猫も杓子も「PBR」の話

年初にユンさんは「コリアディスカウントを解消する」と宣言しました。そしで1月中頃、「企業バリューアッププログラム」を用意する計画を強調し始めました。最近では韓国メディアでは「PBR」が執拗に取り上げられています。

「PBR」とは「Price Book-value Ratio(株価純資産倍率)」のことで、1株当たりの純資産率を表します。純資産とは株主全体で保有している資産のことで、企業が解散したときに株主に分配される資産の比率です。1.0倍なら1株当たりの株価と純資産が一致します。
つまり「今この瞬間、この株価で企業が解散したら割高か割安か」を判断する目安となります。1.0倍なら株価と同じ額が分配されるわけですから。

韓国企業はPBRが顕著に低い傾向にあります。KOSPI上場企業の平均が0.9倍です。米国のS&Pの平均は4.5倍、日経225の平均は1.4倍です。
日本でも低PBRは長く続いてきました。しかし昨年、PBR1倍割れ企業に対して「改善策を開示・実行」するよう東証が要請を出しました。そのことが最近の日経平均底堅い動きの要因の一つと見ることも出来ます。

恐らく、ユンさんはそこに目を付けました。日本をベンチマークして韓国企業のPBR改善に取り組むつもりのようです。

 



韓経ビジネスの記事からです。

「日本をベンチマークしたが...」低PRB株、一時的にテーマ株になる可能性も


これまで低評価されていた一部銘柄の株価が急騰した。4日、韓国取引所によるとKB金融の株価は終値基準で2日に1月26日対比で3.23%急騰した。同期間、ハナ金融と新韓は24.64%、13.82%上昇した。業種べき週間上昇率は、保険が23.24%、金融業が15.07%、運輸・装備が13.25%、証券が11.89%などだ。

これは「企業バリューアッププロフラム」に対する期待感が続いたためだ。先月17日、ユン・ソンニョル大統領は「コリアディスカウント」解消のためPBRが低い企業の株価を上げるという意志を明らかにした。これに対して政府は今月、上場企業の主要投資指標(PBR、ROE自己資本収益率など)を時価総額および業種別に比較公示する予定だ。

(中略)

昨年4月、東京証券取引所(TSE)はPRBが1倍未満の上場企業に株価上昇の改善案をまとめるようにした。これに対しNHKによると、昨年末の日経評価株価の終値は3万3463円で、2022年末対比28.2%上昇した。また、低PBR企業数が2022年第4四半期と比べ180社減った。比重でみると50.6%から45.8%に減少した。

このような政策が日本のような効果を出すかは未知数だという意見が出ている。専門家らは、韓国と日本の証券市場の構造的な違いを指摘した。日本企業は現金性資産が多く、配当・自社株の買い入れ消却など、低PBRを改善する余力が大きかった。しかし、国内企業は現金性資産が比較的少ないという分析だ。

これに対して「日本のじれをそのまま適用するよりも韓国の現実を反映しなければならない」と付け加えた。企業の立場では低PBR企業と烙印を押される負担感があり、また政府の規制では低PBRにならざるを得ない一部産業もある点を考慮しなければならない。

ハイ投資証券のイ・ウンチャン・アナリストは「低PBR株問題を提起した政府の政策は、長期的に韓国証券市場の体質を改善できる適合した方向性を示した」としながらも「それでも最近、低PBR価値株の株価急騰は行き過ぎた感がある」と指摘した。

彼は「今まで投資家は数年間、価値株を投げうってきたが、今回は低まるで超伝導体テーマ株のように買収する姿」とし「低PBR株式に投資しても、実際に政策改善の恩恵を受けて株主還元が大きく拡大し、支配構造改善が長期的に持続する余地があるのか、改善される余地が無いのにただ価格上の数字が低く出ていたのかを判断して投資しなければならない」と強調した。



韓経ビジネス「"일본 벤치마킹 했지만..." 저PBR주식, 반짝 테마주 될 수도(「日本をベンチマークしたが...」低PRB株、一時的にテーマ株になる可能性も)」より一部抜粋

韓国のやり方は往々にしてそうですが、自分たちの問題を解決するのに他所の解決策を使う、ということをします。

それ自体は構わないのですが、なんというか「問題集の答えを見て計算問題部分だけ解く」という感じなんですね。
でも、実際の問題解決は計算問題を解けば良いのではなく、文章問題を読み解いて使う公式を導き出すところから始まるはずです。
日本と韓国は状況が全然違うのですから、使えるリソースの種類も規模も前提となる構造も違います。

計算問題というより、科学的手法に近いかもしれません。前提となる情報から関連性、法則を見つけ出してそれを立証する過程を踏む、という流れです。
日本の「解決策」をそのまま持ってきて適用するのではなく、日本と韓国の「共通性」「類似性」「相違点」「可/不可」を全部洗いだした上で、韓国向けにカスタマイズする過程をすっ飛ばしてる気がしてなりません。だから諸々上手く行かなくても当然なんです。