韓国の「豊かな時代は終わりデフレに近付く」という話

韓国政府や金融当局は今年の韓国経済について「上低下高」との見通しを長らく示していました。これは上半期は低成長、下半期は高成長との意味になります。いわゆる「V字回復」のイメージです。
それがいつの間にか「U字回復」のイメージに差し代わり、それも8月...か、9月くらいまでは頑張って言っていたと思います。
一部メディアは9月頭くらいから「いや、これもうL字型不況じゃね?」と言い出したりもしていました。L字型とは下がったまま上がれず横ばいになることです。ただ、この見方が主流だったかというと、そうでもありません。
やがて半導体が少し回復すると「やっぱり気のせいだった」と言わんばかりに「回復」をアピールする記事が沢山出てきたりもしました。どちらかというと、こちらが主流です。

「V字回復」「U字回復」の根拠は、どちらも中国のリオープニングです。中国経済と韓国経済が密接に繋がっているのは周知の事実。中国経済に最も影響を受けるのが韓国経済です。リオープニングで中国経済が再始動すれば自ずと韓国経済にも波及効果が産まれるのは自明の理です。
この認識は韓国メディアにもちゃんとあるように見えます。しかし、中国経済の「不調」が韓国経済に与える影響については目を反らしているように思えてなりません。「都合の良いところだけ見る」...悪い癖ですね。

そんな中、中国経済の様子から、韓国の「豊かな時代は(間もなく)終わる」と警告する、ある意味で異色のコラムがありましたので紹介します。

 



アジア経済の記事からです。

[論壇]豊かな時代は終わるのか


昨年、名目国内総生産GDP)が1兆6652億ドルで、前年比8%下落し、2009年のグローバル金融危機(‐9.9%)以後、最大の下げ幅を記録した。韓国は1人当たりGDPが100ドルだった60年代初め以降60年間、3万ドルを上回る高速成長を続け1970年代のオイルショック、1990年代末の通貨危機、2007年に発生したグローバル金融危機など大きく3度の危機を経験した。

(中略)

特にこの30年間は中国の影響が大きかったと言える。中国は主要先進国の成長に必要な比較的熟練した人材を安い賃金で提供し、生産基地の役割をしただけでなく、中国自ら高速成長し13億人の人口で巨大な市場の役割も果たしてきた。恐らく大韓民国はその恩恵を最も多く受けた国だろう。

(中略)

しかしここ数年、このような均衡と共同繁栄路線にヒビが入り、大きな状況変化が生じ始めた。共同繁栄では無く各自で生存の道を探さなければならない時代に変わりつつある。

最も注目すべきことは労働市場の変化だ。中国の労働力が世界の物価安定に寄与してきたと見られるが、大きな変化が生じ始めた。中国内の主要都市の賃金もすでに考えられないほど高くなり、ソフトウェア分野だけでも1級都市から2級都市に移動しており、あるいは他の国に移る実状だ。

(中略)

それに加えて源泉技術戦争、素材・部品・装備戦争、サプライチェーン戦争が起こり、ウクライナ戦争、イスラエルハマス戦争が起こり未来を予測しにくくなった。中国は自然と輸出減少、成長率鈍化でデフレが心配されており、経済が悪化すると不動産景気鈍化によって開発会社、建設会社、金融界が連続打撃を受けている。

米国はコロナ期間に供給された豊富な流動性が物価を圧迫し、これに対応するために金利を持続的に数回大幅に引き上げたが、これは再び不動産市場に混乱を与えている。

(中略)

リスクを考慮すれば韓国の金利は、より高くならなければいけないが、お上や金融当局は顔色を伺いながら中途半端な立場だ。しかし物価は上昇し続け、反面、不動産市場は滞り開発会社、プロジェクト・ファイナンス(PF)を行った貯蓄銀行・証券会社、保証を行った建設会社が危機に直面したことにより「ヨンクル」で住宅を購入した庶民は打撃を受けるしかない。金利引き上げで融資を受けて住宅を用意した庶民は利子負担が増え、資産かはむしろ金融資産が増える実情だ。結局、多くの企業が出て行き、物価が高騰し、庶民の暮らしが厳しくなれば経済は後退せざるを得ない。飲食価格が高騰し、商売が上手くいかず廃業する店が増える現象を目の当たりにしている。結局、豊かな時代が終わって緊縮しなければならないデフレが近付くのではないかと心配だ。



アジア経済「[논단]풍요의 시대는 끝나는가([論壇]豊かな時代は終わるのか)」より一部抜粋

いや、もう起こってますよね。実際に「廃業する店が増える現象を目の当たりにしている」のですから。まだ物価高騰は続いているのでデフレにはなってないというだけで。