米アプライドマテリアルズが韓国子会社経由で中国に半導体装備を輸出した容疑で捜査中という話

米国の半導体装備メーカーであるアプライドマテリアルズが韓国の子会社経由で中国の半導体メーカーSMIC(中芯国際集成電路製造)に製品を輸出したとして米当局から捜査を受けています。
あくまで「容疑」段階のようですが、事実であれば米政府が中g区向けの先端半導体と先端半導体製造装置輸出を制限する措置に違反したことになります。

ロイターの報道によると、ロードアイランド州グロスターの工場から韓国の子会社に半導体製造装置を出荷し、そこからSMICに送られたということです。こうした「迂回」は2020年12月に米商務省がSMICを禁輸リストに入れてから行われるようになったとのこと。

まだ容疑ですし、立件されるかも分からない段階とのことですが、こうした「違法性」のある方法以外でも迂回路が機能する背景には、中国企業が生産拠点を国外に移したり、外国企業と合弁会社を設立するなどの回避策を積極的にとっているためで、こうした方法を塞がないといけないという議論がなされています。
最近、韓国では中国企業の進出が目立っています。はっきりとは書かれていないものの、主要な迂回路として韓国が狙われていることは確かでしょうね。

 



ソウル経済の記事からです。

「米、半導体、韓国経由、中国輸出調査」監視網狭める


(前略)

16日(現地時間)、ロイター通信によるとアプライドマテリアルズが米政府の許可なしに韓国子会社を通じて中国半導体メーカーSMICに数億ドル規模の製品を輸出した疑いで当局の調査を受けている。2020年12月、米商務省は中国軍と明白な関連性を理由にSMICを輸出規制企業リストに含めた。

(中略)

法務部はこれを知っているアプライドマテリアルズが中国に製品を販売したと見ている。2021年に続き昨年まで米マサチューセッツで生産した半導体装備を韓国にある子会社に運送した後、中国のSMICに移動させたという。ロイターは現在、検察捜査が進行中でありまだアプライドマテリアルズの犯罪容疑が確実になっていないと説明した。

(中略)

米議会超党派の査問委員会である米中経済安保検討委員会(USCC)は741ページに達する年次報告書で「政府は昨年10月、米国企業に18nm以下のDRAMなどを生産する中国企業半導体輸出を禁止した」とし「しかしオランダと日本がそれぞれ今年7月と9月に輸出禁止措置を下す前まで政策時差を利用して中国が半導体製造装備を大量輸入した」と明らかにした。

(中略)

ジョー・マンチン米民主党上院議員も韓中電気自動車バッテリー合弁事業を取り上げ、インフレ削減法(IRA)に中国のう回路を遮断する強力な基準を設けるべきだと促したことがある。ウォールストリートジャーナル(WSJ)によると、バッテリー原材料を供給する中国企業が今年に入って外国企業との合弁を通じてIRA規制網を避けている。

(後略)



ソウル経済「"美, 반도체 韓경유 中수출 조사" 감시망 조이나[뒷북글로벌](「米、半導体、韓国経由、中国輸出調査」監視網狭める)」より一部抜粋

「中国包囲網の効力」という点では抜け穴がある点は問題でしょう。記事中に出て来る経済安保検討委員会が指摘しているのはその点です。
しかし、日本とオランダは米国ではありません。7月と9月にそれぞれが輸出規制措置を行うまでは合法です。別に巧妙に制裁逃れを行ったわけではないので、ここで一緒くたにするのは少し違う気がします。
今回の件は米国企業が韓国子会社を利用して中国企業に装備を販売していた容疑があるという点で「違法性」があります。だから検察が捜査を行っているわけです。

最近、中国企業が韓国を生産拠点として進出してきているニュースをよく見ますが、特にバッテリーや電気自動車関連が多くIRA迂回狙いの動きだと思われます。
ただ、どうも米国は懸念される海外企業(FEOC:中国、ロシア、イラン、北朝鮮)を明確に区分する細部要綱を今年中に公開する方針のようです。これらはIRA法の税制優遇措置から外されます。
半導体関連のCHIPS法では中国資本が25%以上の場合、合弁企業と見なす指針となっているので、IRA法でも適用される可能性があります。