福島原発事故のNetflixドラマが韓国で観られないのは日本の映像物にだけ審査を要求しているから、という話

Netflixのオリジナルドラマで福島原発事故をテーマにしたものがあるのだそうです。私はNetflixを利用していないので内容は分からないのですけれど、タイトルは「The Days」と言います。

このドラマ、主要国では公開日(6月1日)に一斉に視聴できるようになったのに韓国では観られなかったのだそうです。その理由として「(日本への悪感情に配慮した大統領夫人の)キム・ゴンヒ氏が阻止したから」と、陰謀論のような話が持ち上がっていました。
しかし実際は、映像物等級委員会の審査が必要なために遅れたというのが実情です。それどころかこの映像物等級委員会の審査は「日本の映像物にだけ」要求されるもので事実上の検閲とも取れます。

 



朝鮮日報の記事からです。

日本原発ドラマ、キム・ゴンヒが阻止している?実際には映等委の反日基調があった


福島原発事故と収拾過程を扱った日本ドラマの国内放映をキム・ゴンヒ女史が阻んでいる」

このような主張が民主党拡大幹部会議で出た。福島原発事故を扱った日本ネットフリックスのオリジナルドラマの国内興行をユン・ソンニョル政府が恐れたため、世界主要国のサービス同時開始日に韓国だけが入れないようにしたのではないか、という趣旨だったが、実状は違った。

映像物等級委員会(映等委)が反日基調に立脚し「審議」手続きを、特に日本のビデオ物にだけ要求したことで放映時点が遅れるのだった。10日現在、映等委9人は全員過去の政府から任命された人物だ。

10日、OTT業界によるとネットフリックスは福島原子力発電所事故と収拾過程を扱った日本ドラマ「The Days」を今月1日公開し、世界76ヵ国でサービスを開始した。

このドラマは国内でもネットフリックス公式YouTubeチャンネルを通じて予告編が公開されたが、まだサービス日程が決まっていない状態だ。

すると、ソ・ヨンギョ民主党最高委員会が陰謀論を持ち出した。

ソ議員は9日、民主党拡大幹部会議で「The Days」のポスターを持ち上げて「ネットフリックスで『The Days』というドラマを作った。先日まで広告もしていた。76ヵ国ほどの国で上位10位にランクインしたこのドラマは東京電力の爆発とその過程を描いたドラマだが、これがどういうことなのか韓国では検索できないという」と話した。

すると「キム・ゴンヒ女史がネットフリックス関係者たちに会ったその日を思い出す。なぜネットフリックスにこのドラマが掲載されないのかについて、私たちはもう一度探ってみなければならない。権力はこのようにむやみに使うためにあるものではない」と述べた。

だが確認の結果、ネットフリックスは現在「The Days」の国内サービスのために映等委審議を準備中の状況だった。このような遅延が発生した理由はただ一つ、日本の映像物という点だった。

映等委は今月からネットフリックスとディズニー+、アップルテレビ、ワッチャ、ウェーブ、クーパンプレイ、ティービングなど主要OTT事業者に映等委審議を経なくてもコンテンツを放映できる自主審議権を与えた。主要OTT事業者が放送会社のように、いわゆる「自主等級分類事業者」になったのだ。

ところが映等委は「日本映像物」に対してだけは引き続き審議を受けることを事業者に要求した。あるOTT業者関係者は「映等委が先日、新しい自主等級分類事業者を集めておいて自主審議方式を説明しながら『他国の作品は勝手にしても、日本作品だけは自主審議せず以前のように映等委に任せろ』という趣旨の話をして、みなどうすればいいのか右往左往している」と話した。

事実、映等委のこのような「反日制裁」の上に置かれているのは自主等級分類事業者である放送会社も同じだ。しかし放送局側の状況は少し違う。放送会社はすでにかなり前から「映等委の制裁には法的根拠がない」と判断し、日本作品であっても自主審議を経た後に放送している。新たに自主等級分類事業者になったOTT業者だけが映等委の顔色を伺いながら戦々恐々としている状況だ。このような状況で民主党は「権力の介入によって遅れるのではないか」という疑惑を提起したのだ。

これに対して映等委関係者は「日本映像物に対する審議問題と関連して法的根拠や明文化された指針があるかどうかは確認しなければならないが、それが日本大衆文化開放政策施行時から今まで変わっていない政策なのでこのように公示したもの」と話した。

(後略)



朝鮮日報「日원전 드라마 김건희가 막고 있다? 실제론 영등위 反日 기조 있었다(日本原発ドラマ、キム・ゴンヒが阻止している?実際には映等委の反日基調があった)」より一部抜粋

あまりにも当たり前のこと過ぎて、自分たちがやっていることが「不当」だとも「反日」だとも自覚がないんでしょうね。

日本大衆文化の輸入許可が出たのは金大中政権と廬武鉉政権のときです。つまり1998~2004年の間です。まだ20年程度しか経っていません。
しかも表向きは「自由化」されたことになっていますが、映像物は劇場上映作品とアニメーション作品に限られます。DVD作品、テレビコンテンツなどの映像作品は許されていませんでした。
記事によると、それらの制限も「インターネットが活性化され事実上死文化」されていますが、映像等級委員会は当時の「政策」を根拠に「制裁」を加えているとのことです。
その結果、「君が代」が地上波で流れるとショックを受ける人が続出するという社会となり、またそれを理由に日本映像物を制限する、という流れになるんでしょうね。


「道徳的判断が合理的考察に基づいて下されることは滅多になく、大抵は直感や感情から生じている」...ジョナサン・ハイトという心理学者がこれを「道徳的思考停止」と呼んでいます。強い道徳的反応に理由は必要なく、これは政治的反応にも同じことが言える、と。
韓国の日本に対する反応は大部分にコレが当てはまるように思います。特に「道徳的優位」と話すときが顕著です。