韓国大手通販仲介業者、事実上の「破綻」の話

韓国で大手eコマースが揺れています。
あれよあれよという間に事態が動いて、かなり大事になってきました。本日、関連企業の代表3名が国会に招聘されることになっています。

Qoo10の本社はシンガポールにあるものの代表は韓国人で、実体は韓国企業です。(ただし、日本でお馴染みのQoo10はeBayの100%出資子会社になっているので資本関係は完全に切れています。今回の件には関係ないのでご安心を)
そのQoo10の関連企業で、TMONとウィメプ(wemakeprice)という韓国のインターネット通販企業において7月23日から決済遅延が発生したことが事の発端です。決済遅延はキャンセルとは訳が違います。(ちなみに「Wish」も関連企業です)
どうも今回の件、Qoo10の資金不足が根本の原因らしいです。

TMONもウィメプも、「amazon」や「楽天」、「Yahoo!ショッピング」「auマーケット」のようなものと同様の通販仲介業者です。インターネット上に出店場所と決済手段を提供し、実際に通販を行うのはそこに出店した販売業者で、TMONやウィメプは販売業者からの手数料を主な収入源とします。

売上金は一旦すべてTMONなりウィメプなりに集められ、そこから所定の手数料が差し引かれたものが販売業者に支払われるわけです。
しかし決済遅延が発生した場合、購入手続き自体は正常に行われているため購入者にはカード会社から請求がいきますが、販売業者には購入金額が支払われません。そのため販売業者側も商品を発送しない可能性があります。(購入者にはカード請求がいかないよう「キャンセル」手続きを取るよう案内があったようです)

なぜそうなるのかというと、銀行引き落とし時に口座残高が不足しているからです。実際に商品が売れたタイミングと、業者に売上金が支払われるタイミングにラグが生じるためこうしたことになります。
要は「不渡り」です。TMONとウィメプは企業回生手続きに入りました。事実上の「破綻」です。

 



まず経緯を簡単に説明します。

販売業者へ問題が生じ始めたのは今月頭から。始まりはウィメプでした。
しかしウィメプ側は11日に販売業者に対して、清算遅延は「技術的なトラブル」と説明していました。

17日にはQoo10がプラットフォーム高速化の過程で起きた障害で決算遅延が起きていると説明。補償を発表。

23日にはTMONとウィメプで販売契約を取り消す企業が続出。旅行会社や航空券、ホテル予約が一方的に取り消されるなど、消費者被害が本格化し始める。

24日には大手決算代行業者が撤収し、返金処理が不可能に。「被害者」らがTMONやウィメプの社屋を占拠する事態に。

27日には一部の「被害者」が払い戻しを受けたことが確認される。

29日、Qoo10代表が個人財産を投じて被害回復にあたることを発表。TMONとウィメプはソウル回生裁判所に企業回生手続きを申請。

事態発生から結構な時間が経っていたにもかかわらず、肝心のQoo10代表とは連絡が取れない状態が続いていたそうです。
呆れたことに、事態が深刻化していくこの期間、韓国政府はQoo10とシンガポールで「グレート・Kワールド」なるイベントを共同開催していたとか。

時事ネットコリアの記事からです。

「こんなに債権者が多いのは初めて」...ティモン・ウィメフの自律構造調整も難題


(前略)

金融委員会の高位関係者は30日、「企業再生を申請したところの中で、このように債権者が多いのは初めて」とし「自律構造調整に関して裁判所が判断するだろうが、販売者(セラー)だけで6万人なので自律構造調整開始決定を下すことは難しいだろう」と見通した。

(中略)

自律構造調整支援は裁判所が先に企業と債権者が債務額などに関して自律的に協議できるようにする制度だ。強制的に債権を執行する再生よりは相対的に企業の自律性が保障される。債務が3分の2以上に該当する債権者が反対してはならないという前提条件がある。

(中略)

金融委員会の関係者はまた「TMONとウィメプは毎年1千億ウォン以上の赤字を出したため、企業再生を申請すると思われる」とし「企業再生を裁判所が1ヵ月以内に判断するはずだが、1ヵ月よりさらに早く決定がなされるものと観測される」と話した。

政府は25日基準でTMON・ウィメプ販売者が返してもらえなかった金額を2,134億ウォンと推算した。6月と7月の取引分と8・9月の精算金額は含まれていない金額だ。

(後略)



時事ネットコリア「"이렇게 채권자 많은 건 처음"…티몬·위메프 자율구조조정도 난제(「こんなに債権者が多いのは初めて」...ティモン・ウィメフの自律構造調整も難題)」より一部抜粋

清算金額は1兆ウォンを超える可能性も指摘されています。

事態の悪化を受けて韓国政府は販売代金を受け取れていない販売業者を対象に5600億ウォン+αの緊急経営安定資金などの金融支援を行う計画です。
とはいえ、これは政府保証の借金に過ぎません。TMONとウィメプが企業回生手続きでドロンしてしまえば、残るのは借金だけです。