ノンバンクを中心に延滞率が高まりつつある話

第2金融圏、いわゆるノンバンクと言われる金融機関の延滞率が急騰しています。
ノンバンクの企業融資残高は3年間で85.4%増加しました。昨年第4四半期末時点で延滞率は2.24%。3年前同期と比べて0.62%上昇しています。
特に貯蓄銀行で資産健全性の悪化が顕著です。業界2位のOK貯蓄銀行は、貸出金のうち3ヵ月以上延滞が発生し回収の可能性が低くなった不良債権の割合を示すNPLという資産健全性指標が7.95%と出ました。韓国の金融当局が定めるNPL規制制限が8%ですから、もうギリギリです。
これを受けて貯蓄銀行不良債権処理を支援する検討がされているとのこと。

 



中央日報の記事からです。

非銀行金融会社、企業貸出延滞率が約7年ぶりに最高


(前略)

1日、韓国銀行が国会企画財政委員会所属のヤン・ギョンスク議員(共に民主党)に提出した資料によると、昨年第4四半期末時点で国内金融圏(銀行+ノンバク金融機関)の企業融資残高は計1874兆ウォン(銀行1221兆6000億ウォン+ノンバンク652兆4000億ウォン)に上る。新型コロナウィルス感染症事態直前の2019年第4四半期(1263兆5000億ウォン)に比べ3年間で43.8%増えたもので、歴代最大だ。

特に貯蓄銀行・相互金融・保険会社・与信専門金融会社など、第2金融圏と呼ばれるノンバンク金融会社の企業貸出は同期間357兆2000億ウォンから662兆4000億ウォンと85.4%も増えた。同期間の銀行圏の増加率(34.8%)の倍をはるかに上回る。

問題は非銀行圏の中心に企業貸出の延滞率が急速に高まっているという点だ。これらの企業融資延滞率(1ヵ月以上の元利金延滞基準)は昨年第4四半期基準で2.24%と集計された。直前の四半期の昨年第3四半期(1.81%)より0.43%ポイント上昇し、2019年の第4四半期(1.62%)より0.62%ポイント高い。2016年の第1四半期(2.44%)以後、6年9ヵ月ぶりに最も高い水準だというのが韓銀の説明だ。

(後略)



中央日報「비(非)은행 금융회사, 기업대출 연체율 약 7년만에 최고(非銀行金融会社、企業貸出延滞率が約7年ぶりに最高)」より一部抜粋

上の記事は企業貸出の話しかしていませんが、個人貸出も似たようなものかと思われます。
貯蓄銀行は現在、個人債権の売却先に制限があります。しかし韓国政府はこの制限を解除し、売却支援を検討し始めているそうです。つまり現時点で個人貸出についても回収不可能と判断できる債権を一定量抱え込んでいるという意味です。



 



こちらはファイナンシャルニュースの記事が詳しく報じています。

貯蓄銀行の延滞率急騰...当局、不良債権の民間売却許容を検討


(前略)

4月30日、金融界によると資産規模基準で5大貯蓄銀行の昨年の不良債権はSBI貯蓄銀行を除いて全て値上がりした。NPLは貸出金のうち3ヵ月以上延滞され回収の可能性が低くなった不良債権の割合で、資産健全性を示す指標だ。

具体的に業界2位のOK貯蓄銀行のNPLは昨年末に7.95%で、前年(7.16%)より0.79%ポイント上昇した。金融当局のNLP規制制限が8%であることを考慮すると、すでに限界地に達したのだ。韓国投資貯蓄銀行とウェルカム貯蓄銀行はそれぞれ0.22%、1.32%上がった4.93%と6.25%で、ペッパー貯蓄銀行も昨年末に4.71%で2021年(2.1%)と比べ1.92%上昇した。このように増えた不良債権に昨年末、貯蓄銀行業界の総家計負債延滞率は4.7%で前年(3.7%)と比べ1%上昇した。

貯蓄銀行業界は金融当局の措置で不良債権を簡単に売却できない状況が問題になったという立場だ。金融当局はCOVID-19発生当時の2020年、貯蓄銀行に個人延滞債権を韓国資産管理公社(KAMCO)以外に売却できないよう勧告した。債権取り立てを最小化し、借主の負担を緩和させるという趣旨からだ。

(中略)

貯蓄銀行関係者は「KAMCOは債権取り立て機能が無い機関なので、債権取り立て業者に比べて低い価格で債権を買い入れる」とし「通常50%程度の価格で買い取られ、貯蓄銀行の立場ではKAMCOに売却する理由が無い」と説明した。

(中略)

金融当局は貯蓄銀行がKAMCOだけでなく民間業者にも不良債権を売却する案を検討している。金融当局関係者は「KAMCOだけに売るようにしたものを他の民間業者にも売却できるようにする作業を進行中」とし「貯蓄銀行健全性指標管理を支援し、貯蓄銀行圏に対する金融消費者の信頼を高めることも必要なため」と明らかにした。

(中略)

協議が完了すれば貯蓄銀行圏が不良債権を民間債権取り立て業者にも売ることが出来るようになり、不良債権が減って延滞率が低くなる可能性がある。ただ金融消費者の立場では貸出延滞に対する取り立て強度が高くなる可能性がある。



ファイナンシャルニュース「저축銀 연체율 급등..당국, 부실채권 민간 매각 허용 검토(貯蓄銀行の延滞率急騰...当局、不良債権の民間売却許容を検討)」より一部抜粋

なぜ不良債権の処理が必要なのかと言うと、損失として計上できないからです。それどころか帳簿上「債権」は「資産」とカウントされるので、実際は回収できずマイナスなのに帳簿上はプラスとなってしまいます。
そこで不良債権を専門に買い取るサービサーという民間業者に売却します。例えば2000万の債権を500万とかで売ります。そうして譲渡益として500万、損失として1500万を計上します。サービサーは債務者から500万以上取り立てられれば儲けが出せるというわけです。

しかし韓国の金融当局は貯蓄銀行に対してサービサー(民間)への個人債権の売却を禁止しました。借主の負担を軽減、という名目で取り立て機能のない公社に一本化したことで満足のいく価格が付かなくなりました。貯蓄銀行側はこの措置が終わるまで売らずに塩漬けにした方がマシと思ったわけです。しかしここに来て限界の方が先に訪れた、と。

金融当局の措置が無意味だったとは思いません。銀行で融資を受けられなかった人の受け皿として貯蓄銀行がコロナ禍に果たした役割はそれなりだったでしょうし、不良債権の処理先が限定されたことで助かっている人たちが居ることも事実でしょう。
ただ、シワ寄せの帳尻はどこかで必ず合わせなければいけなくなります。寄せては返す波がそのたびに大きくなって堤防を越えて来る日も近いのではないか、そんな気がしています。