韓国の年齢制度...満年齢が根付かない理由の話

今年、韓国の年齢制度に大きな変化がありました。満年齢統一法が発効されたのです。

韓国は今までずっと3つの年齢制度を使い分けていました。
ひとつが「韓国式年齢」と言っているもので、生まれ年+1歳。日本で言う「数え年」です(なにが「韓国式」なのかは不明)。
例えば、2003年生まれの人は今年誕生日を迎えれば満20歳になりますよね。よって、この人の数え年は21歳です。

次が「年年齢(としねんれい)」という意味の「ヨンナイ(연 나이)」。個人的にはコチラの方が「韓国式」という印象があります。誕生日前であろうと後であろうと同じ年に生まれた人を満年齢で一括りにする方式です。
先の例だと2003年生まれの人は誕生日を迎えているかどうかに関わらず一律「20歳」となります。この感覚は日本だと早生まれの人が19歳で成人式に参加するのと似ているかもしれません。

最後が満年齢。これは説明不要でしょう。

日本の法定年齢は満年齢ですので、慣例的に数えを使うことはあっても私には「享年」と「厄年」を見るときくらいしか思い付かないです。

それはともかく、満年齢統一法が発効されたのは今年6月末です。そろそろ4ヵ月が経とうとしていますが、韓国社会の日常に根付いているとは言い難い状況のようです。
その理由は年齢によって上下関係が決まることと無関係では無さそうです。

 



朝鮮日報の記事からです。

「満年齢統一」したが、国民の3人に2人は使わない…韓国年齢はどうしてしつこいのか


(前略)

満年齢統一法が6月28日に発行してから100日余りが過ぎた。韓国式歳は、年齢(出生年度+1歳)、年年齢(現年度‐出生年度)、満年齢(出生日から計算)の3つの年齢計算法を混用して生じる社会・行政的混乱と紛争を解消し、国際標準に合わせるとしてユン・ソンニョル政府が120大国政課題として掲げた。昨年の世論調査では国民の86%が「法案が通れば日常的に満年齢を使う」と答えた。改正案はほぼ満場一致で国会を通過した。

(中略)

しかし、まだ実生活で満年齢は思ったほど定着していないようだ。「とにかく週末」が今月初めにSM C&C「ティアリンプロ」に依頼し10代~60代の国民2687人に日常でどの年齢を使うかを尋ねると回答者の36%、3人に約1人だけが「満年齢を使う」と答えた。「韓国式年齢」という回答は35.6%で満年齢と大きな差がなく、年年齢を使うという回答も28%を超えた。

(中略)

女性は満年齢(33.26%)より年年齢(39.09%)を、男性は数え(31.80%)より満年齢(39.14%)を使う割合が高かった。中・高校生の10代は数えを使うという比率が全ての年代で最も高い58%で満年齢の2倍に達した。反面、社会生活を始めて恋愛・結構適齢期である20~30代では「若返り」効果がある満年齢や年年齢の使用率が圧倒した。組織の中核を担う40~50代では年輪があるように見える数えが大勢だったが、60代では満年齢が再び上回った。

(中略)

理由はなんだろうか。多くの人が「ずっと数えていた年齢を捨てて、突然満年齢を使うとぎこちなくて何か騙すような気分」と口をそろえる。30代会社員は「同年代同士は満年齢、高齢者には『本来の年齢』をいう」とし「特に相手が年齢による待遇を受けようとするのなら、私も数えで対応する」と話した。年齢で序列を決める文化が依然として残っているという話だ。

(中略)

満年齢は子供たちの間でも敏感な問題だ。「私の年齢を奪うのか」という情緒がある。ソウルの小学校1年生のキム某くんは両親に教わった通り「7歳」と答えてひどい目にあった。友人たちが「私たちは8歳で1年生なのに、7歳も1年生だと?」「これからは私たちを姉・兄と呼んで」と攻め立てたという。

(中略)

満年齢で統一されずに色々な年齢法が混用され新しく表れた流れは「出生年度公開」だ。「****年生まれ、〇〇*1年です」と言い、相手に自分の年齢を計算させるのだ。

(中略)

専門家たちは「2010年に左側通行から右側通行に変えた後も数年は混乱があった」とし、満年齢も時間が経てば定着するという。果たしてそうだろうか。既にパク・チョンヒ政権時代の1962年、単記年号を廃止し、西暦を採択して民法上満年齢統一法を施行したが数え年齢は粘り強く使われた。60年が経っても変えられなかった慣習であるわけだ。北韓でも1986年、金日成の指示で満年齢法を施行したがまだ数えを使う人が多いというのが脱北者たちの話だ。

(中略)

言語学者のシン・ジヨン高麗大学教授は「世界で韓半島だけ数え年齢が消えないのは韓国語の特性のため」と分析する。彼は「私たちは初めて会うと、名前より年齢から尋ねる。年齢によって関係と呼称、尊敬法が変わるため」とし「各自の誕生日ではなく皆で年を取る共通基準点(新年)が依然として必要だ」と話した。



朝鮮日報「‘만 나이 통일’했지만 국민 3명 중 2명은 안 써… 한국 나이 왜 끈질긴가(「満年齢統一」したが、国民の3人に2人は使わない…韓国年齢はどうしてしつこいのか)」より一部抜粋

3つの年齢の混用が招く混乱というのが、例えば雇用条件に明記された定年年齢です。雇用主と被雇用者との間で前提としている年齢計算法が違った(雇用主=数え、被雇用者=満年齢)ことで訴訟に発展したケースなどもあります。
他にも保険契約などがややこしくて、契約日を基点に誕生日が過去半年以内であれば満年齢、半年を超えていれば数えを適用したりするそうです。

「出生年度公開」というのは、「〇〇年」のところに干支を入れます。例えば「2023年生まれ、兎年」などの言い方をするわけです。
しかし、これをするとますます「国際標準に合わせる」との本来の目的から離れていきますよね。


*1:干支