韓国人の資産のおよそ8割は「不動産」という話

ご承知の通り、韓国経済は家計負債(住宅ローン)を積み増すことで成長してきました。家計負債はそろそろ限界のため、DSR規制や貸付条件を厳しくするなどで増加の勢いを止めようとしていますが、基本的に内需が弱い構造の韓国経済において、不動産を超える成長動力は存在しないため完全に止まってしまうとそれはそれで大変なことになります。
一言で「軟着陸」と言っても、非常に繊細な調整が要求されますし、どうするのが正解かは、結果が出るまで誰にも分かりません。

また、韓国の家計資産のおよそ8割が不動産であることから、不動産が寝崩れればそれに引きずられる形で韓国人の資産が減ることになります。それを避けようと不動産市場を支えれば、不動産は値下がりしないという「不動産不敗神話」をさらに育てることになり、ますます不動産投資に偏重、資本生産性が落ちます。

ちなみに資産の8割が不動産というのは、米国(28.5%)、日本(37.0%)、英国(46.2)と比較した時、極めて高い比率です。

 



東亜日報の記事からです。

家計資産80%不動産に集中、借金に依存するPF露出額も200兆ウォン超え


(前略)

今年5月、統計庁と韓国銀行が発表した「2023年家計金融福祉調査」によると、1世帯当たりの平均総資産は5億2727万ウォンで前年比3.7%減少しました。1年前に比べて金融資産が3.8%増加しましたが、実物資産が5.9%減った点が影響を及ぼしました。

(中略)

問題は家計資産の中で不動産が4億1424万ウォンで全体の78.6%を占めたという点です。主要先進国と比べてみても韓国の不動産依存度は高すぎます。2021年基準でアメリカの家計資産における不動産の割合は28.5%で、日本(37.0%)、イギリス(46.2%)なども韓国より大きく低いです。

専門家は、不動産に偏った家計資産が経済全般に否定的な影響を及ぼすと懸念しています。家計レベルではアパートにすべての余裕資金を投入するので、それだけ引退準備を疎かにすることになります。また、このような家計の不動産偏重は土地価格を高め、企業の生産性を下げることにも間接的に影響を及ぼします。

漢陽大学経済学部のハ・ジュンギョン教授は「地価が上がることになれば研究開発(R&D)などに使われるべきお金が賃貸料に流れ、企業の生産費用が増加し資本生産性が落ちる」として「企業の生産性が下がれば結局国家競争力も低下せざるを得ない」と指摘しました。

(中略)

家計が住宅ローンを受けて資産偏重を深化させる間、金融会社は不動産関連貸出に攻撃的に投資してきました。特に未来に予想される収益を前面に出して資金を用意し不動産事業場を開発する「PF貸出」の規模が増えました。金監院によると、今年6月末基準の金融圏のPF露出額は216兆5000億ウォンでした。先月末基準で銀行圏の企業貸出残額が1311兆9000億ウォン(出所:韓国銀行)であることを考慮すれば、全体企業貸出でPFの比重が15%を越えるという話です。

一時、金融会社にPF貸出は莫大な収益をもたらす優良投資先と見なされていました。しかし、2022年3月から始まった利上げとともに状況は変わりました。

(中略)

PF貸出と関連して韓国開発研究院(KDI)は今年6月「ガラパゴス的不動産PF、根本的構造改善必要」という報告書を発刊し、PF事業方式が根本的に問題があると指摘したりもしました。KDIは報告書で「(PF事業の主体である)施工会社は一般的に総事業費の3%に過ぎない資本を投入し、残りの97%は借金をしてPF事業を推進してきた」とし「不動産PF問題の根本的な原因は『低い自己資本』と『高い保証依存度』に代表される遅れた財務構造にある」と説明した経緯があります。

家計も、企業も、金融会社も不動産ばかり見ている状況。このような経済構造を持つ国で、成長と革新が活発になるのでしょうか。当分の間は容易ではなさそうです。



東亜日報「가계 자산 80% 부동산에 집중, 빚에 의존하는 PF 노출액도 200조 넘어 [금융팀의 뱅크워치](家計資産80%不動産に集中、借金に依存するPF露出額も200兆ウォン超え)」より一部抜粋

不動産って目に見える資産ですから、多分分かりやすいのだと思います。
半導体にしろ、家電にしろ、スマホにしろそうですが、韓国が自慢するのは出来上がった完成品=「目に見る形あるもの」です。その中身や製造機械、素材、使われている特許技術(知的財産)がいかに外国に頼り切っているかには目を向けようとしません。
それは目に見えず、分かりにくいからであり、また儒教的な考えでは形あるものの方が価値が測りやすいため相性が良いのだと思います。

儒教では優れているものは見目も良いものと相場が決まっています。
見た目と中身が同質で、どちらが後先、という区別がありません。だから見目を整えれば中身は後から伴ってくるとも考えられます。(形から入る、みたいな)
そのため韓国人は見目に拘り、整形に躊躇しないものと思われます。

不動産に話を戻すと、「目に見える」「立派な」不動産を持っていることが分かりやすく「上等な人生」(=両班)の証となるので偏重するのでしょう。
不動産を手に入れた時点で、例え中身がスカスカで内装が中途半端でも「見た目」が整うので中身も遅かれ早かれ整うはず、と。ところが実際はそうならないので、多くの人たちがはく奪感を覚えるのではないでしょうか?