基準金利引き上げを受けて韓国金融圏が低信用者を対象とした融資を減らしている話

韓国には第二金融圏というのがあります。通常の銀行で融資を受けられなかった人たちが頼るところで、審査が緩い代わりに利子が高く設定されています。
銀行での審査に通らなかったということは、第二金融圏に来るような人たちは元々経済的にあまり良い状況ではないと思われます。それでもお金を借りる必要があるような人たちということです。

最近の基準金利引き上げを受けて、この第二金融圏でどうも貸し渋りが起きているようです。
一般の金融機関で融資が受けられない層ということは、それだけ返済が滞るリスクが高いということですのでそれを嫌ったものと思われます。
しかし、信用スコアに関する統計資料によるとスコア600点台以下の層は約61%が何らかのローン保有者です(多いところだと87%がローン保有者)。こうした層が第二金融機関で融資を受けられなかった場合、いわゆる「ヤ〇金」的なところを頼らざるを得なくなるのではないか、との懸念が出てきています。

 



ファイナンシャルニュースの記事からです。

貸付業も金融融資を減らす。脆弱借主、違法金融に追い込まれる


(前略)

18日、貯蓄銀行中央会によると個人信用貸出3億ウォン以上を扱った貯蓄銀行の中で信用点数600点以下の貸主に貸し出しを出さなかった貯蓄銀行は第1四半期の3月末の4ヶ所から8月末には11ヶ所に増えた。信用貸出の取り扱いを中断した貯蓄銀行は44行から46行に増えた。

これは韓国銀行の基準金利引き上げで調達費用である預・積金金利が上昇すると損失を最小化するために低信用者比重を縮小していると分析される。マージンを守るためには預金金利上昇分だけ貸出金利を上げなければならないが、年金利上限が20%に制限されると相対的にリスク管理費用が少ない高信用者中心に営業路線を変えたのだ。貯蓄銀行中央会によると、定期預金1年満期商品の平均金利は3月末の2.51%から17日に年4.60%に上昇した。

貯蓄銀行業界関係者は「貯蓄銀行業界の貸出総量規制が今年に入って14%から21%に大幅に強化された上に最近の基準金利上昇で調達費用が上がり貯蓄銀行業界も泣きっ面に蜂」とし「このため、やむを得ず低信用者比重を縮小している状況」と話した。

カード業界も同様の状況だ。与信金融協会のカードローン適用金利帯別会員分布の現況によると、専業カード会社7社 (新韓・サムスン・KB・ロッテ・ウリ・ハナ)のうち5社のカード会社が年明けと比較して8月に入って年18~20%台のカードローン取り扱い比重を減らしたことが分かった。金融投資協会によるとカード業界の資金調達費用である与信専門金融債権3年物の金利は年明けの1月3日の年2.420%から17日には5.711%へと上昇した。

(中略)

その上、最後の制度兼金融業界である貸付業界まで低信用者を対象にした融資を減らしている。金融監督員の「2021下半期貸金業実態調査」結果によると昨年12月末基準の金業者の貸出残額は14兆6429億ウォンで、前期対比1288億ウォン増加した。このうち担保融資が741億ウォン増えて全体残高の52.0%(7兆6131億ウォン)を占め、信用融資の割合(48.0%)を上回った。信用融資の割合が減ったということは、担保のない低信用者に対する融資が減少したという意味で、貸付業者にまで押し出された低信用者は、ややもすると不法私金融に追い込まれかねない。

(後略)



ファイナンシャルニュース「대부업도 신용대출 줄인다. 취약차주 불법 사금융 내몰려(貸付業も金融融資を減らす。脆弱借主、違法金融に追い込まれる)」より一部抜粋

2020年まで信用等級制(1~9等級)だったのが信用点数制(1~1000点)に変わったそうです。
NICEという信用格付けシステムの統計資料によると、クレジット評価を持っている全体人数は約4700万人。うち約4200万人はクレジット評価が700点以上の人たちです。
一番人数が多いのは900点台(約2000万人)ですが、このスコア帯の人たちが第二金融圏にお世話になることは恐らく無いでしょう。



スコア 信用評価人数 ローン保有人数
900~ 20,358,081 8,530,246
800~ 11,864,489 6,638,556
700~ 12,595,487 2,687,916
600~ 729,594 640,997
500~ 110,631 103,659
400~ 46,037 44,607
300~ 1,872,619 866,123
200~ 112,709 108,259
~199 3,164 3,144

※数値はすべて2021年12月時点のもの(参考「NICE評価情報 個人信用評価に関する統計資料」)

この統計資料を見ていて気になった点が2つほどあります。
一つはスコア300点台の多さです。600以下の他のスコア帯が数万人から数十万人なのに対し、300点台だけ180万人と桁が一つ多くなっています。(いわゆる脆弱層でしょうか?)
もう一つはローン保有者数です。スコア700点以上の層が、人数に対してローン保有数が1/5~1/2強なのに対して、スコア600点以下の層は多いところだと9割近くがローン保有となっています。
例えばスコア600点台の場合、スコア保有者数が729,594人に対してローン保有者数は640,997人。約87%です。