法廷で「慰安婦問題討論」が行われた話

名誉毀損で訴えられた「慰安婦は売春婦」発言のリュ・ソクチュン元教授の第二回公判が開かれ、その傍聴ルポが掲載されました。

法廷では、リュ・ソクチュン元教授と検察が用意した証人との間で「慰安婦問題討論」が行われたようです。
元記事(ペン・アンド・マイク)はリュ元教授を支持する立場ですが、それを差し引いても検察証人の発言はお粗末なように思えます。


ペン・アンド・マイクの記事からです。

[ルポ]「慰安婦は売春の一種」リュ・ソクチュン前教授の公判傍聴記…「検察、公訴事実を立証できず」


授業の途中、受講生との討論の過程で「日本軍慰安婦は売春の一種」という趣旨の発言をしたという理由で裁判にもち込まれたリュ・ソクチュン元延世大学社会学科教授。12日午後4時、ソウル西部地方裁判所刑事4単独308号の法廷でリュ元教授に対する二回目の公判が開かれた。

今年2月、ソウル西部地裁に赴任し、事件を担当することになったパク・ボミ判事(司法試験51回・研修院41期)は検事側の証人3人に対する証人尋問を終え、この事件の公判検事に対し、このように延べた。

「この事件の公訴事実には被害者の実名が明示されました。『日本軍慰安婦』とすれば、趣旨上、大韓民国で連行されたおばあさんたちを指すと見られるが、広範囲に見るなら過去の東南アジア地域などで連行されたこれらも含むことができそうです。被告側の被害者は特定されていないと主張するのに裁判所もその意見に共感します。そして全体的に『韓国挺身隊問題対策協議会』(挺隊協)と関連し、被害者団体がどのような部分について『虚偽』だと主張したのか、はっきりしていません。検察側は起訴状の変更を検討してください」


検察はリュ元教授を「虚偽事実の摘示による名誉棄損」の容疑で起訴した。「虚偽事実の摘示による名誉棄損」が犯罪事実として成立するためには、▲公然性(表現が複数の人に伝播可能な形でなされなければならない)▲特定性(表現対象が誰なのかすぐに分からなければならない)を満たさなければならず、▲表現内容が虚偽であるかどうか(摘示した事実が嘘でなければならない)▲名誉棄損の発生可否(摘示した虚偽事実で名誉が棄損されなければならない)を全て問わなければならない。裁判官はまず「特定性」と「虚偽」について疑問を表したのだ。さらに、パク判事は検察側に控訴状に書かれた内容だけではリュ元教授の犯罪成立が難しいため、控訴状変更を検討するよう注文した。

◇「リュ教授の行為、『学問の自由』と見る余地がある」と検察側の証人…検事と争う寸劇も

この日の公判では、公訴事実を立証するために検察側が申請した事件の告訴・告発者に対する証人尋問が行われた。同日、証人にはキム・スンファン庶民民生対策委員会事務総長、キム・ドンヒ戦争と女性人権博物館長、ハン・ギョンヒ韓国挺身隊問題対策協議会清算人(正義記憶連帯事務総長)が出席した。証人尋問はキム・スンファン事務総長、キム・ドンヒ館長、ハン・ギョンヒ清算人の順で行われた。

公判検事はまず、キム・スンファン事務総長に被告チュ・ソクチュン元教授が講義時間の途中、「日本軍慰安具は売春の一種」と発言したことに対して告発したことが事実か確認し、講義内容のうち、どの部分が「虚偽」に該当するかを尋ねた。するとキム証人は「マスコミを通じて講義内容を知った」とし 「(リュ元教授の発言内容は)明確に虚偽事実というよりは、(社会の一般的な)見解と違うのではないか、という趣旨の告発」 と答えた。

公判検事は慌てた様子だった。リュ元教授の発言内容が「虚偽事実」だったことを立証するための検察側が呼んだ証人自ら、リュ元教授の発言内容を「意見」と見ることができると述べたためだ。これはむしろ「意見表明だった」というリュ元教授側の主張を裏付ける証言だった。ある人を「名誉棄損」で処罰するためには処罰しようとする人が指摘した表現が「事実」または「虚偽事実」でなければならないが、単純な意見(見解)表明に対しては処罰が不可能だ。

これに公判検事は「『経済的な理由で自発的に日本軍慰安婦になった』という発言が『虚偽』という趣旨で告発したのが正しいか」、とキム証人を刺激した。しかしキム証人は「曖昧だ」とし「(リュ元教授の授業中の発言内容が)明確に虚偽だと断定することはできない」とし、検事が「証人はリュ元教授の発言内容が虚偽なのか事実なのかも知らずに告発したのか」と問い返すなど、一大寸劇が繰り広げられた。

リュ元教授側の弁護人はキム事務総長に「被告人の行為が『学問の自由』に含まれるとも考えられるか」と問い、キム事務総長は「一部そういう部分があると思う」と答えた。

(中略)

この事件の争点は▲「日本軍慰安婦は売春の一種」というリュ元教授の発言が「日本軍慰安婦」の「強制連行」事実を否認したもので、いたずらに「虚偽事実」を指摘することで「日本軍慰安婦」被害者の名誉を棄損したのか▲「挺隊協」は「日本軍慰安婦」被害者の女性らを教育することで事実と異なる証言(実際には「強制連行」被害事実がないにも関わらず、そのような被害事実があるかのように人々に認識させる証言)をするように作ったのか▲韓国挺身隊問題対策協議会(以下「挺隊協」)で幹部として活動したこれらのうち、2014年に違憲政党の審判を受け解散した統合進歩党(統進党)の幹部として活動した事実があるものがいるのか、など大きく三つに分けることができる。

(中略)

「『日本軍慰安婦』被害者らが強制連行されたという事実を立証できる証拠は何か?」とする検事の質問に、証人のキム・ドンヒと証人のハン・ギョンヒの2人とも 「おばあさんの証言がその証拠」 と答えた。さらに検察側は、国連経済社会理事会のクマラスワミ女性暴力問題特別報告者が1996年に柵下報告書(以下、「クマラスワミ報告書」)と1993年8月3日に河野洋平官房長官(当時)が発表した特別談話などを「強制連行」の証拠として差し出した。

これに対しリュ元教授側は「『クマラスワミ報告書』が吉田清治の証言を土台に作成されたという事実を知っているか」とし「吉田の証言は既に虚偽だったことが明らかになった」と反論した。またリュ元教授は「日本軍慰安婦」被害の事実を主張してきた女性らの証言が変わってきたという事実も指摘した。それとともにリュ元教授側は、その代表的な事例としてイ・ヨンス(93)氏を挙げた。イ氏の証言は初期段階では「ある男が赤いワンピースと革靴をくれたので、それらを受け取って嬉しさのあまり家に知らせることもせずに気軽に後についていった」と話していたが、後に「夜中に家に押し入ってきた日本の軍人が私を強制的に連れて行った」と証言を変えた。法廷で証言が証拠として認められるためには、少なくとも一貫性が維持されなければならないが、「日本軍慰安婦」被害者の証言はそうではない、というのがリュ元教授側の主張だった。

(中略)

リュ元教授側のこのような反論にハン・ギョンヒ証人は「この1991年9月以降、『日本軍慰安婦』被害電話が初めて設置されて以降、これまで240名余りの被害者たちが被害事実を知らせてきており、研究によると北側にも200名を超える被害者がいる」、「海外にも被害事実を証言する多くの人がいる」とした。ハン証人はその代表的な例として「スマラン慰安所事件」を挙げた。「スマラン慰安所事件」とは、軍令を無視した一部の日本軍人が1944年2月、当時のオランダ領インドネシアのスマラン島でオランダ人女性を拉致・監禁し強姦を行ったとされている。

これに対しリュ元教授はハン証人に「スマラン島で発生した事件の他に日本軍が朝鮮人女性を強制連行した事例があるのなら、もう一つだけ追加で提示してほしい」と要求した。ハン証人は「『強制性』の根拠は実際に(日本軍が)連行したのかどうかではなく、その当時の状況が強制的だったのか、そうでなかったのかに関するもの」と述べ、長広舌を並べ立てたが結果的にリュ元教授の質問に合致する答弁は出来なかった。

(後略)

ペン・アンド・マイク「[르포] "위안부는 매춘의 일종" 류석춘 前 교수 공판 방청기..."檢, 공소사실 입증 못 해"([ルポ]「慰安婦は売春の一種」リュ・ソクチュン前教授の公判傍聴記…「検察、公訴事実を立証できず」)」より一部抜粋


法廷が慰安婦論争の場になったというのは異例のことでしょうね。主要メディアは一切取り上げていませんが。

しかし、一番仰天するのは告訴理由が「社会通念と違うから」という部分でしょう。
「私の考えと違うものは、例え事実でも認めてはならない」ということでしょうか?

「『強制性』の根拠は実際に(日本軍が)連行したのかどうかではなく」というのも変な話です。では「日本軍に強制連行された」という主張は虚偽ということで良いのでしょうか?