国内はPF不良、海外はオフィス不動産...韓国金融圏の不動産投資リスクの話

プロジェクト・ファイナンス(PF)問題は去年あたりから度々持ち上がっています。簡単に言うと、まだ出来上がっていないマンションなどの建物(建設計画、建設予定地)を担保にお金を集める方法です。
PF自体が悪いわけではありませんが、最近の韓国では審査の杜撰さ(セマウル金庫)やPFへの過度な投資の偏りなどの問題が、不動産価格の下落と急速な金利上昇により露になってきています。
しかし、これだけならまだ韓国国内の事情と言えます。仮に不良債権化して貸倒が起こっても、ほとんどの被害は韓国投資家が被ります。

ところが最近、証券会社の海外不動産投資にも懸念が出てきたようです。こちらはPFではないのですが、「不動産」という意味では同じカテゴライズと考えていいかと。
韓国の主要な証券会社の海外不動産への投資規模は約15兆ウォンに達します。その約50%にあたる7兆ウォンほどが「オフィス」に投資されています。コロナの影響で在宅ワークが広がりオフィスの需要は低下、価格は下落しています。そこに金利上昇が加わった状況で、2桁あった収益率は1%に低下したそうです。また、今年満期9兆5000億ウォン、来年11兆6000億ウォンが満期を向かるとのこと。

 



中央日報の記事からです。

PF不良の憂慮に海外リスクまで...「雷管」となった金融圏不動産投資


(前略)

24日、韓国信用評価によると今年3月末基準で主要証券会社26社の海外不動産投資規模は15兆5000億ウォンと集計された。このうちオフィス投資を中心に警告灯が灯った。各証券会社は商業用不動産の一つであるオフィスに海外不動産投資規模全体の半分にあたる7兆7500億ウォンを投資した。

(中略)

国内証券会社は2010年代半ば以降、低金利局面でオフィスなど海外商業用不動産に対する積極的な投資に乗り出したのが一部ブーメランとして戻ってくる様子だ。新型コロナウィルス(COVID-19)に伴う在宅勤務が拡散した余波や中央銀行の緊縮政策の影響などで景気が悪化し、商業用不動産は直撃弾を受けた。空室が増え、価格は下がった。ブルームバーグは最近、ムーディーズ・アナリティクスの集計を引用し、2011年第2四半期から上昇していた米国商業用不動産価格指数が今年第1四半期(286.4)と、前期(288.6)比0.76%下落し、12年ぶりに下がったと報じた。

このような中、海外不動産ファンドの満期が今年から大挙到来する点は懸念事項だ。高金利の余波でオフィスなどの資産価値が下がり、2桁を記録した収益率が1%台に下がるなど、すでに投資家の損失の憂慮が大きくなった状況だ。イ・ギョンジャ・サムスン証券研究員は「最近、海外オフィスの空室が増加し、価値下落が続き、今年下半期から海外不動産投資関連ファンドで不良化事例が増える可能性が高い」と診断した。海外不動産ファンドの満期規模は今年9兆5000億ウォン、来年11兆6000億ウォンだ。

証券会社の国内不動産投資にもすでに危険信号が現れた。3月末の証券会社の不動産PF貸出延滞率は15.88%に達する。2021年末の3.71%から昨年末は10.38%に跳ね上がり、急騰傾向を続けた。全体金融圏の延滞率(2.01%)よりはるかに高い。一部の証券会社は不動産市場の好況期にブリッジローン(事業所期の土地購入および許認可用短期借入金)営業などを増やしたが、不動産景気の下降で一部事業所の不良が発生し、延滞率が上昇した。

パク・ヘシク韓国金融研究院専任研究員は「不動産好況期に高危険憂慮にも関わらず高収益を狙って投資をして不良憂慮が発生したという側面で国内不動産PF延滞率上昇と海外不動産投資不良危険は類似した側面がある」として「高金利に景気不振まで続いており国内外不動産投資不良憂慮はさらに大きくなりうる」と話した。

(後略)



中央日報「PF부실 우려에 해외 리스크까지...'뇌관'된 금융권 부동산 투자(PF不良の憂慮に海外リスクまで...「雷管」となった金融圏不動産投資)」より一部抜粋

韓国が低金利のときに韓国内でウォンを調達し、外貨に換えて海外不動産に投資(キャリートレード)していたのが、最近の金利上昇でブーメランを食らった上に、コロナによる在宅ワークの浸透でオフィスの需要が低下しダブルパンチを食らっているということです。

また、韓国の主要な保険会社の海外投資資産は78兆4000億ウォンありますが、そのうち不動産の比重は25兆ウォン(31.9%)に達します。証券会社だけではなく保険会社の海外資産にも影響が出ているものと思われます。