日韓スワップの話

2015年に終了した日韓スワップ(ドルベース)が復活するそうです。規模は当時と同じ100億ドル(約1兆4400億円)。「復活」というか、「復元」と言った方が良いでしょうか?別に前に進んだわけではないといのがポイント。2歩下がったのが2歩進んでも、前進とは言えませんよね?日韓のいつものやーつ。

期限は3年となっています。ユンさんの残り任期と一致しますが、スワップは無期限の方が珍しいので、これはたまたまでしょうか?普通は特に問題がなければ延長されます。2015年に終了したのは、韓国側が「延長の必要なし」として延長を求めなかったからです。米国と無期限・無制限スワップを結んでいる日本としては、わざわざ韓国と「ドルベース」で結ぶ意味が特に無かったのでそのまま終了となっていました。

スワップ復元については、色んな意見があることかと思います。日本の国益を第一に考えるなら「意味がない」と思われる人が多いかもしれません。が、個人的には「良いんじゃない?別に」と思っています。なぜなら「意味がない」からです。
意味がない理由は後述するとして、日本の国益を考えるなら、それこそコレを最大限の「貸し」として使って欲しいですね。米国と無制限・無期限のスワップを結んでいる日本には無用の長物のスワップで一方的に韓国に安全弁を提供...しかも「ドルベース」にすることで韓国世論にまで配慮しているのですから。

 



ヘラルド経済の記事からです。

韓日100億ドル規模の通貨スワップ再開に合意


韓日両国が100億ドル規模の通貨スワップを締結した。100億ドルは2015年に両国間の通貨スワップが終了した当時と同じ規模で、今回の通貨スワップ締結は韓日金融・経済関係の復元と言う象徴性が大きい。

企画財政部は、チュ・ギョンホ経済副総理兼企財部長官が29日、日本財務省鈴木俊一財務長官と行った第8回財務長官会議でこのように合意したと明らかにした。

(中略)

企画財政部は「2016年以来、7年ぶりに再開された今回の韓日財務長官会議は3月、韓日首脳会談で始まった両国関係の正常化を経済政策および金融協力部門にまで拡大するための努力の一環」と明らかにした。

韓日通貨スワップ、8年ぶりの再開で金融協力

2回目のセッションでは、韓国と日本の財務当局間の連帯と協力強化に向けた2国間および多国間協力課題について話し合った。

金融協力部門では両国長官が2015年以後中断された韓日通貨スワップを復元することで合意し、韓日間相互金融投資活性化方案についても議論した。

特に韓日通貨スワップは2015年韓日間の外交関係悪化で終了して以来8年ぶりに再び締結するもので、2015年2月終了当時と同じ100億ドル規模で締結した。

韓日通貨スワップの締結は両国間の有事の際、相互安全装置を提供する一方、アセアン+3など域内経済および金融安定にも肯定的に作用するものと予想される。

チュ副総理は「今回の韓日通貨スワップは韓・日米など普遍的価値を共有する国家と外国為替・金融分野で確固たる連帯・協力の枠組みを用意したもの」とし「これを通じて自由市場経済先進国間の外貨流動性安全網が韓国金融・外国為替市場まで拡大するという意味がある」と評価した。

(後略)



ヘラルド経済「한일 100억달러 규모 통화스왑 재개 합의(韓日100億ドル規模の通貨スワップ再開に合意)」より一部抜粋

最近、メディアでは単に「スワップ」あるいは慣例的に「通貨スワップ」と呼び、その仕組みも「金融不安などの危機が生じた国から要請があった場合、その国の通貨と引き換えに、相手国が米ドルなどの外貨を一時的に提供して支援する仕組み」としか説明しなくなりました。間違いではないけれど、正しくもない説明に思えます。
というか、恐らく意図的にミスリードを狙っています。なぜなら、この説明だけを読むと「外貨準備高」の穴埋めに使えそうに読めるからです。

実際は、米国とのスワップでも同じですが、外貨準備高には使えません。市中銀行(一般銀行)の流動性低下を阻止するためにだけ使える仕組みです。ですので、本来は「流動性スワップ」と呼んだ方がしっくりきます。昔は「為替スワップ」と呼んでいたような気がしますが、FXのスワップ金利と混同するためか、最近聞きません。

例えば、日本と韓国とで貸し借りをする場合、日本銀行中央銀行)が直接韓国内の市中銀行に外貨を貸し付けることは出来ません。そこで、韓国銀行(中央銀行)が一括代理で、日本銀行中央銀行)からウォンを担保に外貨を借りて来るのです(この際、為替レートを固定制に出来るのがスワップのメリット)。それを市中銀行に貸し(又貸し)ます。
このとき、韓国銀行(中央銀行)は「自分が使う分」を借りることは出来ません。借りてきた外貨は市中銀行に貸す以外の使い方が出来ないよう制約が課せられます。そのため、スワップで借りた外貨は通貨防衛には使えません。

つまり何が言いたいかと言うと、本当にいざというときには役に立たないということです。記事冒頭で書かれているように、「金融・経済関係の復元」としての象徴以上の意味はないでしょう。
それはスワップが「ドルベース」であることからも伺えます。韓国は日本以外の国とのスワップでは現地通貨とウォンとの締結です。(韓国は日本への貿易支払いを「円」でやっている企業が結構あるので、日本相手に「ドルベース」でなくても良かったはず)
しかし韓国世論への訴求力を考えると「円」と結ぶと逆効果、「ドルベース」である必要があったのだろうと思います。