的に確認されていないことを科学者が断言することは出来ません。(コロナのときに散々見てきましたよね、断言しない科学者たち)

では、IAEAは何をしているのか。日本の放流計画が提出された計画書通り進められているか、放出される処理水に含まれる物質が国際基準に照らして許容される範囲に収まっているか、などを第三者機関として検証しているだけです。
トリチウムは安全」なんて科学的に口が裂けても言えないはずです。しかし現在、世界中の原発からトリチウムを含む水が大量に放出されており、それによる生体影響・環境影響が「軽微」としてスルー対象であるのも事実です。よって「国際基準に照らして許容される範囲内の濃度での放流」を確認することで、逆説的に問題が無いこと(消極的安全性)を確認しているわけです。

東電のページからも報告書(英語)に飛べるので、一応リンク貼っておきますね。


関連記事をもう一本紹介します。これは米国の反応に関しての記事なのですが、記事の内容というよりお伝えしたいのはコメントの内容です。
韓国与野党が処理水放流を政争化させてヤンヤヤンヤやり合っているのは周知のことですが、世論も割れているということがお分かりいただけるのではないかと。

 

 



韓国日報の記事からです。

米国、汚染水放流を事実上支持...「日本、科学を基盤に透明な手続きを推進」


米政府は4日(現地時間)、福島原発汚染水の海洋放流計画に対する国際原子力機関IAEA)の「安全基準に合致する」という評価を尊重するとの立場を明らかにした。事実上、日本政府の放流計画に対する支持を表明したものと分析される。

国務省報道官はこの日、IAEA報告書に対する立場を尋ねる韓国メディア質問に「放流と関連した判断は科学が左右しなければならない」と明らかにした。続いて「日本は2011年福島第1原子力発電所事故以後、公開的で透明な管理をしてきた」とし「放流計画に関しても日本は科学に基づいた透明な手続きに従ってIAEAと協力してきた」と付け加えた。

このような国務省の答弁は、これまで日本の汚染水海洋放流計画が科学的方式によって樹立され、IAEA検証まで受けただけに、このまま放流が行われても問題ないという意味と解釈される。ジョー・バイデン米政府は発足初期の2021年4月、日本の汚染水放流決定当時「日本は国際安全基準により透明に決定した」という立場を明らかにするなど支持意思を表明してきた。

(後略)



韓国日報「미국, 오염수 방류 사실상 지지... “일본, 과학 기반 투명한 절차 추진”(米国、汚染水放流を事実上支持...「日本、科学を基盤に透明な手続きを推進」)」より一部抜粋

 

記事へのコメントは225件。反応は「良い情報:4 興味深い:2 非常に共感:84 良い分析:1 続報期待:8」です。

「科学を信じて、その価額に基づいて調査された検証を信じれば何の問題もありません。もう科学を無視した戯言を言うのは止めましょう。その戯言に国民だけが被害を受けます」(共感145 非共感57)

「放流を認めるかどうかは国連傘下の機関である国際原子力機関IAEA)が決める。IAEA加盟国である韓国政府は、いかなる方向であれ方向が決まればその決定に従うのがグローバルスタンダードに相応しい。民主党が政権を握った2年前にも『IAEA基準に適合した手続きに従うならあえて(放流に)反対することはない」と述べた。汚染処理水に対する政府のスタンスはその時も今も変わっていない。にも関わらず、汚染処理水は日本が放流するのにユン・ソンニョル政府退陣を叫ぶのは一体どういうことなのか」(共感109 非共感32)

「汚染水が流れる海流側にあるカリフォルニアを持つ国がこうだから、その逆の海流である韓国は恥ずかしい。中国東海岸原発三重水素がはるかに有害で現実的な問題だが、それをすべて含む天日塩を買い溜めしているwww」(共感49 非共感14)

「米国はお金を払ってロビーすればなんでも出来る国...銃器事故のニュースで埋め尽くされても、防衛産業会社が金で手を打つから銃器規制は不可能ww米国は金を渡せば人の命なんか眼中にもない」(共感37 非共感17)

「そんなに安全なら農業用水として使って、あなたの国で使用すればいいのでは?どこの国が原発汚染水を海に流すのか、私は初めて見る」(共感69 非共感50)

韓国の一部では今、処理水放流を目前に塩の買占めが起こっています。
韓国は日本と同じで海水から水分を飛ばして作る天日塩がメインなんですけど、別に処理水放流を待たずとも中国東海岸原発から福島の年間放流計画の上限(22TBq)の50倍に達する1054TBqが排出されています。
更には韓国自身の原発も福島の年間放流計画の上限の約10倍に相当する214TBqを2022年に排出しています。
いまさら塩の買占めって...なんのギャグでしょうね。


「農業用水として使え」...よく見るコメントです。これも「正論」と思っているのかもしれませんね。

ところで、水って嵩張るので運ぶのメチャクチャ大変です。1㎥あたりの水の質量は1トンです。6月29日時点の処理水貯蔵量は133万7927㎥ですよ。とてもじゃないですが現実的ではありません。こういう話を真顔でする人は物理的な制約とコストを軽く見過ぎだと思います。
そもそもが放流しても問題ないものに、無駄な手間とコストを掛ける意味が分かりません。