売却に向けた資産差し押さえの事実を正式に通達した、という話

韓国の裁判所が日本製鉄の「資産差し押さえ」を公示送達しました。
なんらかの理由で相手に裁判書類が送達できなかったときに、官報などに公示することで「送達した」と見なすことで、8月4日0時から有効となります。


今回の件は、日本製鉄が受取りを拒否したわけではなく、日本外務省宛ての文書がそのまま返送されてきた、という形なので、日本政府の意向と受け取れます。
※日本は2018年にハーグ送達条10条(a)への拒否宣言をしているため、被告への直接郵便による裁判文書の送付では送達とみなされません。


聯合ニュースの記事からです。

日戦犯企業の国内資産売却「また一歩」前進…遅延戦略は続きそう


裁判所が日本に、強制徴用企業の国内資産を差し押さえたという決定文を公示送達することによって、遅れて進められてきた戦犯企業の資産売却の手続きがまた一歩進んだ。
しかし、日本政府と戦犯企業は今後も手続きに全く協力せずに「遅延戦略」を展開すると予想される。

4日、法曹界によると大邱地裁浦項支院の公示送達決定に基づいてピーエヌアール(PNR)の株式の差し押さえ命令決定などが8月4日0時から日本製鉄(旧・新日鉄住金)に送達されたものと見なされる。
これは8月4日から、裁判所が「日本製鉄が所有するPNR株式を強制的に売却して現金化せよ」と命令することが出来ることを意味する。債権者に送達された「有効な差し押さえ命令」が債権売却命令の前提であるからである。
これにより裁判所は差し押さえられたPNR株式を売却するかどうか決定することになる。
売却の方法は多様である。通常、売却対象が株式の場合、裁判所が執行官に売却を命令し、執行官がこれを売って裁判所にお金を提出する。

(中略)

しかし、期待されるように急速に売却が完了するかは未知数だ。法曹界では、日本政府と企業がこれまで見せてきた態度で今後の手続きを遅延させる可能性が大きいと見ている。

(後略)

聯合ニュース「日전범기업 국내자산 매각 '또 한걸음' 진척..지연전략 계속될듯(日戦犯企業の国内資産売却「また一歩」前進…遅延戦略は続きそう)」より一部抜粋


資産売却手続き開始、との報道を一部(東亜日報)で見ていたので、いよいよ現金化されたのかと思いましたが、よくよく読んでみると「(売却に向けて)差し押さえたよ」という事実を正式に公示した、というだけのようです。
実際に「売却するかどうか」の決定はそこから更に先です。


現金化の方法は「多様」としていますが、差し押さえられている株式は公開株ではないので額面がいくらとか、あまり関係ありません。
最悪、値段が付かない可能性があります。株は買い手が付かないと売れませんので、そうなると現金化できません。
ですから、「売ろうと思えばいつでも売れる」と思っているのなら、この認識はちょっと違う気がします。


私は、韓国は株を競売に掛けることで本来の持ち主(日本企業)に買い戻させることを狙っていたのではないかと思っています。
これを「日本の体面を保つための温情」くらいに思っていたのではないかと。
なぜなら、こうすることで日本企業は株を取り戻せる上に、表向き賠償支払いに応じなくても事実上の賠償を行うことができる、素晴らしい解決案だ(お花畑)と考えていた可能性はゼロではないと感じています。


ところが、喜んでこの案を受け入れると思っていた日本側からの反応が芳しくありません。

仮に日本企業からの買い戻しを前提に賠償計画が練られていたとしたらどうなるんでしょう。
8月4日以降にどう動くのか、注目していきたいです。