「韓国は今や債権国家、通貨危機事態は起こらない」...本当か?な話

韓国のD2(一般政府債務)はGDP比で54.27%です。日本の255%と比べるとずっと低いんですけど、2018年には40.02%しかありませんでした。5年で14.25%ポイントと、急速に増えています。
家計負債は2017年にGDP比で91.96%から昨年末には108.12%と、こちらも16.16%ポイント増えています。
企業は企業で、1年間の営業利益で利子が払えない「ゾンビ企業」の割合が42.3%(利子支払いのある企業の場合。利子支払いの無い企業を含めるとゾンビ企業率は20.5%)と、過去最高値となっています。

経済状況はお世辞にも「良い」とは言えません。それでも1997年の通貨危機(からのIMF事態)のようには「ならない」とする意見もあります。当時とは「韓国経済の構造が異なるから」をその理由としています。

 



以下に東亜日報系列の週刊東亜の記事から該当部分のみ抜粋します。1996年の状況と今の状況を比較すると、米国の金利上昇、ウォン安、半導体価格暴落などの状況が「似ている」としつつ「今回は危機をけることができるだろうか?」とテーマにした記事です。

結論から述べると、1997年と同じ種類の危機を経験する可能性は非常に少ない。このように断言する理由は、韓国経済構造が二つの側面から大きく変わったためだ。まず、1997年と比較して最も変わったのは外債構造だ。6月末基準の韓国外債は1兆4611億ドル(約1971兆4620億ウォン)に止まるが、対外金融資産は2兆2251億ドル(約3002兆7720億ウォン)に達する。この二つの差である純対外金融資産が7640億ドル(約1031兆ウォン)に達するので、韓国は今や世界的な債権国家になったわけだ。韓国国民は他国に投資することで利子と配当金の収入を厚くしており、実際に本願所得収支(韓国国民が海外から受けた給与、賃金、投資所得と外国人が国内で受けた給与、賃金、投資所得の差額)は1月から8月まで239億ドル(約32兆2460億ウォン)の黒字を記録中だ。以前は外国人が韓国で利子と配当を厚く取っていくと懸念されたが正反対の状況になったのだ。



週刊東亜「1996년과 닮은꼴 한국 경제, 이번엔 위기 피할 수 있을까(1996年に似た韓国経済、今回は危機を避けることができるだろうか)」より一部抜粋

韓国の純対外資産の規模が分かりにくいかもしれませんが、ザックリ日本(418兆6285億円)の1/4と考えてもらえば大丈夫です。

「本願所得収支」は日本では単に「所得収支」と言った場合にコレを指します。で、日本の所得収支は2022年に約2221億ドルです。同じ年の韓国は229億ドルです。約10倍の差。

東亜日報は「これだけあるのだから十分。大丈夫」の論調の記事ですが、日本と韓国の経済規模の差を単純に人口比やGDPに置き換えたとすると1/3~1/2くらいの規模となります。その場合、純対外金融資産が日本の1/4、所得収支が日本の1/10の与えるインパクトは「十分」になるでしょうか?


また、この所得収支に関して、特に配当収支なんですがちょっと気になる記事を見つけました。(記事では「粉飾の匂い」とまで言っていますが、さすがにそこまでは...「継ぎ接ぎ」「数字合わせ」くらいにしておきましょう)
今年の1~8月の配当所得の累計黒字は約190億ドルです。しかし、昨年の同期間には50億ドルの黒字しか無かったそうです。今年は同じ期間なのに約4倍に膨らんだことになります。

これついては韓国政府が昨年打ち出した「韓国民間企業が海外金融資産を韓国内に持ち込めば税制優遇などインセンティブを与える」という政策が要因のようです。当時記事を読んだ覚えはあるのですが、短期的に見てどういう意味があるのか私にはピンと来なかったのでスルーしてしまいました。
この政策の主な標的だったのは造船企業。造船企業は先物為替方式でドルを持っています。このドルを政府が吸い上げることが狙いだったようです。

そして全部ひっくるめた「経常収支」。これは同期間(1~8月)の累計黒字が109億ドルしかありません。政府が民間企業のドルを吸い上げていなければ赤字です。


最後に、「通貨危機当時のようにはならない」は確かにその通りかもしれません。起こるとしたら、多分もっと悪いです。IMFは経済規模的に韓国を助けることは出来ないと言っていますし。