韓国GDP成長率前四半期比1.3%増…半導体錯視によるものという話

昨日、韓国の4月の輸出が前年の13.8%増となっているが、それは前年同期比という錯視効果によるもので輸出は回復していない、よって内需回復を実感できないのは当たり前のことだ、という話をしました。今日はそのGDP版です。

韓国の今年第1四半期のGDP成長率は、前四半期(2023年第4四半期)比1.3%増、前年同期比3.4%という好成績でした。民間消費も建設投資も数値の上で増えています。しかし、去年の第4四半期が悪すぎたことにより増加しただけという側面が強く、 GDPを押し上げたのは結局輸出です。
しかし、輸出は昨日紹介したデータの通り実は回復していません。しかも、半導体を除いた貿易収支は2018年からずっとマイナスです。韓国がいかに半導体景気によって支えられている脆弱な構造なのかがよくお分かりいただけるかと思います。

 



ザ・スクープの記事からです。

第1四半期のビックリ成長率の闇、「半導体錯視」を取り除く


第1四半期の経済成長率が前四半期比1.3%に上昇した。市場予測値(0.5~0.9%)を大きく上回った。2021年第4四半期以降、2年3ヵ月ぶりに最も高かった。前年同期比では3.4%と、2年ぶりの3%台の成長率だから「サプライズ実績」と言える。

ところが内実はあまり良くない。民間消費は衣類などの財貨、飲食・宿泊をはじめとするサービスが伸び0.8%増加した。建設投資も建物・土木建設ともに良くなり2.7%増えた。しかし、状況が悪かった直前の昨年第4四半期と比較する基底効果で増加率数値が高くなった側面が強かった。建設投資を前年同期と比較すると-0.6%だった。政府消費(-0.6%)も前年同期比マイナスだった。沈んだ企業景気を反映するかのように設備投資(-0.8%)も減った。

(中略)

大統領室は「輸出と内需がバランスの取れた回復傾向」と診断したが、半分程度だけが正しい。内需は不振だった直前の四半期と比較する基底効果で数値が高く出た。

(中略)

輸出も半導体への偏り現象があまりにも激しい。3月の全体輸出額(565億7200万ドル)が1年前より3.1%増えたが、半導体を除けば逆に3%減少した。この1年間(2023年4月~2024年3月)の累積貿易収支は215億2400万ドルの黒字を記録したが、半導体を除く場合、貿易収支は240億1700万ドルの赤字に変わる。半導体に隠れて残りの部門の不振と低迷が隠れている局面だ。

半導体を除いた貿易収支は2018年からマイナス行進だ。このように韓国経済は半導体景気によって揺れ動く脆弱な構造だ。ところが米国・台湾・中国・日本が国家戦略産業として集中支援するグローバル半導体戦争が展開され、半導体強国として韓国の地位が揺れている。

最も大きな問題は経済成長率の上昇が民生回復の勢いと連動しない点だ。政府は輸出改善傾向が内需反騰につながると期待しているが、体感景気は冷え切っている。

(後略)



ザ・スクープ「1분기 깜짝 성장률의 그림자, '반도체 착시' 걷어내야(第1四半期のビックリ成長率の闇、「半導体錯視」を取り除く)」より一部抜粋

後半は物価安定と景気回復を実現するためには難題が多いとしながら、お得意の「~ねばならない」論調が続きます。
色々書いてあるようで、結局具体的なことは何も書かれていないのでザックリ省略しました。

あ、でも一点だけ。
半導体など特定業種と輸出大企業を中心に、景気回復の恩恵を内需に拡散するように政府が努めなければならないということが書かれているのですが、そもそも昨日データを出したように輸出は実はそれほど回復していないという問題があります。

また、半導体の輸出は数字の上では確かに伸びていますけれども、こちらも昨年が悪すぎます。韓国の半導体企業は日本や米国に比べ、政府からの補助金が少ないこともあり自己資本による投資負担が大きく、景気回復と言えるほど余裕があるとも思えません。