制裁に「同調」はするけど「独自制裁」はしない話

ロシアへの制裁に結局「同調」することにした韓国ですが、発表があったのは侵攻開始のわずか30分前、しかも「全面戦争になれば制裁」と外交部が記者団にメールで通知してきたそうです。それから約4時間後に「経済制裁を含む国際社会の努力を支持し、これに参加する」とムンさんが直接表明しました。
この判断の遅さに一部で「情勢判断に問題あり」の声があがっているらしいのですけれど、それよりも「独自制裁を行う予定はない」の方が引っかかります。
要するに「欧米が決めた制裁に引っかからないよう巧くやる」ということでしょう。それってどうなの?

こうした判断についてVOA(英語版)では韓国の対応を「内向き」とし、韓国とロシアが歴史的に友好的であることを指摘、「友好的な気質を持つ戦略的曖昧性(Strategic Ambiguity with a friendly disposition)」と評価しています。

 



VOAの記事からです。

韓国はロシア制裁に参加するが、独自の制裁は行わない


韓国政府関係者は金曜日、ロシアの輸出品に対する米国と欧州の制裁を実施するが、ソウルは独自の制裁を課さないことを改めて表明した。

(中略)

韓国の対露輸出品目である半導体、電子機器、自動車はすべて米商務省が発表した最新の輸出規制の影響を受ける可能性がある。半導体、コンピュータ、航空機部品などの製品に米国発の技術を使用する企業はロシアに送る前にワシントンの承認を受けることが義務付けられる。

(中略)

日本やオーストラリアを含むアジア太平洋地域のいくつかの国はロシアに対して独自の制裁措置を発表しているが、韓国は今の所同様の措置を取る予定はないと述べた。
大統領府のパク・ソヒュン報道官は金曜日のラジオインタビューで「我々が言っているのは米国と欧州諸国が出した制裁には当然従うということだ」と述べた。
「また、ロシアとの貿易関係が拡大していることも念頭に置かなければならない」と述べた。

匿名を条件に語ったある大統領府関係者は水曜日、記者団に対して、複数の選択肢が用意されており、危機の期間や方向性、他国の対応にによってソウルの立場が調整される可能性があると述べた。

(中略)

日本の岸田文雄首相は金曜日、ロシアの侵攻を「現状を変えようとする一方的な試み...ヨーロッパだけでなく、アジアやその他の国際秩序にも影響を与えるもの」と評した。

これまでのところ韓国の対応は主に内向きで影響を受ける企業と政府のタスクフォースを立ち上げ、原油天然ガスの価格などグローバルなリスクを24時間体制で監視している。

(中略)

友好的な気質を持つ「戦略的曖昧さ」

韓国の貿易協会の2021年のデータによると、ロシアは韓国の輸出1.6%、輸入2.8%を占める韓国の第10位の貿易相手国である。
ソウルの2大貿易相手国である中国と米国と比べると規模は小さいかもしれないがロシアとの関係には成長の可能性と友好的な歴史が多くあるとソウル大学のアン・セヒョン国際学教授は指摘する。

「韓国が1991年に国連に加盟する際、ロシアは大きな役割を果たしました」とアンはVOAに語った。「そして冷戦後のロシアと日本との関係が敵同士に近い性質であるのとは異なり、韓国とロシアとの関係は戦略的協力の一つであった」。

東京とモスクワは、第二次世界大戦後の平和条約に未だ合意しておらず、両国の間に連なる島々をめぐる領土問題で分断されている。

「中国への貿易依存度が高いので、ロシアは多様化のための代替手段であり、ヨーロッパ市場への足がかりにもなります」とアンは言う。また、ロシアは南北朝鮮の統一を支持する数少ない国の一つでもある。

(後略)



「South Korea to Join Russia Sanctions, But Won’t Lodge Its Own(韓国はロシア制裁に参加するが、独自の制裁は行わない)」より一部抜粋

「両国の間に連なる島々をめぐる領土問題で分断されている」...この理屈だと、半島は真ん中で分断されていますよね。朝鮮戦争の原因の一旦はロシア(当時のソ連)のはずですけど?

結局、韓国って「日本」じゃなければ何でもいいんじゃ...?と思ってしまうのはこういうときです。