韓国の対北人権政策に厳しい評価が下された話

ブリンケンさんとオースティンさんの訪韓時期にモロ被りのタイミングで、韓国の対北政策に落第評価が付けられてしまいました。

韓国メディアでは主に対中戦略(に韓国を引き込むこと)、それと関連して日韓問題と日米韓共助について、そして北朝鮮の「核をはじめとする」朝鮮半島問題、この辺りに注目する報道がほとんどで、人権問題についてあまり触れない(触れたがらない?)のですけれど、最近のVOAの報道などを見ると米国は対北政策として「人権」を前面に出して圧迫していくことを考えているように見受けられます。「非核化」と「人権」、これを両輪に進めていくのじゃないでしょうか?
であれば、韓国に対してもそれなりの対応を要求してきそうです。


VOAの記事からです。

激しい非難に直面した韓国の北韓人権政策...「人権沈黙、北韓攻勢の推移を高める」


(前略)

北韓を対話のテーブルにつかせるために、人権状況に対する批判を自制しなければならない、という論理はワシントンでもはや説得力を得られずにいます。
人権圧迫を減らすことで他の部門への北韓の協力を得た事例は皆無で、むしろ北韓からのより多くの要求と挑発だけを煽った、というのが北韓問題を長く扱ってきた米国の当局者たちの指摘です。

特に韓国のムン・ジェイン政府発足以来、南北の対話と経済協力などに重点を置き、国際的な北韓人権問題改善の努力に積極的に参加しなかったが、南北関係は最悪の局面を迎えたという点を挙げています。

エバンス・リビア国務省アジア太平洋担当主席副次官補は「北韓政権を宥めようとする韓国政府の試みは、北韓を韓国と建設的に関与させるようなものではなかった」と指摘しました。 北韓政権は韓国の『善意』を当然のことと考え、韓国を軽蔑し続けている」 という説明です。

エバンス・リビア国務省アジア太平洋担当主席副次官補]"Seoul's attempts to appease the Pyongyang regime have not made North Korea any better disposed to deal constructively with the ROK. Indeed, Pyongyang is taking Seoul's "good will" for granted, and continuing to threat the South with contempt."

韓国政府が対北ビラ禁止法と国連の北韓人権決議案共同提案国不参加などで北韓をなだめようとしたことは、自由民主主義の価値を傷つけ、むしろ有利な対北交渉力を自ら落としたという診断も出ています。

(中略)

実際、北韓は韓国政府が北韓政権の人権蹂躙に沈黙している間にも対話提案に一切応じないことはもちろん、ムン・ジェイン大統領に対する露骨な非難、相次ぐミサイル試験発射、開城工業共同連絡事務所爆破、海洋水産部公務員銃撃殺害などの挑発を続ける一方、韓国統一部の対北支援も受け入れていません。

ロバート・キング元国務省北韓人権特使は「不幸なことは、ムン・ジェイン政府が北韓人権決議案の共同提案に参加しないことで北韓との和解の可能性が高まるものと考えていること」と話しました。続いて「不幸にもこれは事実と判明せず、北韓はむしろこの2年間、韓国に対して更に不快に接してきた」と指摘しました。

[ロバート・キング元国務省北韓人権特使]"The thing that's unfortunate is that obviously the Moon administration thinks that by not sponsoring the resolution, it will improve the chances of some kind of reconciliation with North Korea. Unfortunately, that has not proven to be the case. North Korea has, if anything, become more obnoxious towards South Korea in the last couple of years."

(中略)

ワシントンの朝鮮半島専門家からは北韓は韓国と米国の『配慮』に前向きに応じた前例がないとし、北韓の行動を多少なりとも変化させたのは、むしろ人権問題を前面に出し圧力の水位を最大限引き上げた時、と指摘しました。

(中略)

実際、COI*1の報告書が2014年3月に発表され、米国などの人権圧力が激しくなると、当時のリ・スヨン外相は同年9月、北韓の外交長官としては15年ぶりに国連総会に出席し、国際社会の圧迫に対する防衛に乗り出しました。
更に翌月には当時のチャン・イルフン国連次席大使がVOAとのインタビューを要請し、北韓指導部を国際司法の審判台に立たせようとする国連の動きに強い不満を提起しながらも異例にも国際社会の態度によって北韓人権状況に対する実態調査も議論可能なテーマだと明らかにしました。

(中略)

一方、チェ・ジョンムン韓国外交部第二次官は先月24日、国連人権理事会での基調演説で「私たちは北韓住民の人権を実質的に向上させるため努力してきた」と述べました。

しかし、トーマス・オヘア・キンタナ国連北韓人権状況特別報告官は10日、国連人権理事会で韓国政府に対し「北韓と交渉する際には人権問題も扱うべきだ」とし「北韓との経済・人道協力は人権に基づいた枠組みに基づいて行われるべきだ」と述べました。
また、5年間漂流している北韓人権財団の設立など、北韓人権法を正しく施行し、通信の自由に対する制限を緩めることで南北住民間の疎通を可能にすべきだ」と訴えました。

VOA「거센 비판 직면한 한국의 북한 인권 정책…"인권 침묵, 북한 공세 수위만 높여"(激しい非難に直面した韓国の北韓人権政策...「人権沈黙、北韓攻勢の推移を高める」)」より一部抜粋


北朝鮮がやったことと言えば、ニコニコ笑って一緒に写真を撮ったことくらいじゃないですか?

北韓政権は韓国の『善意』を当然のことと考え、韓国を軽蔑し続けている」というのは、なんだかデジャヴを感じます。日本に対する韓国の態度となんとなく重なりませんか?


*1:北朝鮮における人権に関する国連調査委員会:Commission of Inqurity