韓国銀行の金保留量、2013年以降「変化なし」という話

安全資産として好まれる金が高騰しています。

中国を始め、主要各国が金の保有量を増やす中、韓国銀行の金保有量は2013年から変わっていないことが分かりました。
金の購入には外貨準備高であるドルを取り崩す必要があります。韓国メディアの分析によると、ドルは通貨防衛の際に即時必要であること、また韓国と米国の関係性が良好であることから、とりたてて金の保有量を増やす必要性がない、とのことです。

 



ヘラルド経済の記事からです。

金価格が急騰しているのに買えないだけ…「為替レート、素早く対応できるドルがいい」


(前略)

2日、韓国銀行(韓銀)の経済統計システム(ECOS)の外貨保有高統計によると、金保有高は2月基準で47億9475万9000ドルを記録した。2013年2月(47億9448万6000ドル)より0.01%増えた。同期間、外貨準備高は3273億9534万1000ドルから4157億2944万3000ドルへと26.98%増加した。当該統計は帳簿価額を基準として金の保有額を集計する。つまり相場の差が反映されていない。金の保有量が事実上変わらなかったという話だ。

(中略)

一方、中国など主要国は金を恐ろしく買い入れている。中国の金保有量は2226.4トンで世界6位の水準だ。昨年1年間だけで215.9トンの金を追加で買い入れ、ロシアとの格差を大きく縮めた。ポーランドも昨年130.0トンを購入し、順位が23位から一気に15位に跳ね上がった。

(中略)

金は伝統的に「インフレヘッジ(危険分散)手段」と考えられてきた。物価上昇によって貨幣価値が下がるのとは異なり、金は安定的価値が保障されるためだ。そのため、物価が上がれば中央銀行の金需要が増え、これに伴い金価格が上がり自然に各国の外国為替保有額も共に価値が増加し、外国為替リスクが減る効果もある。

実際、金価格は急上昇の勢いを見せている。1日(現地時間)、ニューヨーク商業取引所で6月物の金価格は前取引日より18.70ドル(0.83%)上がった1オンス当たり2257.10ドルで取引を終えた。取引中、1オンス当たり2300ドル台に近づいた。今年に入って、すでに9%ほど上昇したのだ。

(中略)

韓国銀行が金の買い入れに消極的なことに対する疑問が増幅する理由だ。韓銀の内外では韓国経済の高い対外依存度などを挙げている。為替レートが急騰した状況の中でいつでも介入できる「実弾(ドル)」をあきらめることができなかったということだ。韓国銀行など外国為替当局は為替レートが非理性的に急騰すれば口頭介入と共に実介入を進行しなければならないが、金は短期間流動化が難しい。為替変動性が激しいと積極的に活用しにくい方に属する。

(中略)

米国との関係的特殊性も考えなければならないという指摘だ。最近、ドルを買い入れた中国は米国との関係が悪化している状況だ。米中葛藤の深化と相まって陣営間の対立が明確になる政治的状況の中で、わざと米国債を売って金を買い入れている様子だ。

ポーランドは戦争中のウクライナと国境を接している。地政学的な懸念のために買入が強化されたと見た方が合理的だ。米国との関係も良く、地政学的影響でも相対的に自由な韓国の立場では金を買い入れる誘引が落ちたわけだ。

今後も当分、韓国銀行が金を電撃的に買収する可能性は大きくない。まず外貨準備高が減少に転じた。1月末基準の外貨準備高は4157億6000万ドルで昨年12月末(4201億5000万ドル)より43億9000万ドル減少した。為替レートの状況が安定していない状況の中でドルが流出したわけだ。急に流動化が難しい金を買い取るのは難しい。

(後略)



ヘラルド経済「금값 치솟는데 못사는 한은...“환율 빨리 대응할 달러 선호” [국제 금값 연일 사상 최고](金価格が急騰しているのに買えないだけ…「為替レート、素早く対応できるドルがいい」)」より一部抜粋

韓国が地政学的に「自由」というのがとても「平和ボケ」した発想に思えます。
北朝鮮を挟んですぐそこが「ロシア」という認識がかなり薄いようです。常日頃、日本にばかり神経を張り詰めているから後方に対する認識が甘くなるんでしょうね。

ちなみに、記事中でポーランドを引き合いに出していますが、ここ4年間で比較するならポーランドより韓国と似たような地政学的条件の日本の方が金保有量を増やしています。
2020年~2023年の4年間の保有増加量ランキングは、中国(165.2t)、インド(136t)、シンガポール(97.9t)、タイ(90.2t)、日本(80.6t)、ハンガリー(63t)、ブラジル(62.3t)、ポーランド(48.4t)、カタール(48.1t)、エジプト(46t)...です。

「米国との関係性」「地政学的理由」の2つは取って付けた理由に思えます。本当は「外貨準備高を取り崩せないから」というだけの単純な話ではないでしょうか?