韓国金融庁が来月実施予定だったストレスDSRの適用実施を突然2ヵ月延期しました。
ストレスDSRは将来的な金利変動に備えて実際の貸出金利にストレス金利を加えて貸出限度を算出する方式で、通常よりも金利が高く貸出限度額は減ります。
金融委員会は施行1週間前に突然計画を延期した理由について「庶民と自営業者の困難と不動産PF 軟着陸過程を考慮」と述べていますが、すでにそのつもりで銀行などは顧客案内や審査内容の変更を進めており、突然の変更に混乱しているようです。MSCIの指摘にあった「突然ルールを変える」をまたやっているわけです。
一部からはこの措置が「政府が金融緩和の方向に進む」「不動産景気を盛り上げようとしている」という誤ったメッセージと受け取られかねないとの声があがっています。
国民日報の記事からです。
「2段階ストレスDSR」突然2ヵ月延期…政府が住宅価格引き上げに参加するのか)
(前略)
金融委員会は25日「下半期ストレスDSR運用方向」を発表し、7月に予定されていた2段階措置施行を9月1日に延期した。 来年初めの施行で計画していた3段階措置は、来年7月に先送りされた。
(中略)
政府は2月、銀行圏の住宅担保貸出を対象に基本ストレス金利の25%を適用する1段階措置を施行した。7月からは銀行圏の信用貸出と第2金融圏の住宅担保貸出に拡大し、ストレス金利の適用比率も50%に高めることにしていた。
金融委員会は、施行1週間前に突然計画を延期したことについて「庶民と自営業者の困難と不動産PF軟着陸過程を考慮した」と説明した。庶民・自営業者の困難を解消するための汎政府次元の支援対策が議論されている状況で、彼らの資金窓口の役割をする第2金融圏まで貸出限度を減らすことに負担を感じたと分析される。不動産PFなど住宅市場にも貸出限度を下げるのが否定的な影響を与えかねないと判断したものと見られる。
市場は施行予定だった規制が突然全面延期されたのは珍しいことだとし、当惑しているという反応だ。特に金融当局が措置延期の背景に挙げた理由は納得し難いという様子だ。
(中略)
融資総量を抑制し不良を防ぐという従来の政策基調に逆行し、政策的一貫性に欠けるという批判の声も高い。最近、家計負債は貸出金利の引き下げと住宅取引量の増加などによって急増している。5大銀行の家計向け融資は今月に入って20日ぶりに4兆4000億ウォン以上増えた。
金融界関係者は「すでに一部銀行は2段階施行方針を顧客に案内もした。(政府が)家計貸出増加を心配しながらも不動産市場は生かさなければならないので、このような矛盾した姿が出てくる」と批判した。
漢陽大学経済学部のハ・ジュンギョン教授も「市場は準備をしているのに、いきなり2ヵ月延期するとすれば(市場では)政府が金融緩和の方向に進むと考えるだろう」とし、「結局、不動産景気を盛り上げようとしているという誤ったシグナルを与えかねない」と指摘した。
国民日報「‘2단계 스트레스 DSR’ 돌연 두 달 연기 왜?…정부가 집값 띄우기 동참하나(「2段階ストレスDSR」突然2ヵ月延期…政府が住宅価格引き上げに参加するのか)」より一部抜粋
理由は太字にした部分が全てでしょうね。
ちょうど少し前に基準年が変更になったことで家計負債が対GDP比で目減りしています。額は変わってませんし、なんなら増えてます。しかし、率としては目標にしていた「100%以下(100.4%→93.5%)」を達成しました。(こんな達成の仕方に意味があるのかはともかく)
また、先日の報道によると、2021年に韓国の基準金利が上がり始めて以来、初めて一部の銀行で住宅担保ローンの金利が2%台に下がったということです。おそらくこれは7月からのストレスDSRに備えてベースの金利を割り引くサービス措置だったのでしょう。
発表を受けて韓国銀行は急激に家計負債増加が起こるようなら規制適用範囲自体を拡大することを検討する、と牽制していますがはてさて...。