「韓米同盟楽観論の危険性」の話

韓国メディアにおいて、米韓同盟というのは「米国が蔑ろに出来ない物」です。なぜなら「地政学的に米国は韓国を捨てることが出来ないから」です。
実際のところはともかく、こうした見方で論じられることが多く、韓国は米国に対して「強い」立場を取れる、と精神的「甲(カプシル=甲の横暴)」を満喫している節があります。

そんな中で、少数派ではありますが「韓米同盟は楽観視できない」と警鐘を鳴らすメディアもあります。
今日紹介するのもそんなレアケースです。先月の中旬ごろに公開された記事ですが、岸田さんの訪米関連の記事と共に日米・韓米同盟絡みの記事が増えてきているのでこの機会に紹介します。

 



ソウル新聞の記事からです。

[開かれた世相]韓米同盟楽観論の危険性


韓国の根本的な戦略利益は、韓半島と周辺地域で膨張主義勢力を抑制できる勢力均衡を維持することだ。勢力均衡は韓国の力だけでは維持できない。核で武装した北韓の攻撃を抑制し、巨大な強大国に浮上する中国を制御できる勢力均衡を維持するためには、域外均衡者である米国との同盟が欠かせない。米国も10位圏の経済力と50万人水準の現代化された軍事力を持つ韓国との同盟が勢力均衡の維持に役立つと判断するだろう。

(中略)

しかし、同盟は常に「放棄(abandonment)」の危険をはらんでいる。状況が変わり、一方が同盟が利益ではなく負担だと判断すれば同盟国を捨てることができるのが国際政治の現実だ。一部の論者は、「韓国がどのような政策を推進しても、米国は結局、中国牽制という自分の利益のために韓米同盟を維持するので、心配する必要はない」と主張する。しかし、韓米同盟も放棄の危険から例外ではない。そして、過度な楽観は同盟管理を疎かにさせ、政策の違いを増幅させ、放棄を招く恐れがある。

(中略)

現在も相当な放棄の危険が存在する。第一に、韓国は依然として地理的な脆弱性を持っている。米国は主敵である中国に近接しており、短距離ミサイルの射程内にある韓国に軍事力を駐留させる負担を負わなければならない。第二に、米国は中国に焦点を合わせた柔軟で分散した軍事態勢を発展させている。北韓を抑制するために韓国に駐留している大規模な軍事力は、ますます米国の軍事態勢で異例のものになっている。将来、米国はさらに分散した軍事力配置の動機を持つ可能性が高い。

(中略)

多くの米国の戦略家は依然として前進防衛と韓米同盟の価値を認識している。しかし、韓国は潜在的な放棄の危険を最小化するための長期的な努力をしなければならない。まず、韓国の国家安保戦略は韓米同盟に明確な戦略的優先順位を与えなければならない。中国との関係を最大限友好的に維持することは重要だ。しかし、米中間の均衡論は韓国の戦略的意図に対する疑問を誘発し、同盟の信頼を弱め、潜在的脅威に備えた本格的な投資を難しくするだろう。第二に、韓国は現状維持の利益を共有する日本、豪州など米国の同盟国だけでなく、インド、インドネシアベトナムのような域内友好国との安保協力を次第に強化しなければならない。多国間連携は勢力均衡に寄与し、米国の関与をさらに元に戻すことを難しくするだろう。第三に、韓国は戦略的価値を証明しなければならない。特に、軍事革新を通じて防御力と勢力均衡に寄与する能力を強化しなければならない。



ソウル新聞「[열린세상] 한미동맹 낙관론의 위험성([開かれた世相]韓米同盟楽観論の危険性)」より一部抜粋

韓国は「国は結局、中国牽制という自分の利益のために韓米同盟を維持するので、心配する必要はない」と自己弁護しつつ、日米関係にピリピリしているのは、米韓同盟を「血盟」と呼びつつ全然米国のことを信頼してないか、あるいは自分たちが同盟に「寄与」している自信が無いってことですよね。
その自信の無さは、やはり「地政学的価値」にのみ米韓同盟の根幹価値があると考えているからだろうと思います。「韓国」という「国」ではなく、「朝鮮半島」という土地そのものの価値です。(なんか、この考え方も儒教的な気がします)


記事の最後の提言は韓国メディアが見落としがちな部分を指摘していると思います。
韓国メディアはいつも「地政学的価値」にしか言及しません。けれど、「地政学的価値」というのはノド元に突き付けられた剣が、いざというとき役に立つという前提の元成り立ちます。
だからこそ、「地政学的価値」だけではなく、「戦略的価値」…つまり「なまくら」ではない「韓国」自身の価値を証明する必要がある、と。そのような指摘に受け取れます。