韓国金融当局による「空売り禁止」措置後、個人投資家による「借金投資」がまた増えたという話

11月5日に韓国の金融当局は、韓国取引所において翌6日から来年6月まで「空売り禁止令」を出しました。
空売り」とは信用取引で使われる方法の一つで、手元にない株券を証券会社から「借りて売り」、期日までに「買い戻して返却」することで差額益を狙う取引のことです。(値が下がれば益、上がれば損)

空売りが問題とされるのは、売り圧力のせいで「株価が上がろうにも上がれない状態」が作られてしまうため「空売り=企業・投資家の利益を邪魔する」との見方が強くあるためです。(しかし実際にはあまり関係がないとされています)

まあ、理由や良し悪し、社会的意義などはともかくとして、韓国金融当局は過去に何度かやったのと同じように空売り禁止を発表しました。
発表当初は拍手喝采(?)だったような気がします。「外国人と機関が空売り投資で分がある『傾いた運動場』に置かれているという個人投資家の主張を受け入れた結果(中央日報2023.11.05)」と報じられるほどなので、それなりに個人投資家たちからは評価された措置なのでしょう。1400万人の韓国個人投資家は巨大資本による空売り攻勢に、文字通り「ありんこ(韓国では個人投資家を蟻に喩えます)」のように踏みにじられているとの認識があったわけです。

空売りが無くなるのなら株価は上がるしかない、となったのでしょうか?そう思って買った人もいるでしょうし、空売りポジションを決裁した人も居たんでしょう。相場は大混乱しました。
コスダック市場は6日、7日の2日間は特にひどくて急騰、急落それぞれでサイドカー(短期間の大量売り注文または買い注文による一定時間の取引停止処置)が発動しました。
現在は落ち着いているようですけど、じゃあ株価が上昇傾向なのかと言うと、そうとも言えず...空売り禁止措置による株価上昇は「限定的」なのではないか、との見方が多いです。
実際のところ、韓国の株価がいまいち振るわないのは空売りのせいというより、本質的に輸出不振というファンダメンタルズ要因が大きいせいだからだと思われます。

状況が良くないのに空売り禁止発動により外国人投資家は離れ、しばらく流動性低下が続くと見込まれます。しかし国内個人投資家はと言うと...なんと信用融資残高が増えています。つまりお得意の「ビットゥ(借金して投資)」です。

 



ヘラルド経済の記事からです。

空売り禁止で短期売買が入り混じった「借金投資」...ポスコ、エコプログループ株1100億超増[投資360]


(前略)

14日、コスコムチェックによると、空売り禁止が始まった6日から9日(締結日基準)までの4取引日の間、ポスコグループ(6社)とエコプログループ(3社)の信用融資残高は1132億1000万ウォン増加した。同期間、全体信用融資残高増減額(5025億ウォン)の22%が両グループ株で発生した。ポスコグループ株とエコプログループ株の信用残高は現在、それぞれ1兆570億ウォンと3620億ウォンを記録している。

信用取引融資は証券会社が個人投資家に株式買収資金を貸して利子を受け取る一種の融資だ。通常、信用融資残高は株価上昇を期待する投資家が多いほど増える傾向を見せる。

(中略)

この期間、両グループ株は「借金投資」上位圏も席巻した。有価証券市場で信用融資が最も多く増えた銘柄はポスコフューチャーエム(1位・357億ウォン)だった。2位のサムスンDSI(237億ウォン)より120億ウォン多い規模だ。ポスコホールディングス(3位・169億ウォン)とポスコインターナショナル(8位・61億ウォン)も10位圏に入った。コスダック市場ではエコプロBM(232億ウォン)とエコプロ(226億ウォン)が並んで1、2位を記録した。

特に一部銘柄は空売り禁止2日目(7日)に信用融資が急増した。ポスコフューチャーエムの信用融資残高は10月26日から11月2日まで6取引日連続で減少傾向を示していた。しかし空売り禁止初日(6日)になると信用融資残高は199億ウォン増え、翌日には412億ウォンへとさらに大幅急増した。

(中略)

カン・デソク・ユアンタ証券研究員は「2次電池関連株が空売り禁止措置で(反騰)恩恵を受けると予想した個人投資家を中心に信用を積極的に活用してベッティングする可能性が高いだろう」と説明した。

ただし「現在、投資家預託金や全体信用融資残高が大きく増加することはなく、最近2次電池株も劣勢を継続するだけに短期間に加熱様相に広がることはないだろう」とし「空売り禁止措置以後、全体的に国内証券市場は変動性が大きくなった状態」と診断した。一方、金融投資協会によると、10日基準の信用取引融資残高金額は17兆1173億ウォンで、今月に入って17兆ウォンを再び回復した。



ヘラルド経済「공매도 금지로 단타매매 뒤섞인 ‘빚투’…포스코·에코프로그룹주 1100억 넘게 늘어 [투자360](空売り禁止で短期売買が入り混じった「借金投資」...ポスコ、エコプログループ株1100億超増[投資360])」より一部抜粋

個人的に突然の空売り規制は悪手かなと感じます。信用できないでしょ、これじゃ。金融は信用で成り立つのに、それができないって「何もない」のと同じことです。
今回の件で損失を被った外国資本は来年6月以降も、しばらく韓国には戻ってこないのじゃないかしら?