徴用訴訟の第三者返済の財団資金が「足らない」という話

徴用訴訟で新たに最高裁判決が出た件が報じられています。原告勝訴で日本企業の賠償責任を認めた判決です。

まあ、判決の中身は今更なので良いです。日本政府の対応も、多分変わらないだろうなと思っていたので、それも良いです。
韓国政府の反応はどうかな?と待っていたのですが、そちらもどうやら変わらないらしく、外交部が第三者返済で対応する方針を発表しました。

ただ、いくつか気になる点が。
ひとつは、今回の訴訟の原告の何人かがすでに第三者返済案を拒否していること。
もうひとつは、第三者返済を行っている財団が用意した財源が「足らない」という話が出ていることです。

 



ハンギョレの記事からです。

強制動員「第3者返済」へ固執変えない政府...日本はむしろ判決に抗議


外交部は21日、最高裁が日本企業の損害賠償責任を認め、強制動員被害者と遺族の肩を持つ判決を下すと第3者返済案による判決金支給を行う方針を繰り返した。しかし、この日勝訴した被害者と遺族の一部を含む他の強制動員被害者が政府の第三者返済案を拒否しているうえ、裁判所も被害者の意思に反するとして政府の供託異議申請を棄却しており、名分が掛かっているという批判が出ている。

イム主席外交部報道官はこの日の定例ブリーフィングで「今日の判決に対しても3月に発表した強制徴用確定判決関連の政府立場により日帝強制動員被害者支援財団(財団)が原告の方々に判決金と遅延利子を支給する方針」と述べた。

(中略)

強制動員に関する最高裁判所の判決で勝訴した被害者と遺族など、原告15人のうち11人は政府案を受け入れたが、生存被害者2名(ヤン・クムドク、イ・チュンシク)と個人となった被害者(パク・ヘオク、チョン・チャンヒ)の遺族は第三者返済案による政府の判決金受領を拒否している。これに対し政府は、彼らが受け取ることを拒否した判決金を裁判所に預ける「供託」を進めようとしたが、裁判所は「被害者の意思に反した供託は不可」との判断を下している。

このような中で、財団が被害者と被害者と遺族に判決金を支給するほどの資金が無いという指摘も出ている。国会外交統一委員会所属のパク・ホングン共に民主党議員室が国政監査期間に公開した資料によれば、9月基準で財団が受けた合算寄付額は計41億1400万ウォンだった。これにはポスコなど11社が参加した。先立って財団はこの基金で政府案を受け入れた11名に1人当たり2億ウォン以上の判決金を支給した。ここに判決金の受領を拒否した被害者4名の供託金約10億ウォンを残しておかなければならないという点を考慮すると、財団が使える基金は10億ウォンに満たないものと推算される。

しかしこの日の判決で財団が支給しなければならない賠償金は計11億7000万ウォンだが、遅延利子まで含めれば20億ウォンをはるかに超える。合わせて、最高裁に係留された確定判決を待つ強制動員訴訟も7件程度ある。これらの件に対する賠償金を全て合わせれば100億ウォンを超える可能性があるという分析がある。

これに関して外交部と財団は「財源を拡充する」という立場だけを繰り返した。外交部当局者は「民間の自発的寄与を含め目的事業を遂行できる財源拡充方案を検討していく」と話した。

(後略)



ハンギョレ「강제동원 ‘제3자 변제’ 고집 안 꺾는 정부…일본은 되레 판결에 항의(強制動員「第3者返済」へ固執変えない政府...日本はむしろ判決に抗議)」より一部抜粋

最後は「日本企業は財団に出資してないどころか韓国大使館の政務公使に抗議している」と書いています。ちょっと面白かったのが「招致(呼んで抗議した)」と、わざわざ括弧書きにしていたところです。「招致」に「抗議する」という意味合いは含まれませんが、日本が「呼び出して叱り飛ばした」の印象を与えたかったんでしょうか?


三者弁済は韓国側から持ち掛けてきた話でしょうに。正直、今さら何をゴチャゴチャ言ってるのか…という気分です。
三者弁済にすれば日本側がもろ手を挙げて歓迎→喜んで基金に参加、という都合の良い考えに取りつかれていたとしか思えません。
それまでの日本の態度(訴訟自体が不成立)を見ていればあり得ない事だと分かりそうなものですが、この前の釜山万博招致失敗のときに「客観的判断が出来ていなかった」問題がありました。現場がマイナスの見通しを報告すると、「士気を挫くような報告をするな」と圧力があったという件です。これと同じようなことが起こっていたのかもしれませんね。
「第三者弁済が成立すれば、日本企業が基金に参加するようアプローチできる」が、いつの間にか「第三者弁済が成立すれば、日本企業が基金に参加するようアプローチできるかもしれない」に変化し、それから「第三者弁済が成立すれば、日本企業が基金に参加するかもしれないに違いない」となり、ついに「第三者弁済が成立すれば、日本企業が基金に参加する(断言)」になっていたとか?