韓国の労働関連法の処罰規定は主要国より厳罰という話

韓国の労働関連法による事業者への処罰が米、日、独、英、仏あたりの主要国に比べて相対的に厳しいという分析結果が出たそうです。
こうした「厳格な規制」のため、企業が萎縮して雇用創出などの本来の役割を担えないことがないよう国際水準に合わせて改善しよう的な話です。

良くしようと思うこと自体はいい事ですが「他所がそうだから」は理由にならないと思うんですよね。なぜそういうシステムになっているのか、刑罰であれば量刑をそうした根拠は何なのか、ここが一番大事になってくるんじゃないでしょうか?


アジア経済の記事からです。

「韓国では懲役3年 vs G5では罰金だけ...労働関係法の処罰規定は行き過ぎ」


韓国企業の労働関連法義務違反に対する処罰規定が米国、日本、ドイツ、英国、フランスなどの主要国に比べ過度である、という分析結果が出た。厳格な規制に萎縮せず、企業が雇用創出など本来の役割ができるよう処罰規定も国際的水準に合わせて改善する必要がある、という指摘だ。

全国経済人連合会(全経連)傘下の韓国経済研究院(韓経研)は3日、韓国とこれらのG5国家の労働基準法労働組合法、産業安全法など労働関係法上の義務違反に対する処罰規定を比較・分析した結果、韓国の処罰水準がG5に比べ、全般的に高いことが分かったと発表した。

韓経研によると、まず勤労時間違反に対する罰則の場合、韓国は2年以下の懲役または2000万ウォン以下の罰金を科している。一方、米国は勤労時間違反に対する罰則規定がなく、フランスは罰金だけを科している。

(中略)

韓国と労使制度が似ている日本は6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金を科しているが、韓国より罰則水準が低い。

(中略)

最低賃金違反に対する罰則の場合、韓国は3年以下の懲役または2000万ウォン以下の罰金を科している。反面、G5は懲役刑無しに罰金刑だけを科している。

(中略)

韓経研によると、韓国は高い最低賃金水準により支払い能力のない零細・中小事業主はこれを守れないケースが多いが実際に昨年、最低賃金をもらえなかった労働者の割合は15.6%に達した。

不当労働行為違反に対する罰則の場合、韓国は2年以下の懲役または2000万ウォン以下の罰金を科している反面、ドイツとフランスは制度そのものがない。米国は是正命令に従わない場合、拘禁または罰金が科せられ、日本は是正命令不履行の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる。

韓経研によると、G5諸国のうち不当労働行為制度をまっさきに導入した米国は労使双方を規制するが、韓国は会社側のみ規制している、このため、労組が会社側を圧迫する手段として不当労働行為告訴を乱発していると、韓経研は主張した。昨年、不当労働行為として受け付けた事件1450件のうち、不当労働行為と認定された事件は86件(5.9%)に過ぎないという結果がこれを裏付ける説明だ。

産業安全義務違反による死亡事故に対する罰則の場合、韓国は事業主に7年以下の懲役または1億ウォン以下の罰金を科す。英国は2年以下の懲役、米国と日本は6ヶ月以下の懲役が基準だ。ドイツとフランスは故意・繰り返し違反に限り懲役1年を科す。韓国はまた、重大災害処罰法が施行された場合、懲役1年以上の処罰が科されるが、これは刑法上の嘱託・承認による殺人に匹敵する処罰水準と分析されている。

(後略)

アジア経済「"한국선 징역 3년 vs G5선 벌금만..노동관계법 처벌규정 지나쳐"(「韓国では懲役3年 vs G5では罰金だけ...労働関係法の処罰規定は行き過ぎ」)」より


不当労働行為違反ってあまり聞かない言葉だと思いますが、労働組合の活動を邪魔することです。団体交渉の拒否とか、組合員であることを理由に上司から嫌がらせを受けたりとかも含まれます。

厳しすぎる処罰というのは確かに問題でしょうが、ちょっと気になったのが「厳格な規制に萎縮せず、企業が雇用創出など本来の役割ができるよう」という主張です。なんかこれ、ちょっと違うんじゃないかと。
これらは本来、守られるべき労働者の権利が侵されないよう事業者側に義務を課すこと、事業者がその義務を怠った場合の罰則のはずです。
それによって「企業の雇用創出が萎縮」するという見方はつまり労働者の権利を侵害してこそ企業活動は活発化すると言っているのと同義じゃないでしょうか?
特に最低賃金は昨年時点で既に15.6%の労働者が貰えていません。ここの規制を緩和するということは、払えないと分かっていても雇う事業者が増える(増えてもいい?)ことになりかねません。

常に二項対立の韓国らしい見方ではありますが、韓経研はもっと量刑の根拠部分に目を向けた方が良いのではないかと思います。
具体的には韓国が労働関連法を作った時の社会情勢と今の社会情勢の変化などです。労働者を取り巻く環境は少なからず変化しているはずですし、当時に比べ労働者への保護が手厚くなったのであれば事業者への過度な罰則は現在の社会システムに合っていないとの主張には一理あると言えます。

けれど「先進国がそうだから」は判断材料の一つにはなっても理由にはならないと思います。日本でも居ますけどね、「欧米では〜」をすぐ理由にする欧米病の人。